某放送局の番組で、「高嶺の花」がルビを振って使われていました。
一見何のふしぎもない表記ですが、新聞をよく見ると
ほとんどがルビなしで「高根の花」のほうを採用しています。
使用例やその理由は『新聞と現代日本語』(文春新書・金武伸弥著)で丁寧に説明されています。
一言で言えば“嶺”が常用漢字でないからということですが、
手元にある『明鏡国語辞典』を開いてみると、“高根”はあくまでも同音による書きかえを意味しており、
「新聞で使う代用表記」と説明しています。
嶺は御根(みね)で、高根も間違いではなく、どちらを使おうが問題はなさそうですが、
「高嶺の花」のほうがより手が届きそうになく、なにか夢を含んでいるような気がしてなりません。
このように漢字は、時代の流れとともに大きなうねりを見せ、
年代によってもかなり受け止め方が違うようです。
固有名詞の場合は、「嶺・峰・峯」のいずれか決まっているケースがほとんどで、
勝手に書きかえるわけにはいきません。
奈良県吉野山の金峯山寺(きんぷせんじ)、福井県の嶺南(れいなん)・嶺北(れいほく)地方、
楽天・野村監督の母校峰山(みねやま)高校など、間違いは許されません。
姫路市北部、広嶺山(ひろみねさん)のふもと峰南町(ほうなんちょう)に住む子供たちは、
広峰(ひろみね)小学校から広嶺(こうりょう)中学校に進むということです。
山頂には廣峯(ひろみね)神社もあります。
一般的に使われている漢字と読みを紹介しましたが、ほんとうにこんがらがってしまいそうです。
『地名の謎』(新潮OH文庫・今尾恵介著)という本も出ています。興味のある方は一読を。