子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2011年TVドラマ春シーズン・レビューNO.4:「glee」

2011年06月13日 23時19分01秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
新年明けてすぐにレンタルが始まり,更に新学期に合わせてNHKのBSで放送が始まって以降,どこのレコードショップでも,レンタル店でも,この番組に関連したコーナーを見かけるようになった。過去に米国製のTVドラマのヒット作は数多くあったが,ここまで大規模な関連プロモーションが展開された例は,なかったのではないかという気がするくらいだ。オハイオの片田舎に住む落ちこぼれの高校生が,つぶれかけたグリークラブで奮闘する姿を,今昔のヒット曲やスタンダードに乗せて描いた青春ミュージカル・ドラマ「glee」は,昨年(2010年)のゴールデングローブ賞の最優秀ドラマ賞を受賞した話題の作品だ。

この番組のヒットに関する最大の特徴は,ドラマ本体と同等か,それ以上に劇中で歌われる曲にも華やかなスポットライトが当てられたことだろう。リアーナやアヴリル・ラヴィーン,カニエ・ウェストなど現役バリバリのアーティストの曲に混じって,70年代~80年代の「産業ロック」を代表するジャーニーの曲がテーマ扱いされていることを始めとして,クイーンやニール・ダイアモンド,更にはCCRをカバーしたアイク&ティナ・ターナーの曲まで,新世紀では忘れ去られたように見える古い曲の蔵出しを行ったことが,逆に若い人にウケた原因となっている可能性は高い。
基本的にアレンジは派手で,原曲が持っていたイメージを明るい原色で塗りつぶしたようなチューンが多いが,キャストの足腰のしっかりとした歌唱力と,メリハリの利いたダンスのサポートによって,金曜日の夜の健康的なエンターテインメントとして機能しているという印象を受ける。

肝心のドラマの方は,一見シンプルな「落ちこぼれのリヴェンジ物語」に見えるが,民族やセクシャル・マイノリティー,ドラッグ,ローティーンのセックス,いじめ,進学の悩み,障害者への偏見,親子の確執等々,アメリカのあらゆる階層において顕在化している問題を,毎回手を替え品を替えて取り上げることによって,エピソードの陳腐化を防いでいるところがミソだ。
勿論,その扱い方においては,繊細なグラデーションといったものは一顧だにされず,微妙な心の綾や心理的葛藤といった類に到っては,破壊力抜群の「スーの人生相談」に吹っ飛ばされるのがオチだろう。
だがそれでも,日本のTVドラマなら扱うこと自体を躊躇するようなテーマを,明るいミュージカルナンバーと同様のノリであっけらかんと笑い飛ばす,制作陣と役者達のアグレッシブな姿勢は極めて魅力的だ。

アグレッシブな登場人物の代表格レイチェル(声優を務めるのは,今春,新しいアルバムを出したばかりの坂本真綾)は,果たして非リア充な高校生活から抜け出すことが出来るのか。今クールのドラマの中では,怒濤のホラーと化した「名前をなくした女神」と並んで,猛烈な勢いで先行している「鈴木先生」を追撃する最右翼の作品だ。


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