子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「SCOOP!」:大根仁VS福山雅治

2016年11月19日 17時12分32秒 | 映画(新作レヴュー)
主にマスコミ関係の業界あるあるネタを巧みに使いながら,音楽と映像の親和性を拡大する方向で若者の成長物語を描いてきた大根仁が,新作で福山雅治にあてがったキャラクターは,福山自身が長年対峙してきたと思しき「パパラッチ」だった。長年完全無欠のパフォーマーとして絶大な人気を誇ってきた福山が,どんな思いで「スクープ狙いの露悪的なカメラマン」という,一見彼のキャラクターからは最も遠いように思われる役柄を選んだのか。果たしてその狙いは成功したのか?

写真週刊誌と契約を結んでいるらしいフリーのカメラマン都城静(福山)が,版元の若い記者野火(二階堂ふみ)を助手に従えて,政治家や芸能人の下半身ネタを追いかける。初めは野火を使えない子供と敬遠していた都城だったが,都城について行こうと必死になる姿に,次第に恋心が芽生えてくる。二人のチャレンジが実を結び,スクープを連発する最中,都城に極秘ネタを提供していた裏社会の男チャラ源(リリー・フランキー。大根作品の常連。好演)が,薬物で錯乱した末に殺人事件を起こしてしまう。

週刊誌の副編集長で静の元妻(吉田羊)や彼女と張り合うもう一人の副編集長(滝藤賢一)にチャラ源等々,静を取り巻く人間たちは実に多彩で,切った張ったに明け暮れる刹那的な業界の実態は,大根作品特有のEDMを活かした編集も相まって実に活き活きと描き出されている。取りわけ福山と共にほぼ出ずっぱりの二階堂ふみは,抑揚のある演技と眩いばかりの美しさで,映画をさらう。時に見せる陰りのある表情は,真木よう子をも思わせて,今後の日本映画界を背負って立つ気概すら漂わせる。

そんな輝きに満ちた脇役たちが取り囲む中心はどうかというと,これが残念ながら周囲の光度に埋没してしまったのか,思ったような輝きを放てていない。冒頭のコールガール相手のお楽しみから取材へと移る長回しから,肩に力が入り過ぎて滑ってしまったのでは,という印象は,最後までついに回収されることはない。ラフでタフなパパラッチを精一杯ワイルドに演じてみましたが,お楽しみ頂けましたでしょうか?的なニュアンスが全編を支配している以上,特に福山のファンではない観客も,大根の「モテキ」や「バクマン。」のように,野火の成長物語として楽しむことも出来ないのだ。
エンドロールに流れる,まるで福山のプロモーションヴィデオではないかと思われるような静と野火のやり取りが,何とも痛々しい。
★★
(★★★★★が最高)


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