タイ下院は去る5日、貢献党のインラック氏(44歳)を新首相に選出しました。
インラック首相は2006年のクーデターで失脚したタクシン元首相の実妹で、タイで女性首相の誕生はは初めてです。
選出後新首相は国民に向けてテレビ演説し、国王陛下への忠誠や国家・国民のために最善を尽くすことなどを強調しました。
インラック首相は学生時代にはチアリーダーとして活躍した経験もあって、はつらつとした笑顔が好感を呼んで、先の総選挙では「インラック旋風」を巻き起こしました。
すらりとした端麗な容姿のインラック首相は海外メディアからも「フォトジェニック(絵になる被写体)」として注目を浴びています。
そしてインラック首相と新閣僚は去る10日、プミポン国王の前で宣誓式を行い、インラック政権が正式発足しました。
同党議員でタクシン元首相派勢力の反独裁民主戦線(UDD)幹部は入閣が見送られ、選挙活動を支えたUDDへの論功行賞より、政権イメージと反タクシン派からの反発回避を優先した形ですが、地元紙によるとタクシン氏が主な閣僚を決めたとしており、事実上の「タクシン政権」が復活しました。
インラック新首相は現地記者団に対して、7月の総選挙で公約した最低賃金の大幅引き上げなどの大規模な生活支援策を実施に移す考えを示しました。
貢献党は選挙期間中、最低賃金を300バーツ(1バーツ=約2.63円)に引き上げるほか、現在1トン当たり約1万バーツのコメの買い上げ価格を1万5000バーツに引き上げることも公約しました。
また同党は、法人税を30%から23%に引き下げることも公約し、企業の負担を軽減するとしています。
このほか、タクシン政権期の政策を復活させ、30バーツで診療が受けられる医療制度、700億バーツの農村基金などを実現するとしています。
民間研究機関の試算によると、公約実現には国家予算1年分に相当する2兆3000億バーツが必要だといいます。
クーデター後、首都での大規模な騒乱が繰り返されたタクシン派と反タクシン派の政治対立解消も課題です。
そしてインラック首相にとっての最大の課題は、長年にわたり国民を分断してきたタクシン、反タクシン両派の「国民和解」ですが、汚職罪で実刑判決を受け政治活動を禁止され、海外で事実上の亡命生活を送るタクシン氏の帰国、復権問題とも絡んで、反タクシン派は同氏の総選挙への関与などを理由に、裁判による貢献党の解党を画策しているそうで、「国民和解」への道筋は険しいものがあります。
※今朝日本から入って来たニュースによると、タイのタクシン元首相が亡命先のドバイの日本総領事館に入国申請したことを受け、入国を特別に認める方針を菅内閣が固めたそうです。
その為外務省は近日中に査証を発給するため、法務省と調整に入りました。
タクシン元首相氏は「日本・中国・ASEAN経済文化研究会」(会長・水野清元総務庁長官)の招待を受け、今月22日からの訪日を希望していて、東京都内で講演や記者会見をするほか、東日本大震災の被災地訪問も予定しているそうです。
下の写真は選挙運動期間中のインラック氏。