朝の食卓を飾る焼き魚といえば、「あじの干物」が定番の一品ですね。
その昔、熱海や伊豆の温泉旅館の朝食には必ず「あじの干物」が登場していて、あの頃の懐かしい味を思い出すことがあります。
魚の干物の歴史をひも解いてみると縄文時代まで遡るのだそうです。
全国各地に所在する貝塚からは、魚の干物や牡蠣などの貝の干物を作る道具まで縄文時代の人たちが所有していたことが判っているようです。
彼らは暮らしの知恵から保存性を高めながら、味も濃縮された「干物」を創り出しましたが、「干物」は保存食品のひとつで、縄文時代から培ってきた日本人の「ソウルフード」とも言える食べ物ではないでしょうか。
あじは干物にすると生のあじよりも断然栄養価が上がります。
生のあじ100g中にはタンパク質20mg、脂肪27mgですが、干物にするとそれぞれ、43mg、59mgと2倍以上に増加します。
また魚脂にはEHP(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という不飽和脂肪酸が多量に含まれ、これらは脳を活性化させ、血中コレステロール値を下げる優れものなのです。また、あじの干物には視力回復や皮膚の成長等をつかさどるビタミンAも大量に含まれています。
干物は魚の水分を蒸発させ、うま味を凝縮・熟成させた保存食ですが、魚を丸のまま干すには身が厚くて上手に水分が抜けません。
そのため、たいていの場合、開いて干す「開き干し」と呼ばれるものが主流になって「干物」=「開き」となるくらいポピュラーな食べものになっています。
開きづくりは、包丁一本あれば誰にでも出来る簡単な作業なので、特別な道具は何も要りません。
しかも「あじ」は大きさも手頃で捌き易い魚なのです。
市内のAGDAO市場へ行くといつでも活きのいい「あじ」が売られています。
1キロ160ペソ(約370円)程度で、中型のあじだったら5~6尾はあります。
市場の一角には「干し魚」売り場もあって色々な干物が売られていますが、その殆どが塩分がかなり強い干物で、残念ながら新鮮さもありません。
そんなことから我が家では「あじの干物」はいつも手作りを決めています。
買って来た「あじ」の内臓を取り除いた後は「腹開き」にして、私の場合は塩水に浸けるのではなく、塩をあじの両面に塗して30~40分程常温のまま寝かせ、あじの表面が飴色に光沢が出て来たところで余分な水分を軽く拭き取ってから専用の「網」で天日干しで作ります。
なるべく風遠しの良い場所を選んで、最初の2時間程は直射日光の良く当たる場所に網を下げ、一度あじの上下を変えた後は日陰で風の良く通る場所に移動し、約半日程で完成します。
完成した「あじの干物」は冷凍庫で保存すれば3~4週間は美味しくいただけます。
(下の写真は市場の干し魚売り場です)