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子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ナイスガイズ!」:何でも70年代風味にすりゃ良いってもんではないでしょ

2017年03月26日 20時31分12秒 | 映画(新作レヴュー)
ここまで変身を遂げるとは思わなかったぜ,ラッセル・クロウ。
松坂慶子に松下由樹。最近ではクイズ番組に出ていたあべ静江か。若かった頃の体型をかなぐり捨てて,首から肩にかけてのヴォリュームと包容力で勝負するようになった女優さんや女性歌手は枚挙に暇がないが,男性の俳優でここまでメタモルフォーゼした例は,そう多くはないだろう。映画を観ながら,完全に表舞台から姿を消してしまったかつての恋人メグ・ライアンがこの変身ぶりを観たら何というのだろうか,などと余計なことを考えてしまったのは,クロウの激変ぶりのせいだけではなく,作品のクオリティも大きく影響していたのは間違いない。

そんな激太りしてしまったとは言え往年のセックス・シンボル,ラッセル・クロウに今が旬のライアン・ゴズリング。新旧の渋めのスターを並べて,かつて「リーサル・ウェポン」シリーズを大ヒットさせたジョエル・シルヴァーの制作とくれば,新世紀のバディ・ムーヴィーの誕生に向けて仕立ては充分。実際,親のベッドの下からエロ本を引っ張り出して舌なめずりするように眺めていた少年の前に,崖から落ちてきた車の中から雑誌に載っている女性が血塗れで現れる巻頭から,70年代風のポップな字体でクレジットが被さる導入部は至極快調だ。

巨悪に翻弄される非力な探偵というフレームワークは,アルトマンの「ロング・グッドバイ」からトマス・ピンチョンの原作をP.T.アンダーソンが映画化したスーパー変化球の「インヒアレント・ヴァイス」まで,これまで数多の傑作が採用してきた「探偵もの」の基本だ。だがポルノ映画の制作に関わる陰謀に巻き込まれた二人にゴズリングの娘(アンガーリー・ライス)を加えた3人組の探偵劇は,コメディなのかハードなアクションなのか,作品自体のトーンが定まらないがために,映画そのものがひたすら迷走する。
それでも因縁を越えて凸凹コンビが結成される件までは,ライスのキュートな魅力もあってどうにか持ち堪えるのだが,クロウが襲ってきたギャングの命を奪ってしまうあたりで,完全にオフ・ビート・コメディの車線をはみ出してしまい,そのまま落下してクラッシュしてしまう。

そもそもこの程度の話に116分という尺を使ってしまう制作サイドの感覚が間違っている。ロジャー・コーマンに学んで,出直して来て欲しい。
★★
(★★★★★が最高)


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