2022J1リーグ第４節 札幌VS.横浜FM【1:1】

とても惜しい試合だった。レフェリーによっては提示したアディショナル・タイムになった時点で笛を吹く場合もあれば，この試合のようにアディショナルタイムを過ぎた時点でまだ相手陣地内でボールを廻して攻撃態勢に入っていれば，ボールがアウトになるまで笛を吹かないケースもある。提示されたATを30秒以上も経過した時点で同点弾を決められた札幌にとっては不運だったと見えるかもしれないが，盟友アンデルソン・ロペスが頭で競り勝ったボールをオーバーヘッドキックで決めた実藤の技術は高かった。決定的なチャンスの数では圧倒されていた札幌にとっては，貴重な「勝ち点1」だったと捉えるべきだろう。

ポステコグルーに代わって2季目となる，俳優のスタンリー・トゥッチ似のマスカット監督が仕掛けるマリノスの効率的なプレスは，試合の序盤から札幌を圧倒した。前線のスピードをかわせずに招いたピンチは数知れず。菅野のゆったりとしたプレーは，いつものようにあっと言う間に相手FWの格好の標的となり，詰まって自陣でボールを奪われては，菅野の好セーブで難を逃れる，という「札幌流マッチポンプ組み立て」を見ていると，いつ失点してもおかしくない展開だったと言える。

このところ試合の入りではリズムを掴んでも，相手が慣れてきたり，疲れが出てくると手詰まりになる，というパターンが続いていたのだが，本当の意味で攻撃的なマリノスが火を点けたからなのか，今日は違った。
セカンドボールへのアクセス・スピードでほぼ全敗だった前半から，マリノスのスピードに慣れてきた前半の終わり頃から，特に菅が入った後半からは左サイドを中心に徐々にデュエルで勝てるようになっていったのだ。長いボールでサイドを変えたり，速いFWをスペースに走らせるパスが生命線の札幌にとっては，イーブンからこぼれたボールをアタッキングサード内で拾えるかどうかが試合の鍵を握るポイント。それが見られるようになった矢先の先制点は，菅の思い切りが見事に嵌まった素晴らしいゴールだった。ペナルティエリア内では常にシュートよりもクロスを意識しているように見える小柏が，あの得点を見て，角度のないところでも狙うべきだと，意識を変えてくれると良いのだが。

その小柏が怪我で退場してしまったのは痛かったが，ミシャの交替が少しずつ機能しつつあることは嬉しい兆候。首位を行く横浜から得た自信が，次に勝ち点３を奪うベースとなってくれることを強く願う。