映画とライフデザイン

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Jエドガー  イーストウッド&ディカプリオ

2012-02-01 17:18:46 | クリントイーストウッド
「Jエドガー」はクリントイーストウッド監督の新作である。
早速に劇場で見てきました。前作「ヒアアフター」は霊媒師の話でちょっとどうかと感じたが、本作は主役であるディカプリオの演技が実によく出来は上々。


アメリカ連邦捜査局FBIの長官をなんと48年にもわたって牛耳ってきたジョン・エドガー・フーバー長官の伝記だ。フーバーは1924年から1972年まで政治から独立した強大な権力を手にしていた男だ。彼はアメリカのあらゆる秘密を掌握し大統領の誰もが彼を恐れた。そういう権力者の若いころの逸話から、死ぬまでをじっくりと語る。いつもながらしっとりとしたイーストウッドの音楽をバックに裏のアメリカ史が語られる。個人的には大好きなテイストだ。


FBIのジョン・エドガー・フーバー長官ことレオナルド・ディカプリオが、部下に命じて回顧録を書き取らせるシーンからスタートする。
まずは1919年に記憶は遡る。ロシア革命のあと、共産主義者がアメリカ国内でテロ行為を行っていた。フーバーの司法省の上司が危うく爆発事故で死にそこなうシーンが映し出される。アメリカの共産主義者を打ちのめすために、徹底的に摘発していく。当時は警察の資質も悪く、捜査もまともに行われなかった。そういう中フーバーが頭角を現す。そして司法長官から捜査局の局長代理に任命される。
秘書には司法省内では美人で目立つナオミワッツがなる。彼女は自らを独身主義だと称していて生涯フーバーに仕える。
まずは、捜査にそぐわない人間がすぐさま追放された。蝶ネクタイ、ヒゲ、服装、素行などでチェックアウト。採用の人選も厳しく統率のとれた組織を作り上げていった。そんな中一人の長身の紳士トムソンことアーミーハマーがフーバーの参謀役となり、マフィア摘発やリンドバーグの息子誘拐事件などにかかわっていく。ケネディ兄弟、キング牧師、ニクソンまでアメリカ現代史の重要人物がでてくる。


非常に面白かった。
いきなり共産主義者がおこす革命じみた爆破行為に憤慨した若き日のフーバーことレオナルド・ディカプリオがコテンパンにやっつけるシーンが出てくる。痛快である。煽動する共産主義思想家を国外追放にしたりする。法律も変えたりして強引だ。しかも、彼自体が捜査局の局長代理になる時、司法長官に注文を出す。「政治が関与しない組織にしてくれ」と。そうして彼は若くして権力をつかむ。
まずはここで共産主義をやっつけたからこそアメリカの黄金の20年代があった。

しかし、禁酒法と裏腹にのさばる裏社会の全盛時となり、フーバーの標的が共産主義者から裏社会の人間へと変わる。治安の維持のため、彼は捜査組織を動かす。でも彼の動きをよく思わない政治家から聴聞を受けたりもする。でもそれには彼は負けていない。大統領を始めとする要人たちの秘密を調べ上げ、その極秘ファイルを自身で所有し、そのファイルの内容をもとに政治家たちにプレッシャーをかける。脅しぶりが高度だ。フランクリンルーズベルトをはじめ、ケネディ兄弟などみんなフーバーを引きづりおろそうとして返り打ちを食らう。
そんな凄い男をレオナルド・ディカプリオがうまく演じた。今回の彼は特にいい。


フーバー長官はFBI科学捜査の基礎を確立した。全国から犯罪者の指紋を集め、州をまたがる指紋管理システムを作ったのも彼なら、マフィア退治をはたすFBIを映画やテレビ媒体でヒーローに押し上げたのも彼だった。
映画ではそういう彼の私生活にずいぶんと入っていく。マザコンとも称していいようなジュディディンチ演じる母親への強い愛情、フィーバーの片腕役の長官代理との同性愛めいた私生活の話などはどこまでこの映画で取り上げるのか脚本段階では微妙な葛藤があっただろう。

80歳過ぎて創作意欲のおちないイーストウッドは相変わらず凄い。イーストウッド自身が出ていなくても彼の作品と感じてしまうムードがある。マイルスデイヴィスのバンドで、マイルスがトランペット吹かない曲なのにウェインショーター、ハンコックがマイルスがいる雰囲気を醸し出す曲と同じようなものだ。個人的にはイーストウッド監督作品としては「ヒアアフター」や「インビクタス」よりはよくできていると感じる。

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