それでは、「true tears」最終話「君の涙を」のあらすじ感想を。
今回はオープニングがなくて、いきなり病院内のシーンから。
つなぎ姿のままの純が薄暗い廊下に設置された自動販売機でドリンクを買い、眞一郎に手渡していました。
おおかた、救急車が呼ばれて、その際に純にも連絡がいったということかな。
純はあまり取り乱した様子がないので、この時点で乃絵に大したケガはなかったことがわかります。
そして、純は「屋上、行こうか」と眞一郎に呼びかけます。
屋上に上がると、空はもう明るみはじめていました。
眞一郎は、純に「すいません、俺、止められなく……」とわびますが、純はそれを気に留めるようすもなく、
「雪ってのも、悪いもんじゃないな」
などと言いだします。
「え?」
「いや、骨折程度で済んだのも、雪のおかげだっていうからさ。それに綺麗だ」
そして、シスコンお兄ちゃん純は、乃絵の話をします。
「あいつは綺麗なんだ。……あいつが泣けないのはどうしてだ?」
その問いかけに、眞一郎は自信なさそうに「自己……暗示」と答えます。
これは、乃絵と出会ったころに感じていたのと同じであり、その答えに満足しなかった純は「それだけか?」とさらにたずねます。
そして、「え?」と戸惑う眞一郎に、純は静かな笑顔を浮かべながらこう言います。
「帰ってくれ。俺は、お前を許せないんだ……」
それを聞いた眞一郎は黙って頭を下げ、屋上から去っていきます。
このときの純の気持ちは、
「眞一郎より、自分のほうが乃絵を理解しているのに、血のつながりゆえに乃絵を愛することは許されず、乃絵も眞一郎のことを好きになったという不条理に対してやり場のない怒りを抱いている」
といったところでしょうか。
眞一郎が立ち去ったあと、残された純は唇をかみしめてから、乃絵のいる病室に戻ります。
乃絵がもう起きていたので、純は「のど渇かないか?」と言って、さっき買ったコーヒーを差し出そうとします。
すると、乃絵に「ごめんなさい……」と謝られてしまいました。
「眞一郎の踊りを見てたら、私もできるかなって。……また、お兄ちゃんに心配かけて、傷つけた」
この「傷つけた」という部分に反応したのでしょう、純はこう答えます。
「お前は何も悪くない、俺が勝手にやったことだ。お前は何も知らなかった」
こう言っている以上は、純も眞一郎が悪いわけではないことをわかっているはずです。取引を仕掛けたのは、もともと純ですし。
その純は、次の乃絵の言葉に驚かされます。
「何も知らないことって、悪いこと。私は、何も知らないから傷つけてた。知ってれば、お兄ちゃんを傷つけずにすんだ……」
この「何も知らない」というのは、純からみれば「綺麗」ということなんですが、乃絵自身はそれをいけないことと認めたのです。
自分の瞳は「何も見ていなかった」。そんな瞳から涙が流れるのかと自分でも言ってたくらいですしね。
ここでシーンが変わって、日中の街中。
比呂美が横断歩道で信号待ちをしていて、青になったので渡ろうとしたのですが、反対側から純がまっすぐ歩いてきました。
目の前を歩いている二人組の間をわざわざ突っ切ってきたあたりから、純の余裕のなさがうかがえます。
純と比呂美は、祭の後片付けが行われている神社で話をします。
おそらく、乃絵がどうなったかなどといった話を先にしてたんでしょう、比呂美がこうつぶやきます。
「私のせい……」
すると純は、「みんながみんな、自分が悪いと思ってりゃ世話ねえな」と笑います。
で、比呂美を安心させるように「大丈夫、あんたは関係ない」というと、比呂美は「関係ない……」と微妙に落ち込んだようなようすを見せます。
それに気づいた純が「不服か?」とたずねると、比呂美は答えにくそうにわずかに目を伏せました。
比呂美としては、「眞一郎が自分を選んでくれたこと」も一因として考慮してもらいたかったところなんでしょう。女心は複雑ですね(笑)。
ここで会話が途切れるんですが、純がふと狛犬のほうに目をやると、口に赤いスカーフをくわえさせられていました。
「祭の残骸か……」
すると、話題が祭のほうに流れます。
「……見た?」
「いや、ずっとバイト。見たんだろ」
「うん。ステキだったよ、とても」
「そうか……」
このとき、比呂美は自分の気持ちが眞一郎のほうばかりにあることを悟られたと思ったのでしょう。気をつかうように「ごめんなさい」と謝ります。
しかし、純は「いや、大丈夫」と比呂美のほうに向き直り、きっぱりと告げます。
「俺、あんたの言うとおり、あんたのこと好きじゃなかった。……これっぽっちも」
その言葉を最後に、純は座っていた階段から立ち上がって、ひとり歩きだします。
すると、狛犬のところを通り過ぎようとしたところで強い風がふき、くわえられていたスカーフが宙に舞っていきました。
これは、ふたりの偽りの関係がここではっきりと終わりを告げたという象徴的表現ですね。
純がわざわざ「これっぽっちも」と強調したのも、後腐れのないようにするための配慮と思われます。わざわざ言わなくてもいいことですから。
さて、翌日。
学校にやってきた眞一郎はクラスのみんなから注目されてました。
「仲上くん、かっこよかったー!」
「見直したよー、すっげー」
そこで「ヒーローじゃないすか、眞一郎くん」とからかうのは三代吉。
それに眞一郎が「うっせーよ!」と言い返したところで、眞一郎のもとへ近づいてくる足音が聞こえてきました。
まあ、比呂美以外ありえないんですが(笑)。
比呂美は、みんなから注目を浴びている状況にも関わらず、
「帰り、うち、来て……」
と眞一郎に言います。その表情は、どこか思いつめたところがありました。
三代吉が「おい!」と眞一郎に問い詰めていましたが、眞一郎は比呂美の態度に呆然とするばかりでした。
夕方、約束どおり眞一郎は比呂美のアパートをたずねます。
眞一郎は、階段のところにネコがいるのを見つけて、それと戯れていたのですが、どうやって気づいたのでしょう……いや、ずっと待ち構えていたんでしょうね、すぐさま比呂美が上から声をかけてきました。
そして、比呂美はそのまま自分の部屋に戻っていきます。
部屋に入っていく比呂美の横顔からは、覚悟のようなものがうかがえました。
部屋に入った眞一郎は、出してもらったコーヒーを飲んで、比呂美が来るのを待っています。
比呂美は、ケーキをふたつ用意してテーブルまで戻ってきました。
しかし、自分の飲み物は用意してません。
「あれ、お前のコーヒーは?」
すると、比呂美は「カップ、ひとつ割っちゃった」と言って、
眞一郎の手ごとカップを持って、そのまんま口つけちゃいました。
ひとつのドリンクをストロー2本で飲むというプレイは有名ですが、相手の手ごと持っていって、カップから直接同じものを飲むプレイを編み出すなんて、比呂美、恐ろしい子!(笑)
そして、ムードを盛り上げておいてから、さらに追い討ち。
「……いいよ」
「いいよ」って何がだよ!(笑)
と思ったら、眞一郎もそのまんま聞いてました。
眞一郎は比呂美から目をそらすんですけど、カメラは下からなめるように比呂美の身体を映していって、セーターで強調された胸のふくらみがまたエロかったんだ。
夕陽に照らされた横顔も、いまにも泣き出しそうなのをこらえてる感じがそそります。
ここで、眞一郎内部では押し倒すか否かの選択肢が出たと思うんですが、
「どうしたんだよ……お前、少し変だぞ」
おそらくは、正しい選択をしたようで、その言葉に比呂美ははっとなります。
「身体まで使って、乃絵から眞一郎を引き離そうとした自分を軽蔑した」とでも思ったのでしょう、比呂美は一番正直な気持ちを言葉にします。
「嫌いにならないで……」
すると、眞一郎はノータイムで「なってないよ!」と答えるんですが、比呂美は「嘘……」と言ってしまいます。
しかし、眞一郎に「比呂美……」と呼びかけられたところで、ようやく少し冷静になれたようで、比呂美は、
「ごめんなさい、私、おかしい……。帰って、ごめん……」
と言って眞一郎を帰してしまいました。
部屋に残った比呂美は、ひとりごちます。
「私の涙が綺麗だなんて、嘘……。どんどん、どんどん嫌な子になっていく……」
比呂美の波がきれいだと評したのは乃絵ですが、彼女の言う「綺麗」と純の言う「綺麗」は意味が違うことがわかります。
純は、何も知らない乃絵を綺麗と言いますが、乃絵はそれを悪いことだと言い、他人を思って流れた比呂美の涙を綺麗だと言いました。
しかし、比呂美自身はそれを執着ととらえていて、そんな負の感情から流れる涙が綺麗なわけがないと思っているわけですね。
で、そんな比呂美が自分を取り戻すためにやったことは、バスケの練習。
自分が好きだと信じられるものに打ち込んで邪念を払おうとする気持ちはわかりますね。
このとき、比呂美は制服で練習していたので、朋与から「見えてますよー、比呂美さーん」と指摘されています。
一見して、視聴者からは何も見えてないのですが、観察眼の鋭い方がちゃんと見つけてました。
スタッフ、無駄なところに気合い入れすぎ(笑)。
その日、眞一郎が家に帰ると、ちょうど眞一郎に電話がかかってきていたところでした。
眞一郎は、お父さんから電話を受け取ります。
相手は出版社の人で、また作品を送って来いということでした。
このとき、眞一郎は思いついたかのようにお父さんに尋ねます。
「あ、親父ってさ……。どういうときに泣く?」
すると、お父さんは読んでた新聞から目を離して、眞一郎のほうを見ます。
それから、しばらく真剣に考えて、こういう答えを出します。
「心が、震えたとき……かな」
眞一郎が「ありがとう」と言って立ち去ったあと、お父さんはこっそり咳払いをします。
本人的に、かなり恥ずかしいセリフだったみたいです(笑)。
でも、その言葉は眞一郎の琴線にふれたようで、眞一郎は「心が震えたとき……」と言いながら、祭で踊っていた最中に乃絵の姿を瞳に捉えたときのことを思い浮かべていました。
ちょうどこのタイミングで、比呂美が仲上家を訪ねてやってきました。
玄関でママンと比呂美が話している声が聞こえてきたので、眞一郎はそちらに向かいます。
眞一郎が姿を現すと、ママンは「冷蔵庫に、いただいたチーズケーキがあるわよ」と言い残してその場を離れます。
本当、ママンいい人になりすぎだ(笑)。
眞一郎はとりあえずチーズケーキの話をしようとするのですが、比呂美は「ここで」と言ってそれをさえぎります。
そして、整理をつけた自分の気持ちを眞一郎に伝えます。
「みっともないなって……」
「え?」
「こんな自分、嫌なの。だから……」
「……」
「ううん、ずっとあなたが好きだったから、あきらめたりしたくないから」
ここで、眞一郎が嬉しそうな顔をしますが、比呂美はさらに続けます。
「そのかわり、邪魔するのもいやだから、ちゃんと、ちゃんと向き合ってほしいの。私とも……石動さんとも。向き合って、その上で眞一郎くんが出した答えなら、私、ちゃんと受け入れる」
……うん、これって私が12話見た時点で思ってたことと同じ(笑)。
私自身、比呂美を選んでほしいけど、「眞一郎がちゃんとしてくれるなら」乃絵を選んでも、どちらも選ばなくてもかまわないと書いてたはず。
で、それを聞いた眞一郎は比呂美にこう言います。
「あのさ、比呂美はかっこ悪くなんてない。かっこいいよ」
すると、比呂美は「スポーツマンですから」と笑いました。
やっぱり、バスケで汗を流したのが効いたんですね。
ここでシーンが切れて、居間でお茶を飲んでいるママンたちが映し出され、遠くで眞一郎が出かけようとしている音が聞こえてきます。
眞一郎は、絵本を持って出かけ、比呂美はママンに呼び止められて残ります。
そのママンが比呂美を呼ぼうとして居間を出たとき、眞一郎が比呂美にたずねます。
「そうだ、今夜の夕飯、お前んとこ何だ?」
「シ、シチュー……」
「やったあ。ご馳走になりに行く。待ってて」
そのやりとりを廊下で聞いていたママンは、ちょっとだけ寂しそうな顔をしてたような。
でも、もっと寂しそうな顔をしていたのは、乃絵のもとへ向かう眞一郎を見送っていた比呂美でした。
比呂美は、廊下の窓から眞一郎の姿を見つめ続け、
「うん、待ってる……」
とつぶやいてました。
さて、眞一郎は病院で乃絵と会ったのですが、
「見てほしい」
「……見ない」
「乃絵がいてくれたから描けたんだ」
「気のせいよ。眞一郎は、私がいなくても大丈夫。私がいなくてもきっと描けた」
乃絵は頑なに絵本を見ることを拒みます。
眞一郎の心の底に湯浅比呂美がいることに気づいたから、乃絵は眞一郎から離れようとしているのでしょうけど、まっすぐ向き合ってから離れないと、それは逃げてるだけということには気づいていないようです。
「だったら、言い方変える。お前に見てもらいたくて描いたんだ」
「……見ない」
「見てもらえないなら、捨てるかな」
「そうしたいなら、そうすれば」
そして、眞一郎は「捨てに行く」と言って立ち上がります。
「いちいち確認するの」と言う乃絵でしたが、眞一郎が歩き出したのを見て、眞一郎が本気だということを悟ったようです。
「どこに捨てに行くの?」
とつい聞いてしまいました。眞一郎は答えます。
「じべたが、飛ばないことを選んだ海に」
「……! 見てたの……」
「……見てた」
そして、こんな表情で眞一郎を見送った乃絵と、眞一郎が向かった海とが映し出されたところでBパートへ。
今回はオープニングがなくて、いきなり病院内のシーンから。
つなぎ姿のままの純が薄暗い廊下に設置された自動販売機でドリンクを買い、眞一郎に手渡していました。
おおかた、救急車が呼ばれて、その際に純にも連絡がいったということかな。
純はあまり取り乱した様子がないので、この時点で乃絵に大したケガはなかったことがわかります。
そして、純は「屋上、行こうか」と眞一郎に呼びかけます。
屋上に上がると、空はもう明るみはじめていました。
眞一郎は、純に「すいません、俺、止められなく……」とわびますが、純はそれを気に留めるようすもなく、
「雪ってのも、悪いもんじゃないな」
などと言いだします。
「え?」
「いや、骨折程度で済んだのも、雪のおかげだっていうからさ。それに綺麗だ」
そして、シスコンお兄ちゃん純は、乃絵の話をします。
「あいつは綺麗なんだ。……あいつが泣けないのはどうしてだ?」
その問いかけに、眞一郎は自信なさそうに「自己……暗示」と答えます。
これは、乃絵と出会ったころに感じていたのと同じであり、その答えに満足しなかった純は「それだけか?」とさらにたずねます。
そして、「え?」と戸惑う眞一郎に、純は静かな笑顔を浮かべながらこう言います。
「帰ってくれ。俺は、お前を許せないんだ……」
それを聞いた眞一郎は黙って頭を下げ、屋上から去っていきます。
このときの純の気持ちは、
「眞一郎より、自分のほうが乃絵を理解しているのに、血のつながりゆえに乃絵を愛することは許されず、乃絵も眞一郎のことを好きになったという不条理に対してやり場のない怒りを抱いている」
といったところでしょうか。
眞一郎が立ち去ったあと、残された純は唇をかみしめてから、乃絵のいる病室に戻ります。
乃絵がもう起きていたので、純は「のど渇かないか?」と言って、さっき買ったコーヒーを差し出そうとします。
すると、乃絵に「ごめんなさい……」と謝られてしまいました。
「眞一郎の踊りを見てたら、私もできるかなって。……また、お兄ちゃんに心配かけて、傷つけた」
この「傷つけた」という部分に反応したのでしょう、純はこう答えます。
「お前は何も悪くない、俺が勝手にやったことだ。お前は何も知らなかった」
こう言っている以上は、純も眞一郎が悪いわけではないことをわかっているはずです。取引を仕掛けたのは、もともと純ですし。
その純は、次の乃絵の言葉に驚かされます。
「何も知らないことって、悪いこと。私は、何も知らないから傷つけてた。知ってれば、お兄ちゃんを傷つけずにすんだ……」
この「何も知らない」というのは、純からみれば「綺麗」ということなんですが、乃絵自身はそれをいけないことと認めたのです。
自分の瞳は「何も見ていなかった」。そんな瞳から涙が流れるのかと自分でも言ってたくらいですしね。
ここでシーンが変わって、日中の街中。
比呂美が横断歩道で信号待ちをしていて、青になったので渡ろうとしたのですが、反対側から純がまっすぐ歩いてきました。
目の前を歩いている二人組の間をわざわざ突っ切ってきたあたりから、純の余裕のなさがうかがえます。
純と比呂美は、祭の後片付けが行われている神社で話をします。
おそらく、乃絵がどうなったかなどといった話を先にしてたんでしょう、比呂美がこうつぶやきます。
「私のせい……」
すると純は、「みんながみんな、自分が悪いと思ってりゃ世話ねえな」と笑います。
で、比呂美を安心させるように「大丈夫、あんたは関係ない」というと、比呂美は「関係ない……」と微妙に落ち込んだようなようすを見せます。
それに気づいた純が「不服か?」とたずねると、比呂美は答えにくそうにわずかに目を伏せました。
比呂美としては、「眞一郎が自分を選んでくれたこと」も一因として考慮してもらいたかったところなんでしょう。女心は複雑ですね(笑)。
ここで会話が途切れるんですが、純がふと狛犬のほうに目をやると、口に赤いスカーフをくわえさせられていました。
「祭の残骸か……」
すると、話題が祭のほうに流れます。
「……見た?」
「いや、ずっとバイト。見たんだろ」
「うん。ステキだったよ、とても」
「そうか……」
このとき、比呂美は自分の気持ちが眞一郎のほうばかりにあることを悟られたと思ったのでしょう。気をつかうように「ごめんなさい」と謝ります。
しかし、純は「いや、大丈夫」と比呂美のほうに向き直り、きっぱりと告げます。
「俺、あんたの言うとおり、あんたのこと好きじゃなかった。……これっぽっちも」
その言葉を最後に、純は座っていた階段から立ち上がって、ひとり歩きだします。
すると、狛犬のところを通り過ぎようとしたところで強い風がふき、くわえられていたスカーフが宙に舞っていきました。
これは、ふたりの偽りの関係がここではっきりと終わりを告げたという象徴的表現ですね。
純がわざわざ「これっぽっちも」と強調したのも、後腐れのないようにするための配慮と思われます。わざわざ言わなくてもいいことですから。
さて、翌日。
学校にやってきた眞一郎はクラスのみんなから注目されてました。
「仲上くん、かっこよかったー!」
「見直したよー、すっげー」
そこで「ヒーローじゃないすか、眞一郎くん」とからかうのは三代吉。
それに眞一郎が「うっせーよ!」と言い返したところで、眞一郎のもとへ近づいてくる足音が聞こえてきました。
まあ、比呂美以外ありえないんですが(笑)。
比呂美は、みんなから注目を浴びている状況にも関わらず、
「帰り、うち、来て……」
と眞一郎に言います。その表情は、どこか思いつめたところがありました。
三代吉が「おい!」と眞一郎に問い詰めていましたが、眞一郎は比呂美の態度に呆然とするばかりでした。
夕方、約束どおり眞一郎は比呂美のアパートをたずねます。
眞一郎は、階段のところにネコがいるのを見つけて、それと戯れていたのですが、どうやって気づいたのでしょう……いや、ずっと待ち構えていたんでしょうね、すぐさま比呂美が上から声をかけてきました。
そして、比呂美はそのまま自分の部屋に戻っていきます。
部屋に入っていく比呂美の横顔からは、覚悟のようなものがうかがえました。
部屋に入った眞一郎は、出してもらったコーヒーを飲んで、比呂美が来るのを待っています。
比呂美は、ケーキをふたつ用意してテーブルまで戻ってきました。
しかし、自分の飲み物は用意してません。
「あれ、お前のコーヒーは?」
すると、比呂美は「カップ、ひとつ割っちゃった」と言って、
眞一郎の手ごとカップを持って、そのまんま口つけちゃいました。
ひとつのドリンクをストロー2本で飲むというプレイは有名ですが、相手の手ごと持っていって、カップから直接同じものを飲むプレイを編み出すなんて、比呂美、恐ろしい子!(笑)
そして、ムードを盛り上げておいてから、さらに追い討ち。
「……いいよ」
「いいよ」って何がだよ!(笑)
と思ったら、眞一郎もそのまんま聞いてました。
眞一郎は比呂美から目をそらすんですけど、カメラは下からなめるように比呂美の身体を映していって、セーターで強調された胸のふくらみがまたエロかったんだ。
夕陽に照らされた横顔も、いまにも泣き出しそうなのをこらえてる感じがそそります。
ここで、眞一郎内部では押し倒すか否かの選択肢が出たと思うんですが、
「どうしたんだよ……お前、少し変だぞ」
おそらくは、正しい選択をしたようで、その言葉に比呂美ははっとなります。
「身体まで使って、乃絵から眞一郎を引き離そうとした自分を軽蔑した」とでも思ったのでしょう、比呂美は一番正直な気持ちを言葉にします。
「嫌いにならないで……」
すると、眞一郎はノータイムで「なってないよ!」と答えるんですが、比呂美は「嘘……」と言ってしまいます。
しかし、眞一郎に「比呂美……」と呼びかけられたところで、ようやく少し冷静になれたようで、比呂美は、
「ごめんなさい、私、おかしい……。帰って、ごめん……」
と言って眞一郎を帰してしまいました。
部屋に残った比呂美は、ひとりごちます。
「私の涙が綺麗だなんて、嘘……。どんどん、どんどん嫌な子になっていく……」
比呂美の波がきれいだと評したのは乃絵ですが、彼女の言う「綺麗」と純の言う「綺麗」は意味が違うことがわかります。
純は、何も知らない乃絵を綺麗と言いますが、乃絵はそれを悪いことだと言い、他人を思って流れた比呂美の涙を綺麗だと言いました。
しかし、比呂美自身はそれを執着ととらえていて、そんな負の感情から流れる涙が綺麗なわけがないと思っているわけですね。
で、そんな比呂美が自分を取り戻すためにやったことは、バスケの練習。
自分が好きだと信じられるものに打ち込んで邪念を払おうとする気持ちはわかりますね。
このとき、比呂美は制服で練習していたので、朋与から「見えてますよー、比呂美さーん」と指摘されています。
一見して、視聴者からは何も見えてないのですが、観察眼の鋭い方がちゃんと見つけてました。
スタッフ、無駄なところに気合い入れすぎ(笑)。
その日、眞一郎が家に帰ると、ちょうど眞一郎に電話がかかってきていたところでした。
眞一郎は、お父さんから電話を受け取ります。
相手は出版社の人で、また作品を送って来いということでした。
このとき、眞一郎は思いついたかのようにお父さんに尋ねます。
「あ、親父ってさ……。どういうときに泣く?」
すると、お父さんは読んでた新聞から目を離して、眞一郎のほうを見ます。
それから、しばらく真剣に考えて、こういう答えを出します。
「心が、震えたとき……かな」
眞一郎が「ありがとう」と言って立ち去ったあと、お父さんはこっそり咳払いをします。
本人的に、かなり恥ずかしいセリフだったみたいです(笑)。
でも、その言葉は眞一郎の琴線にふれたようで、眞一郎は「心が震えたとき……」と言いながら、祭で踊っていた最中に乃絵の姿を瞳に捉えたときのことを思い浮かべていました。
ちょうどこのタイミングで、比呂美が仲上家を訪ねてやってきました。
玄関でママンと比呂美が話している声が聞こえてきたので、眞一郎はそちらに向かいます。
眞一郎が姿を現すと、ママンは「冷蔵庫に、いただいたチーズケーキがあるわよ」と言い残してその場を離れます。
本当、ママンいい人になりすぎだ(笑)。
眞一郎はとりあえずチーズケーキの話をしようとするのですが、比呂美は「ここで」と言ってそれをさえぎります。
そして、整理をつけた自分の気持ちを眞一郎に伝えます。
「みっともないなって……」
「え?」
「こんな自分、嫌なの。だから……」
「……」
「ううん、ずっとあなたが好きだったから、あきらめたりしたくないから」
ここで、眞一郎が嬉しそうな顔をしますが、比呂美はさらに続けます。
「そのかわり、邪魔するのもいやだから、ちゃんと、ちゃんと向き合ってほしいの。私とも……石動さんとも。向き合って、その上で眞一郎くんが出した答えなら、私、ちゃんと受け入れる」
……うん、これって私が12話見た時点で思ってたことと同じ(笑)。
私自身、比呂美を選んでほしいけど、「眞一郎がちゃんとしてくれるなら」乃絵を選んでも、どちらも選ばなくてもかまわないと書いてたはず。
で、それを聞いた眞一郎は比呂美にこう言います。
「あのさ、比呂美はかっこ悪くなんてない。かっこいいよ」
すると、比呂美は「スポーツマンですから」と笑いました。
やっぱり、バスケで汗を流したのが効いたんですね。
ここでシーンが切れて、居間でお茶を飲んでいるママンたちが映し出され、遠くで眞一郎が出かけようとしている音が聞こえてきます。
眞一郎は、絵本を持って出かけ、比呂美はママンに呼び止められて残ります。
そのママンが比呂美を呼ぼうとして居間を出たとき、眞一郎が比呂美にたずねます。
「そうだ、今夜の夕飯、お前んとこ何だ?」
「シ、シチュー……」
「やったあ。ご馳走になりに行く。待ってて」
そのやりとりを廊下で聞いていたママンは、ちょっとだけ寂しそうな顔をしてたような。
でも、もっと寂しそうな顔をしていたのは、乃絵のもとへ向かう眞一郎を見送っていた比呂美でした。
比呂美は、廊下の窓から眞一郎の姿を見つめ続け、
「うん、待ってる……」
とつぶやいてました。
さて、眞一郎は病院で乃絵と会ったのですが、
「見てほしい」
「……見ない」
「乃絵がいてくれたから描けたんだ」
「気のせいよ。眞一郎は、私がいなくても大丈夫。私がいなくてもきっと描けた」
乃絵は頑なに絵本を見ることを拒みます。
眞一郎の心の底に湯浅比呂美がいることに気づいたから、乃絵は眞一郎から離れようとしているのでしょうけど、まっすぐ向き合ってから離れないと、それは逃げてるだけということには気づいていないようです。
「だったら、言い方変える。お前に見てもらいたくて描いたんだ」
「……見ない」
「見てもらえないなら、捨てるかな」
「そうしたいなら、そうすれば」
そして、眞一郎は「捨てに行く」と言って立ち上がります。
「いちいち確認するの」と言う乃絵でしたが、眞一郎が歩き出したのを見て、眞一郎が本気だということを悟ったようです。
「どこに捨てに行くの?」
とつい聞いてしまいました。眞一郎は答えます。
「じべたが、飛ばないことを選んだ海に」
「……! 見てたの……」
「……見てた」
そして、こんな表情で眞一郎を見送った乃絵と、眞一郎が向かった海とが映し出されたところでBパートへ。