ふぶきの部屋

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ふぶきの脚本講座・・・バラの国の王子7

2011-05-24 07:00:00 | 宝塚コラム

第9場 → カット

第10場 野獣の邸

獣達が現れる

商人; ご主人様。お邸の、ご主人様。

野獣の声が響く。

野獣の声; 姿を現さない失礼を、どうか許して欲しい。あなたが娘だろうか。

ベル; 私に話しかけているなら、そうです。

野獣の声; 名はなんと。

ベル; 名前を尋ねるなら、ご自分かた名乗るのが礼儀です。

野獣の声; 私は・・・今は、名前がない。

ベル; 名乗る気がないとおっしゃるのですか。

野獣の声; そうではない。

ベル; みな、ベルと呼びます。

野獣の声; ベル。あなたは本当に、喜んでここへ来たのだろうか。

ベル; ええ。

野獣の声; 心から、お礼を述べたい。ありがとう。二人とも疲れているに違いない。

       ゆっくり休んで欲しい。

獣達、商人とベルを囲んで隠す。

獣達; ♪ 眠れないと思った二人は床につくなり寝付いた

      すると清き仙女が・・・・♪

清き仙女が現れる。

清き仙女; お父様の為、ここへ来るなんて、あなたは優しく親孝行な人ですね。

       いつか必ず、報われる時が来ますよ。 (消える)

獣達; ♪ ベルは夢から覚める あたりはまだ暗い ♪

ベル、現れる。獣達、去る。音楽、止まる。

ベル; 優しい・・親孝行・・違う。私は怖い。食べられたくない。すぐにも逃げ出したい。

    本当の私は、私しかしらない。

♪ 本当の私は 何も決められないだけ 

見知らぬ世界に憧れ 本を読んではため息をつく

でも本を閉じれば わからないことだらけ 

恋も 結婚も 先の事も 自分では何一つ決められない

夜中に幾度 泣いたか 私はずるいだけ どうしてここに来たのか

夢中だった お父様を何とか救いたくて ♪ 

喜んでここへ来たですって?そんなの嘘・・・

♪ 私は浅はかなだけ 野獣に食べられてもっともなほど ♪

獣達、泣き伏すベルを遠巻きに見守る。鹿が出てきてソロ。銀橋をゆく。

虎 ♪ ベルの部屋から低く 静かな泣き声が 父親を起こさぬよう

    決して悟られぬよう声を殺した泣き声 けれど

    私達には聞こえていた みな黙って聞いていた

    人として生きたころ あのように泣く日もあった ♪

獣達; ♪ バラの国はどこへ いつの日に帰るか 庭にバラは咲いても

       うるわしの国は見えない 遠ざかる記憶に追いすがるのみ ♪

虎; ♪ ベルの部屋からずっと ♪

虎;獣達; ♪ 止まらぬ泣き声が ♪

虎; ♪ 今夜はどうする事も出来ないけれど 泣かないで ♪

獣達; ♪ 泣かないで ♪

虎・獣達; ♪ 泣かないで 

暗転。

     ↓

 

第9場 ベルの部屋

下手側に向かってベルの部屋。ベッドとテーブル。上手側にドア。ドアの前で

様子を伺う野獣。そっと離れようとするが獣達に無言でおしきられ、仕方なくドアの

前に立ち尽くす。

ベル; 暗くて怖い部屋。誰もいないのね。あの虎はまだ見張っているの?

ベル、ドアの前で耳をすます。同じポーズの野獣。

ベル; お父様もお姉様達ももう家に着いたかしら。きっと私の事を心配しているに

     違いないわ。ああ、会いたい。お父様。

                                                                                                                                 ♪ 本当の私は 臆病な娘よ

見知らぬ世界に憧れ 夢見ては冒険をする

でもそれは本の中だけ 現実の私は 

平凡で つまらない おとぎ話の英雄にはなれない

本当は怖いの 身を切られる程 誰か助け出して欲しい 今すぐに ♪

お姉様のおっしゃる通り、私はいい子ぶりっこなのかも。

♪ 本当の私は 偽善者なだけ 今夜の私は最低の私 ♪ 

野獣; (独り言)偽善者だ?臆病だ?たった一人でこの邸に残る勇気を持った

   潔い、親孝行な娘なのに?なぜああも自分を卑下する?さっぱりわからん。

立ち去ろうとした処に虎が現れる。

野獣; わかったよ。見守ればいいんだろう・・・

獣達、泣き伏すベルを遠巻きに見守る。鹿が出てきてソロ。銀橋をゆく。野獣は

そっと部屋に入り、部屋中にバラの花びらを散らせる。

虎 ♪ ベルの部屋から響く 小さな泣き声が 誰かに聞かれぬよう

    決して悟られぬよう声を殺した けれど

    私達には聞こえていた みなうなだれて聞くばかり

    人として生きたころ あのように泣く日もあった ♪

野獣; ♪ バラの国は消えた もう二度と戻らない 輝かしい日々よ

       せめて今は眠れ 花びらの中で 優しい夢を ♪

虎; ♪ ベルの部屋からずっと 

虎;獣達; ♪ 止まらぬ泣き声が ♪

虎; ♪ 今夜はどうする事も出来ないけれど 泣かないで ♪

獣達;♪ 泣かないで ♪

虎・獣達; ♪ 泣かないで ♪

清き精霊が現れる。

清き精霊; 勇気ある美しい娘よ、これからの日々に平和と喜びが訪れますように。

暗転。


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4 コメント

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Unknown (ねね)
2011-05-24 23:12:49
ふぶきさん脚本でどうだったか定かでないですか…
バラを育てることは命を育てることで、大切なバラを手折られたことを悲しんだ野獣。
バラの花びらを散らすことは命散らすことにはならないのですか?
Unknown (Unknown)
2011-05-25 08:33:08
キムシンの脚本では「バラを育てる」=「命を育てること」となっており、野獣によればバラの命は人間の命よりも貴いもののように扱っています。でも観客からみると、なぜ「バラを育てる事」が命を育てる事なのか。それがわからないのです。何もバラじゃなくてもいい筈だし、人よりバラが大事っていう感覚もおかしい。
そこで、私の脚本では「バラ」=「母の形見」
としました。これを育てる事は母との思い出に浸ることです。
商人がバラを摘んだ時「私のバラを手折った」と怒ります。自分のものを他人がどうのこうのするのが嫌だっただけです。
でも野獣は泣き伏すベルの為に自らバラの花びらを散らします。これは一種の心の成長を表現しています。「思いやり」の心を野獣は持ったという事です。
なるほど! (ねね)
2011-05-25 23:33:51
すごく良く分かりました。
それなら納得です。
丁寧なご回答ありがとうございました♪
Unknown (ふぶき)
2011-05-26 18:09:45
>ねねさま
こちらこそ。読んで下さってありがとうございます♪最後までお付き合い下さいね。

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