子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説」:マーケット戦略を超えるアクション

2021年10月09日 11時45分28秒 | 映画(新作レヴュー)
「MARVELもの」と「DCもの」の区別も付かず,自らの行いについて必要以上に苦悩するヒーロー・ヒロインたちにも馴染めず,結果的にひと目でお笑いと分かるものを幾つか観てきただけの非アベンジャーズ派の私が,エイジアンが主人公の「シャン・チー/テン・リングスの伝説」を観に行った理由は,密かに「チャイニーズ・アメリカンの世界における伊藤沙莉」と呼んでいる女優,オークワフィナが出演していると知ったからだった。「オーシャンズ8」で出会った彼女が,大ヒット作「クレイジー・リッチ!」でブレイクし,「フェアウェル」で独自のポジションを築くまでの道程を見てきたものとしては,たとえ苦手分野とはいえども外すわけにはいかなかった。公開から時間を置いて,空席の目立つ劇場で観た「シャン・チー」は,助演であってもちゃんと彼女の魅力が活かされたアクションの秀作だった。

テン・リングスという魔力が宿った腕輪を持つ父と,神話世界の守護神だった母の息子シャン・チーは,離れて暮らしていた妹と共に父に捉えられ,母が閉じ込められていると父が信じている神話世界に入り込む。しかしそこで封印されていたのは母ではなく,邪悪な竜だった。兄と妹は力を合わせて最強の敵に立ち向かっていく。

MARVELものの登場人物が冒頭からエンドクレジットに至るまで複数出てくるので,おそらくはこれもまた壮大なサーガを構成するひとつの物語となっているのだろうという予測はつくが,門外漢の私にはそのつながりも意味付けもまったく分からない。けれどもそういった部分を享受できなくとも,映像技術で補強されているとは言え,生身のアクションが中心に据えられた活劇としての面白さは充分に味わうことが出来る。特にエイジアン・クリエイターのハリウッド進出の先駆者であるアン・リーの20年前の秀作「グリーン・ディスティニー」に出演していたミシェル・ヨーが,兄妹の叔母として溌剌と躍動する姿を観られたことは実に感慨深かった。父親役のトニー・レオンと同い年の59歳。次作では,このところすっかり渋い役に落ち着いてしまった感のある真田広之61歳のアクションも観てみたいところ。

肝心のオークワフィナは「スーサイド・スクワット”極”悪党,集結」と同様,この手の作品の終盤のお決まりになりつつあるような怪獣対決のシークエンスで,渾身の弓矢を放ってポン・ジュノ「グエムル漢江の怪物」のペ・ドゥナと繋がって輝く。本家伊藤沙莉も負けずに海を渡ってくれないものか。
★★★★
(★★★★★が最高)


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