昭和37年。瀬戸内海に面した備後市で運送業に就くヤス(阿部寛)は、妻・美佐子
(麻生久美子)の妊娠に喜ぶ。幼いころに両親と離別したヤスにとって息子・アキラ
の誕生にこの上ない喜びを感じるが美佐子が事故死してしまう。姉貴分のたえ子
(薬師丸ひろ子)や幼なじみの照雲(安田顕)和尚の海雲(麿赤兒)などに支えられながら
アキラを育てるヤス。ある日、誰もが口を閉ざしていた母の死の真相を知りたがる
息子に、ヤスはあるうそをついてしまう。昭和といえば「昭和の親父」という
イメージか?この作品はそのままの「昭和の親父」を描いていた主人公の市川安男は
トラック運転手として生活をしている。母親を幼くして亡くし、父親は失踪して
伯父夫婦に育てられたという過去を持つ。最初のエピソードは1962年(昭和37年)
で戦後17年の時代 私の生まれた年でもある。今とはかなり異なる風景だが私にして
みれば懐かしい・・・映画ではその時代と昭和最後の年との間を時系列をやや分解
した形で進行しており、物語の語り手となるのは安男の息子の旭である。
物語は彼が父との関係を追想する形で進む。母親美佐子は彼が幼い頃事故で他界する。
実はその事故の真相が重要なカギとなるのだが、安男が伝えない真相は父子の間
に微妙な影を落とし続ける。不器用な男を阿部寛が見事に演じている。
多少台詞が聞き取り辛いのもこの人の芸風でしょう。息子役の北村匠海や彼らを取り
巻く人たちとの関係性が映画の最大の魅せ所そして、周りの役者達によってまた
薬師丸ひろ子の一件などもからみながら、父子の物語は展開して行く。
説教臭くて、且つ時間の行ったり来たりはちょっとうるさいほどだが、ダレるところも
なく、泣ける映画でした。
今のIT、スマホ時代には無い人間の心の繋がりや、良い意味での泥臭さが心地よくて
魅了されました ☆☆☆☆★