
古沢良太。一般には「相棒」や「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズで知られるライターだが,私にとっては「リーガル・ハイ!」「鈴木先生」そして「デート〜恋とはどんなものかしら〜」という,いずれも日本のテレビドラマではお目にかかることがなかった革新的な主人公を生み出した「クリエイター」としての仕事が印象深い脚本家だ。そんな彼が「リーガル・ハイ」でコンビを組んだ演出家石川淳一と手を組んでオリジナル脚本による映画進出を目論んだのが,2015年の4月1日に公開された「エイプリルフールズ」だった。昔懐かしい惹句「オールスターキャスト」という言葉の響きが似合うくらい,確かに数だけは大量の俳優を起用したコメディだったが,まったく笑えないドタバタは,作品そのものが「冗談でしょ」と言われても仕方のないような出来だった。
そんな二人がリベンジを期して挑んだのが,おそらく今日本のドラマ界で最も数字が取れる女優と呼んでも過言ではない新垣結衣を迎えた「ミックス。」だ。
幼少期に母(真木よう子。「セシルのもくろみ」を彷彿とさせる下流なりきり演技が痛い)からスパルタ教育を施された多満子(新垣。卓球の球からの命名か。幼少期時代の描写は愛ちゃんのそれに激似)は30代を目前にして,卓球エリートとの恋に破れ故郷に帰る。
亡き母が経営していた卓球教室が倒産寸前となったことから,どうにか生徒を増やして存続させるための窮余の策として考えたのが「全日本選手権に出場して活躍し教室の名前を売る」こと。そのパートナーには,これまた訳ありの元ボクサー(瑛太)を指名し,教室の落ちこぼれメンバー4名と共にビッグ・イヴェントに挑戦するのだが…という物語がメイン・プロット。
基本的にはよくある「社会的負け犬のリヴェンジ・ストーリー」なのだが,石川=古沢コンビは「エイプリルフールズ」で犯したミスをここでも繰り返している。グランドホテル形式,すなわち複数の登場人物の背景や事情を描きつつ,ラストで複数のプロットを収斂させる,という物語形式を取るために必要な,各プロットの丁寧な書き込みとラストで観客を納得させる強い「フック」の両方ともが,残念ながら本作には欠けている。その結果,出来上がったものは,お寒いギャグがまぶされた薄っぺらなスポ根物語に過ぎず,「ラブコメ」と呼ぶことすら憚られる代物となってしまった。
もっとも物語の出来を云々する以前に,肝心の卓球シーンが15年も前に作られた曽利文彦の「ピンポン」の水準に遥かに及ばない出来である時点で,既に勝負は付いてしまっているのだが。
本来なら星一つが妥当な評価だが,唯一笑えた,中国ナショナルチームの落ちこぼれだった中華料理店の店員を演じる蒼井優の演技により★を一つ加算。制作コンビには,本来の職場での捲土重来を切望する。
★★
(★★★★★が最高)
そんな二人がリベンジを期して挑んだのが,おそらく今日本のドラマ界で最も数字が取れる女優と呼んでも過言ではない新垣結衣を迎えた「ミックス。」だ。
幼少期に母(真木よう子。「セシルのもくろみ」を彷彿とさせる下流なりきり演技が痛い)からスパルタ教育を施された多満子(新垣。卓球の球からの命名か。幼少期時代の描写は愛ちゃんのそれに激似)は30代を目前にして,卓球エリートとの恋に破れ故郷に帰る。
亡き母が経営していた卓球教室が倒産寸前となったことから,どうにか生徒を増やして存続させるための窮余の策として考えたのが「全日本選手権に出場して活躍し教室の名前を売る」こと。そのパートナーには,これまた訳ありの元ボクサー(瑛太)を指名し,教室の落ちこぼれメンバー4名と共にビッグ・イヴェントに挑戦するのだが…という物語がメイン・プロット。
基本的にはよくある「社会的負け犬のリヴェンジ・ストーリー」なのだが,石川=古沢コンビは「エイプリルフールズ」で犯したミスをここでも繰り返している。グランドホテル形式,すなわち複数の登場人物の背景や事情を描きつつ,ラストで複数のプロットを収斂させる,という物語形式を取るために必要な,各プロットの丁寧な書き込みとラストで観客を納得させる強い「フック」の両方ともが,残念ながら本作には欠けている。その結果,出来上がったものは,お寒いギャグがまぶされた薄っぺらなスポ根物語に過ぎず,「ラブコメ」と呼ぶことすら憚られる代物となってしまった。
もっとも物語の出来を云々する以前に,肝心の卓球シーンが15年も前に作られた曽利文彦の「ピンポン」の水準に遥かに及ばない出来である時点で,既に勝負は付いてしまっているのだが。
本来なら星一つが妥当な評価だが,唯一笑えた,中国ナショナルチームの落ちこぼれだった中華料理店の店員を演じる蒼井優の演技により★を一つ加算。制作コンビには,本来の職場での捲土重来を切望する。
★★
(★★★★★が最高)