子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ冬シーズンレビューNO.3:「不毛地帯」,「君たちに明日はない」

2010年02月18日 00時29分31秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
2シーズンに跨って制作されているフジの「不毛地帯」だが,航空機から始まった近畿商事(壱岐:唐沢寿明)対東京商事(鮫島:遠藤憲一)の対決は,自動車での壱岐の惨敗を経て,いよいよ石油を巡る利権争いという最終局面に入ってきた。
このところの数字は11~12%辺りで推移しており,前半で記録してしまった一桁(第4回)というスランプ状態に陥る心配はないように見える。

このシリーズは,例えて言えば「160km近い剛速球を投げるのに,一本調子のせいで打たれてしまうクルーン」の様に映る。キャストは豪華だし,セットもしっかりとしており,何より2クルーぶち抜きという,連続ドラマとしては願ってもない贅沢な尺の使い方が許されているという自由度では,他の追随を許さない。

だが物語の展開がどうにも平板で,喜劇を主戦場にしている俳優も揃えていながら,ペースを変えるために必要な「笑える場面」は皆無だ。
更に主人公(壱岐)のライヴァルとなる鮫島と主人公の行く手を遮る内部の邪魔者である里井副社長(岸部一徳)の描写が,どうにもステレオタイプであることによって,肝心のビジネス対決が盛り上がりに欠けるという点も致命的だった。

しかし年が明けて後半に入ったところで,一旦心臓病で倒れた里井が,突如として一本調子を超えた,暴走とも言える演技を前面に出すようになって,事態は変わった。社長(原田芳雄,好演)に向かって「壱岐正は危険な男ですぅ!」と目を三角にして糾弾する岸部の怪演が,物語に笑いとゆとりをもたらしたのだ。

だから前回(後半第5回)のラストで,社長が里井に子会社への出向を命じた時,私は里井本人に劣らず悲しい思いだった。折角の笑いの種を,壱岐をスーパー・ヒーローではなく,権謀術数の中でもがく生身の男として描くための貴重な存在を,こんなに早く消し去って良いのかという気持ちだったのだ。
あとは,何故か殊の外「器の小さい」愛人として描かれている小雪と壱岐とのラヴ・アフェアが,天海祐希を巻き込んでドロドロの展開に嵌ることくらいしか,アクティブなドラマになっていく可能性は感じられないが,さて?

一方で,同じく硬派の転職ドラマとして順調なスタートを切った(あくまで数字ではなく内容の話)かに見えたテレビ朝日の「エンゼルバンク」だが,回を追う毎に長谷川京子のワンパターンの演技が鼻につくようになってきた。それに比べると,リストラ請負人の悲哀を描いたNHK「君たちに明日はない」は,垣根涼介の原作にはないキャラクターも活き活きと,期待以上の密度を保っている。

このドラマの「チェンジ・オブ・ペース」は,笑いではなく,主人公(坂口憲二)が「熟女好き」である,というキャラクター設定だ。これは原作の設定をなぞったものであり,勿論ハードな絡みの描写はないのだが,この「天下のNHK」らしからぬ主人公の嗜好こそが,ドラマにきちんとしたリアリティーを与えているように見える。

微妙に「男っぽく」恥じらう田中美佐子と主人公の恋愛半歩手前のやりとりが,毎回変わるリストラ対象を立体的に描く背景としてうまく機能している様を観られるのも,あと2回のみというのは非常に残念だ。
続編が出た原作に合わせて,TVドラマの方もシリーズ化して欲しい。出来れば恋愛対象となる熟女の方もどんどん変えてね。


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