ふぶきの部屋

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バレンシアの熱い花はなぜウケなかったか2

2007-09-30 18:13:33 | 宝塚コラム

 この作品において観客がまっさきに疑問に感じたのは次の3点。

 なぜフェルナンドは婚約者がいるのにイサベラに告白したの?

 なぜシルビアはルカノール公爵が死んだあと自殺したの?

 「私のイサベラも死んだ」の意味はなに?

30年前のお客はこれらの疑問符は持たなかったと聞いています

 

最近スカイステージで榛名由梨版を見ましたけど、上記のような疑問は

思い浮かびませんでした。むしろ、フェルナンドとイサベラの熱い恋に

大いに涙して、ラストの「私のイサベラも死んだ」という台詞に胸が

締め付けられてしまった程です。

 

初演の月組と、今回の宙組では何が違うのか・・・・

それぞれの演技力だの歌唱力だのという事は目に見えている事実ですが

(大和以下が下手というのではなく、当時の榛名以下よりも経験が

浅いという意味です)

それだけではなく、このお話の根底に流れる物を表現し切れなかったから

ではないかと思いました。

それは・・・・「身分の格差」です

フェルナンドは貴族(それも元領主の家柄)、けれどイサベラは酒場の

踊り子に過ぎません。仮にフェルナンドに婚約者がいなかったとしても

結婚なんか出来る間柄ではなかったのです

当時は結婚は家の為にするものだったし、「階級」というのは大きな壁に

なった筈です。

 

フェルナンドの身分からすればイサベラを「遊びの相手」として扱う事は

十分に出来る筈。でもそこを正直に「婚約者がいる。彼女を悲しませたく

ない。でも君への気持は変わらない」と言ったものだから、イサベラも

「限りある恋」に生きる決心がついたのだといえます。

ラスト、イサベラは自ら別れを切り出しますが、それが唯一の彼女の

プライドの表れといいましょうか・・・

そしてフェルナンドは復讐を終え、元の真面目な軍人貴族に戻るでしょう。

マルガリータと結婚して公爵家を継ぎ、家の繁栄に尽くすでしょう。

イサベラを嫌いになったのではなく、愛したからこそ彼女を心から

抹殺する必要があったのです。

それゆえに「私のイサベラも死んだ」という絶望の台詞になったのでは?

 

また介在する「貞操観念」も現代とは違い、心ならずも一旦は他人の

妻になった身が、例え夫が死んだからといって、すぐさま他の妻になれる

というような感覚はなかったものと思います

処女を失った時点で「穢れた」と感じたシルビアが、一途に愛してくれる

ロドリーゴの妻になれるはずがないのです

それゆえ、シルビアはどちらにせよ「死」を選ぶしかなかったんですね。

 

初演版では、フェルナンド、ロドリーゴとラモン、イサベラの身分格差が

非常によく描き出されていました。だから話に説得力があったんですね。

でも宙組版では、大和も蘭寿も北翔もあまり上流貴族に見えないというか

(特に蘭寿も北翔もラモンの方がやりやすかったみたいだし)

陽月も酒場の女の割には品がありすぎ、一方の美羽あさひは貴族の令嬢に

見えない・・・つまりみんな一並びに見えた事が、作品をわかりにくく

していたと思います。

 

そもそも大和はあまりコスチュームが得意でない月組の出身だし、

いきなりフェルナンドのような品格ある人物をあてられても無理があった

と思いますし、蘭寿も北翔も貴族の役は苦手で妙に芝居がかって

いました。

一番は大和・蘭寿・北翔の並びに縦線が見えず、横線だけと

いうのがやっぱり問題だったかな。

(さらに言えばルカノールを演じた悠未ひろ邦なつきさんが昔

恋人同士だったといわれても無理がありすぎっ

要するにベストなキャスティングではなかったということです。

 

お披露目ならお披露目らしく、若々しく元気な大和にふさわしい作品を

書き下ろしてしかるべき。そうやってこそトップスターの人気を

作っていくべきではなかったでしょうか?

 

「バレンシアの熱い花」は名作だと思います

あの台詞の間にある余韻といい、曲も演出も非常に宝塚的で

脇役に至るまで個性があり見せ場も多い、本当に素晴らしい作品だと

思いました。

それだけに、それをいかしきる事の出来なかった宙組が残念ですが

それはトップの責任というより初心者にいきなり上級コースをあてた

劇団の失敗だったと思っています。

これで暫くこの作品はお蔵入りになるでしょうね。

せっかくの名作が再演でおじゃんになってしまうとは・・・・全くもって

残念でした。

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