
今年も“2月26日”が近付いた。
さて、どうするか、というのが正直な気持ちである。
紹介した「二・二六事件諸士 遺詠集」は、昭和27年7月12日に発行された冊子である。
奥付には「無断転載を禁ず(非売品) 発行者 佛心会 代表者 河野司」と記されている。
二十二士の遺詠を紹介した出版物は、その後いろいろと登場したが、
この遺詠集には、群書とは異なる特別の思いがこめられているように思う。
「まへがき」
「本年は二・二六事件関係にて刑死または自決せる二十二士の中、十八士の十七回忌を迎へました。此の秋に當り私共遺族十六年間の悲願でありました合同埋葬と建碑を果し得ました事は、何物にも例へ難い欣びであります。
此の欣びを機とし、故人達の秘められた遺書、遺詠の中から主なる、和歌、俳句並びに漢詩を抄録し、これ等を通じて故人達の切々たる悲懐を御汲取り頂くよすがにもと、此の小冊を纏めました。
謹んで二十二士の霊前に捧げ、併せて各位の御高覧を仰ぐ次第です。
昭和二十七年七月十二日 佛心会 責任者 河野司」

賢崇寺にある「二十二士の墓」も、渋谷税務署の隣にある「二・二六事件慰霊像」も、それが建立されるまでには多くの苦難があったのだ。
そういう経緯にふれることもなく、浅薄極まりない愚論を書き散らしている“騙り部”の跋扈を、見逃すわけにはいかないと思う。(末松)