12345・・・無限大  一粒の砂

「一粒の砂」の、たわごと。
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ユリウス・カエサル14

2009年01月07日 05時52分34秒 | Weblog

 塩野七生女史は、彼女の著作における歴史上の証拠ないしは史料として、歴史記述(先人たちの書いた史実)と考古学上の成果を上げておられる。しかし、女史はこれらを全面的には信頼しないという。

なぜなら、いずれの歴史記述も著者達の限られたフィルターを通しての史実であり、考古学上の発見も、地表を全て剥がして見たのではなく、ごく限られた範囲でのものにしか過ぎないからというのである。

それゆえ、最高統治者であった皇帝が成した事が、国家にとって良いことかかそうでないかを基準とする皇帝評価の物差しを考案した。

 具体的には、後に続いた皇帝達が先帝の政策や事業を継承したどうかを、判断基準とするものだった。

これによると、ローマ史上最高の統治者は、カエサルとアウグストゥスであるという。ローマ帝国は、結局のところこの二人が創ったのであり、ローマ人たちもこの二人だけを「神君」と呼んだという。

死後に「記録抹殺刑」に処された悪名高き暴君ネロを、この物差しで計ってみると、意外な結果になるのである。

パルティアという強国との間の友好関係樹立は、後代の皇帝により半世紀も守り続けられたということから、外交面での功績は大きかった。

ギリシャ文化に心酔していたネロがローマの中心部に緑豊かな理想郷を実現しようと行った黄金宮殿建設では、


「悪しき結果に終わった多くのことは、そもそもよき動機から発していたのである」とカエサルが言うように、

現代のエコロジストなら諸手を挙げて賛同したものであるが神殿や市民達が競技や浴場として使用するべきだという当代のローマ人達の考え方とは異なっていたのがその当時の統治者としての大きな誤りだった。

特定の歴史家の視点から見た評価を鵜呑みにすることは慎まなければならないことのようである。

これらのことは、現代の日本人にとっても大切な事である、政治家達のとった政策が、恒久性を持つかどうかを厳格に判断できる素養を養っておく必要があることを示唆するものであろう。

補足:
ローマ人達は、死後の名誉を最も大切なことと考えた。

「記録抹殺刑」とは、その皇帝の業績や像や顕彰碑や文書上の記録等を死後全て抹殺・抹消するという、皇帝にとって耐え難い不名誉な刑罰であった。