山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

秘湯三斗小屋温泉と吹雪の那須岳  平成20年11月19‐20日

2008年11月29日 | 日本百名山
 平成20年11月19‐20日 天候曇りのち雪

 職員旅行で東北の中尊寺や松島へ行く機会があった。バスと新幹線を乗り継いでの旅の予定なのだが、山に登りたい私は一人だけ旅行前日に休みをとり、車で甲府を出発。目指すは那須岳の裏側、那須岳ロープウェイ山頂駅から徒歩約2時間の三斗小屋温泉という秘湯だ。
 この日から冬型の気圧配置となり、強烈な寒気が入り込んでくるため、東北地方の日本海側は大荒れ、大雪の天気になる予報だ。栃木と福島の県境にある那須岳あたりならなんとか大丈夫だろうという甘い考えで中央道、圏央道、一旦一般道路に下りて東北道に乗りなおし、那須岳ロープウェイに到着したのは午後1時半だった。ロープウェイ駐車場で三斗小屋温泉大黒屋に電話すると、もう今年の営業は終了しているが、隣の煙草屋は営業しているという。そちらに電話すると話し中。2度目で電話がつながった。夕食が4時半なので、急いで来て欲しいと言う。さっそく準備にとりかかるが、ロープウェイ出発案内の放送があり、1時48分出発だという。時間が5分しかない。大急ぎでザックに荷物を詰め込んでなんとか間に合ったが、乗ってからザックの違和感に気づく。いつもより軽いのだ。水を1リットルしか持っていないのもあるが、それにしても軽すぎる。ザックを下ろして確認すると、カメラマンの命とも言うべき三脚を入れ忘れてしまった。それとカップラーメンやスパゲッティは持って来たのにバーナーとコッヘルが入っていない。ロープウェイを乗り返して取りに戻ることも考えたが、小屋に到着する時間が遅くなってしまう。空はどんより曇り空、たいした写真は期待できないこと、また三脚必須の星空撮影も今回は無理そうだ。三脚はあきらめて、今回は温泉を楽しむことにした。

    那須岳ロープウェイ山頂駅


    牛ヶ首から見る那須岳.薄雪を纏う.

 ロープウェイには7~8人の乗客がいたが、登山らしき格好をしているのは私だけ。時間と季節、それと平日ということもあり、登る人は少ないらしい。山頂駅から那須岳山頂を越えるコースと牛ヶ首という山の中腹を巻いてゆくコースがあるが、山頂は明日の朝楽しむことにして牛首コースを行く。ほぼ水平な道を20分ほど歩いて牛ヶ首到着。このあたりは那須岳の噴煙があちらこちらからモクモクと上がっていて、硫黄臭が強い。ここから峰の茶屋跡にやはり水平に巻き道が続いているが、わずかに進んだところで牛首から西に下る「山斗小屋温泉」の道標が立っていた。一旦そちらに下り始めたが、確かこっちの道は少し遠回りだったはず。地図で確認すると、やはり10分か20分くらい余計に時間がかかるので、戻って峰の茶屋跡からのコースを行くことにする。

    噴煙を上げる那須岳.牛ヶ首付近から.


    夕映えの那須岳.三斗小屋温泉避難小屋から見上げる.

 小雪が時折ぱらつくものの、寒さはそれほどでもなく、時折陽が差し込む天候だ。峰の茶屋跡には立派な避難小屋が立っているが、原則ここは宿泊禁止となっている。やや急な下りを下りてゆくと今度は山斗小屋温泉避難小屋が左側に立っている。ここは宿泊禁止とは書かれていなかった。4畳半ほどの部屋が2段式で左右にあり、20人ほどは宿泊できそうな小屋だった。ここから見上げる那須岳は格好が良い。その先は歩きやすい道となり、荷物が軽かったので途中はトレランの真似をして走ったりしながら、3時45分、思ったよりも早く三斗小屋温泉煙草屋旅館に到着した。

    三斗小屋温泉.宿泊した煙草屋と大黒屋の2件の宿がある.車では行けない秘湯.


    煙草屋旅館の露天風呂.


    露天風呂と脱衣所.混浴だが,午後3時~5時は女性専用となる.

 本日の宿泊客は男性3人のみ。旅館はおかみさん1人で切り盛りしており、週末に番頭さんたち数人が登って来るという。本日は3人だが、土曜日は予約で満室という、人気のある旅館だ。普段は午後3時から5時までは露天風呂は女性客専用となるのだが、この日は男性客だけなのでいつ入っても良いと言われ、食事の前にさっそく露天風呂に行く。ちらほらと小雪が舞う中、貸切りの露天風呂につかりながら雪化粧しはじめた山を眺める、う~ん、極楽極楽。4時半食事となり、ゆっくり食べて6時に部屋に戻り、7時には早々に布団にもぐり込んだ。その頃から雪が深々と降り始めていた。

    翌朝の那須岳.雪と風で白く霞む.


    強風と地吹雪

 翌日は職員旅行のグループと午後1時半、平泉中尊寺で待ち合わせの予定だ。ロープウェイ駐車場は9時ごろに出発しないと危い。雪道を歩くことを考えると、午前5時前に出発しないと山頂を踏んで駐車場まで行くのは難しそうだ。3時起床、カップラーメンを食べて(バーナーを忘れたのでここでしか食べる機会がない)もう一度露天風呂に入り、持って行った冬山装備と軽アイゼンを身に纏って、早朝4時半に旅館を出発した。旅館周辺は10~15cmほどの積雪、このあたりは谷間なのでさほど風は無かったが、上空はゴーゴーと風が吹く音がしている。上はいったいどうなっているのだろう。闇の中を歩きながら若干の不安がよぎる。三斗小屋温泉避難小屋あたりで朝6時となり、明るくなってきた。那須岳を見上げると昨日よりはずいぶんと雪がついている。足元の雪も20cmほどになり、雪の下に埋もれた石にアイゼンがひっかかって歩きにくい。さらに登って行くと、吹き溜まりでは腿から腰のあたりまで雪の積もっている場所もあった。強風が吹き荒れ、稜線直下は地吹雪が吹き荒れる。冬山装備でなかったらひとたまりもない。

    地吹雪吹き荒れる稜線直下


    峰の茶屋跡避難小屋と,遠く霞む那須岳

 6時50分、峰の茶屋跡避難小屋に到着。ここは風の通り道と呼ばれていて、谷からの風と両側の山から巻いてくる風がこの場所を通って流れて行く、強風の名所である。立っているのがやっとくらいの凄い風と地吹雪、山頂までは通常ならば30分ほどだが、遠く白く霞んでいる。とても登る気にはなれない。そのまま真直ぐに下山道を進むが、こっちの道は完全に吹き溜まりになっていて、延々と膝あたりまでのラッセルを強いられる。昨日の小屋で一緒だった2人は大丈夫だろうか?ちょっと心配になる。黙々と歩いて8時、駐車場に到着した。こちらは山の東側で風を受けないため、風も無く穏やかだった。

    那須岳ロープウェイ駅到着.山の東側になるこのあたりは風が吹かず穏やか.

 昨日から冬型の気圧配置になった東北地方、山はもうすっかり冬山だ。少しの雪を踏めればと思っていたが、とんだ吹雪になってしまった。麓の東北自動車道まで下りるとそちらは打って変わって青空の広がる好天。しかし那須岳には真っ白な雲がまとわりついていた。山をなめてはいけません。

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2 コメント

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むむ、 (のぞむ)
2008-11-30 07:18:05
先週の土日、茅ヶ岳付近ではポカポカ陽気でしたが、栃木、福島までくると全然違いますね。

ホント、今回もスゴイですね~

>稜線直下は地吹雪が吹き荒れる。冬山装備でなかっ
>たらひとたまりもない。

>延々と膝あたりまでのラッセルを強いられる。

さすがのヨッシーさんもピークを踏まずに撤退ですか。でも、ご無事で良かったです。

一日で那須岳の様子ががらっと変わるのが冬山なのですね。いや~今回のレポも参りました!

先週土曜日に私はかずさんと茅に行きました。ヨッシーさんが直した標柱の文字もちゃんと撮影してきましたよ~
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のぞむ君へ (ヨッシー)
2008-11-30 07:55:28
 レポ見ました。標柱の文字、なんとか無事のようですね。那須岳出発の日、甲府は秋晴れの好天で、紅葉も真盛り。こんな日にわざわざ天気の悪い北に行ってて良いのかなという、後ろ髪を引かれる思いがしてました。
 大荒れの那須岳でしたが、あれはあれで楽しめましたけどね。山頂はロープウェイ駅から40分で登れますので、時間さえあればいつでも行けます。日本百名山への執着心は今のところあまりないので、無理に登ろうとは思ってません。今度は好天の良い日にのんびりと歩いてみたいです。
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