世界にはいろいろな民族が住んでいます。宗教もいろいろです。しかし全ての民族の文化には優劣は絶対にありません。それぞれの文化には特徴はあります。しかし西洋文化が東洋文化より優れているということもありません。
従って中国の文化も朝鮮の文化も日本の文化にも優劣なんてある筈がありません。
中国も朝鮮も日本もお互いに相手の民族文化を尊敬し友好を促進することは絶対的な善です。
そして日韓友好促進のために日本人は朝鮮文化を正しく深く理解すべきと思います。
今日は朝鮮の歴史と文化を簡単に書いてみます。朝鮮とは現在の韓国と北朝鮮のことです。
我々日本人が学校で習う朝鮮の歴史はおもに3件の出来事です。大和朝廷と高句麗、新羅、百済との交流と、豊臣秀吉の李朝時代の出兵と、1912年の朝鮮併合のことです。すべて政治的な事件です。
しかし朝鮮に花咲いた文化については教えません。
ですから日本の学校では朝鮮に古代からあった郷歌のことや百済、新羅、高句麗の三国時代の『三国史記』や『三国遺事』のことは一切教えません。
日本に古事記や日本書紀、万葉集があったように朝鮮にも同じような文学作品や歴史書があったのです。
これを知れば日本人は韓国と北朝鮮に親近感を感じるはずです。これこそ友好関係を築く第一歩です。
さて朝鮮文化を知る第一歩として、韓国の世界遺産を見ることから始めてみましょう。
そしてその次に韓国の古典文学を概観してみます。萬葉集や源氏物語に相当するような文学作品をご紹介します。そして最後に韓国人なら誰でも知っている「春香伝」、「沈清伝」、「薔花紅蓮伝」などの小説のあらすじご紹介します。
さて韓国の世界遺産です。以下にその一覧を示します。
世界文化遺産:
石窟庵と仏国寺 - (1995年認定)
海印寺大蔵経板殿- (1995年認定)
宗廟 - (1995年)
昌徳宮 - (1997年)
華城 - (1997年)
慶州歴史地域 - (2000年)
高敞、和順、江華の支石墓群 - (2000年)
朝鮮王陵 - (2009年)
大韓民国の歴史的村落:河回と良洞 - (2010年)
南漢山城 - (2014年)
世界自然遺産:
済州の火山島と溶岩洞窟- (2007年)
以上の世界遺産の中で朝鮮王陵を見てみると李朝朝鮮の歴史が一挙に分かります。
朝鮮王陵は、韓国と北朝鮮にある李朝の朝鮮王朝時代の歴代王族の王陵です。朝鮮王陵は、1408年から1966年のおよそ5世紀にわたって造られたのです。2009年6月27日に朝鮮王陵40基がユネスコにより世界遺産として登録されています。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E7%8E%8B%E9%99%B5 より)
1番目の写真は世界遺産の李氏朝鮮第4代国王・世宗の墓の写真です。
2番目の写真は世界遺産の昌徳宮の全体の写真です。このソウルにある昌徳宮の概略を説明すると以下のようになります。
朝鮮王朝の開祖李成桂は1392年に開城で王に即位、その2年後の1394年に漢陽(漢城、現在のソウル)への遷都を決定します。
無学大師の風水に基づき漢江の北、北岳山の南にあたる「陽」の地が選ばれ、李成桂が開城で政務を執っている間から王宮の建設が始まったのです。鄭道伝によって「景福宮」と命名され、1395年から李氏朝鮮の正宮として使用されたのです。1397年には漢陽の城郭と四大城門が完成しました。
1592年の文禄の役において、国王の宣祖が漢城から逃亡して治安が乱れると、先陣争いをする小西行長らの一番隊や加藤清正らの二番隊の入城を前に朝鮮の民衆によって略奪と放火の対象となり再び焼失したのです。
3番目の写真は世界遺産の昌徳宮の大門の前の風景です。1397年に漢陽の城郭と四大城門が作られのですが、その大門を復元したのです。
4番目の写真は韓国の世界遺産の南漢山城の写真です。
5番目の写真は世界遺産の「大韓民国の歴史的村落:河回と良洞」の風景写真です。郷愁を感じるような農村風景です。
さて次に朝鮮の古典について概観してみましょう。
その為にいろいろ調べましたら次の研究論文が明快な概説だと感心しましたので、その概要を示します。
「文学からの接近:古典文学史:―― 時代区分とジャンルを中心に」、山田 恭子著http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/nomahideki/edu_04_004_yamada_se4l.pdf
この研究論文ではまず韓国古典文学史を考える上で重要な時代区分やジャンルについて言及し,韓国古典文学の全体像を把握することを目的としています。
そして時代区分を以下のように6つの時代に別けています。
碑文学,漢文学,国文文学(ハングル文字)の関係から,古代前期、後期,中世前期、後期,近世,近代の6 期に分けて考察しています。
碑文学は5世紀になって漢字や漢文学が入ってくるまでの口承文学です。この口承文学は後に「帝釈本解」へと発展します。
そして古代後期とは,建国神話の出現,漢字伝来と漢文学の成立,郷歌の形成に至るまでの時代をさすそうです。
郷歌とは,新羅の三国統一期である6 世紀頃から高麗中期である13 世紀まで存在した文学形式を意味します。しかし広義の郷歌とは紀元前からあった形式で中国漢詩に対する当時の朝鮮の歌謡を広くさす呼称でした。
そして百済、新羅、高句麗の三国時代には.『三国史記』や『三国遺事』が書かれたのです。
それはさておき、中世文学の時代は、漢文学の時代です。科挙制度の前身ともいえる新羅の読書出身科が788 年に,本格的な科挙試験は958 年に実施されたことも漢文学の隆盛とつながったのです。しかし漢文学は訓民正音を用いた国文文学とも共存しました。
最初は漢字を利用した吏読 を通じて,次には朝鮮語を直接表記できる訓民正音とも併用されたのです。
私が想像しているのはこの訓民正音は日本の万葉仮名に相当するものと思います。
中世前期は郷歌と漢文学,特に漢詩が盛行したのです。
そして1446年に李氏朝鮮第4代国王の世宗が、「訓民正音」を正式に公布し、公文書にも使用するようになったのです。それが現在のハングルです。
朝鮮では日本と同様に教養のある人は現在でも漢字の読み書きが出来るのです。
末尾に「春香伝」の粗筋を示しましたのでお楽しみ下さい。
以上のように朝鮮の文学は日本と同様にいろいろな分野があり、内容も豊かなのです。
これを知れば日本人は韓国と北朝鮮に親近感を感じるはずです。これが友好関係を築く第一歩です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)
===============================
(1)春香伝とは、
春香伝は李氏朝鮮時代の説話で、妓生の娘と両班の息子の身分を越えた恋愛を描いた物語です。
18世紀頃、民族音楽的語り物であるパンソリ、すなはち「春香歌」の演目「春香歌」として広まるとともに、小説化も行われました。韓国では現在も人気のある作品であり、映画化も何度か行われています。
あらすじは次のようなものです。
南原府使の息子・李夢龍と、妓生(キーセン)である月梅の娘・成春香は、広寒楼で出会い、愛を育みます。しかし、父の任期が終わり、夢龍は都に帰ることになります。夢龍と春香は再会を誓い合って別れます。新たに赴任した卞府使は、春香の美貌を聞きつけて我が物としようとすますが、春香は夢龍への貞節を守って従いません。激怒した卞府使は春香を拷問し投獄します。都に帰った夢龍は科挙に合格して官吏となり、南原に潜入します。夢龍は卞府使の悪事を暴いて彼を罰し、春香を救出し、二人は末永く幸せに暮らしたという話です。
韓国人なら誰でも知っている話です。
「沈清伝」や「薔花紅蓮伝」なども検索すると内容が出て来ます。
「沈清伝」;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%88%E6%B8%85%E4%BC%9D
「薔花紅蓮伝」;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%94%E8%8A%B1%E7%B4%85%E8%93%AE%E4%BC%9D
(2)「帝釈本解」の内容、
裕福な家に1 人の娘がいて,大切に扱われていた。ある日両親は娘を置いて出かけなければならない用事ができ,娘は一人家で留守番をしていた.
そのとき道僧が尋ねてきて布施米を請うた.娘は米を袋に入れるが,穴が開いていてなかなか米がたまらなかった.こうしているうちに夜遅くなり,僧は娘の家に一晩泊まることになった。道僧が帰った後,娘がはらんだことを知った両親は激怒し、娘を家から追放する。
娘は僧を訪ねて行き,そのまま住みつき3 人の息子を生んだ。道僧はそれが自分の息子であることを確認するために試練を課し、父子関係を認めた。
このような内容は,超現実的方法によって父母の承諾もなしに妊娠し追い出される点や,息子と父親との出会いと親子関係の確認が行われる点で,李圭報(1169-1241)の『東国李相国集』などに共通しています。
(3)この欄に掲載された朝鮮の歴史と文化に関する記事の一覧、
2014年11月4日から6回にわたって以下のような連載記事を掲載してきました。
「あなたの隣人を愛せますか?・・・朝鮮文化を少し知ろう」(6)完結編:豊かな朝鮮文化(2014年11月15日掲載)
「あなたの隣人を愛せますか?・・・朝鮮文化を少し知ろう」(5)革命的な磁器焼成と李朝の白磁(11月11日掲載)
「あなたの隣人を愛せますか?・・・朝鮮文化を少し知ろう」(4)日本人に感動を与えた朝鮮の少女」(11月9日掲載)
「あなたの隣人を愛せますか?・・・朝鮮文化を少し知ろう」(3)朝鮮の古典文学(11月7日掲載)
「あなたの隣人を愛せますか?・・・朝鮮文化を少し知ろう」(2)朝鮮の歴史の概略(11月5日掲載)
「あなたの隣人を愛せますか?・・・朝鮮文化を少し知ろう」(1)韓国の世界遺産」(11月4日掲載)