映画とライフデザイン

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映画「ドローン・オブ・ウォー」 イーサン・ホンク

2015-10-28 20:02:39 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「ドローン・オブ・ウォー」を映画館で見てきました。


総理官邸の上をドローン機が飛んでいたことがわかり大騒ぎになってから、日本でも一躍ドローンの存在が話題になり規制が加わった。この映画では、実際に中東の紛争地区でアメリカのドローン機がテロリストの疑いのある連中をゲーム感覚でミサイルで攻撃するという話だ。狙撃のためのスイッチを押しているのは1万2000キロ離れているラスベガスである。ちょっと驚く。

映画の内容はイーストウッド監督「アメリカンスナイパー」に似ていて、ドローン機の狙撃の名手が大量に人を殺すことで感じるストレスで精神が不安定になる主人公をイーサン・ホンクが演じている。厭戦映画ともいえるが、自分の知らない世界を描いて興味深い。

ラスベガス郊外の空軍基地の一角にあるコンテナで、テロリストの動きを常に監視しているチームの姿を映しだす。トミー・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は、かつて戦闘経験豊かなパイロットであった。現在は紛争地域から約12000キロ離れた場所から、タリバンに攻撃を加える任務についている。地上3000mの高さに位置するドローンから映し出される映像が、テロリストのアジトを映しだす。間違いないと上司が判断した時、命令に従ってミサイルで攻撃するのだ。


上司のジョンズ中佐(ブルース・グリーンウッド)は、トミーの腕を高く評価している。トミーは、妻モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)と幼いふたりの子供と近くの一戸建て住宅に暮らしている。監視は延々と続き、重要人物が射程に入った時は家にも帰れないことがある。ある日、新人の女性兵士スアレス(ゾーイ・クラヴィッツ)が入隊、トミーとコンビを組むことになる。スアレスは、ミサイルを誘導するレーザー照射の任務につく。2人が標的とする場所を民間人の子供が歩く、それなのに命令がくだり、関係ない人たちが巻き添えになってしまう。こういう理不尽な命令が続き、トミーのストレスは高まり、酒量は増え続けている。夫婦の仲もうまくいかなくなっているのであるが。。。


いくつかネタバレあります。

1.民間人を巻き込む狙撃命令
映画「アメリカンスナイパー」で狙撃された男が持っていた武器を小さい子供がもって射撃しようとしているところを主人公が狙いを定め、武器を捨てろ捨てろと言いながら、子供が武器を置いてその場を離れ、撃てなくてよかったとつぶやくシーンがあった。ここではモニターを見ている上司から容赦なく命令が下る。この要人を生かせていたら、いずれアメリカの一般人が被害を受ける。そう説得されて狙撃するが、まわりには無実の人たちも含まれている。むごいなあ。


モニターで、トミーと女性兵士がタリバンのナンバー2の隠れ家を監視している。ナンバー2の使用人らしい女性が、その隠れ家を訪れるタリバン兵らしき男から暴行を受けるばかりでなく、強姦される。ドローンが生々しく映しだし、女性兵士が顔をそむける。でも関係ない人物には何も手を出せないのだ。女性にとって屈辱的なシーンが何度も続き、女性兵士もだんだんイヤになってくる。でもこれでは終わらなかった。
ラストに向けて、この場面の決着が出てくる。それまでイヤなシーンが続いたが、妙にすっきりしてしまう。

2.攻撃結果確認
ミサイルで対象物を爆破したあと、何人が死んでいたか確認する場面が出る。「攻撃成果評価」とここでは言っている。民間人が絡んだちょっとやばい狙撃ではそれをしないが、基本的にはすべて行われる。ドローン機からの映像は鮮明でそれがわかるのだ。当たり前におこなわれるべき行為だと思うが、第2次世界大戦中の日本ではこれがおこなわれず、推測で戦果を過大評価し、誤った作戦に進んでいってしまったことが1人の大本営参謀堀栄三によって語られている。


戦果は大きくない。。。第一誰がこの戦果を確認してきたのだ。。。。やはりこれが今までの○○島沖海軍航空戦の幻の大戦果だったのだ。堀はそう直感した。ブーゲンビル島沖航空戦では、後になってみると、大本営発表の十分の一に足りない戦果であった。(大本営参謀の情報戦記 堀栄三より引用)

そして堀参謀は航空戦での戦果は大きくないと現地より電報を打つ。それでも「君の台湾沖航空戦の戦果判断は間違っている」と他の軍幹部にたじたじにされる。しかし、実際には大きな被害を受けていないアメリカの艦隊は正攻法でレイテ島に上陸し、日本軍はコテンパンにやられるのだ。

米軍は常に戦果確認機をだして写真撮影をするのが例となっているが、日本の海軍でも陸軍でもその方法は採られなかった。これが国運を左右する結果を招いてしまったことは肝に銘ずべきであろう。とにかく目で見ることは戦果確認の一番大事なことであった。(大本営参謀の情報戦記より引用)

台湾沖航空戦で大勝利したという誤った情報で、大元帥である天皇陛下にも誤った判断をさせてしまった。堀参謀の情報もありルソン島を守ろうとする山下奉文大将と寺内元帥の意見はまとまらない。それに対して天皇陛下は「一度「レイテ」で叩いて、米がひるんだならば、妥協の余地を発見できるのではないかと思ひ、「レイテ」決戦に賛成した。」(昭和天皇独白録より引用)
天皇陛下は台湾沖航空戦の誤った報告があったため、寺内元帥に指示し、山下大将はいやいや受けさせられた。それは単純に軍部が戦果確認をしていなかったということのせいだとすると軍の怠慢の責任は重たい。

上司や株主に対してはいい話をしたいのは山々だけど、結果がよくなくても正確に報告するのはビジネスでも同じだと思う。

3.無差別殺人とストレス
米軍によって日本領土は東京大空襲をはじめとしてたいへんな爆撃の被害を受けた。その戦闘機に乗っていた人たちは同じようなストレスになることはなかったのであろうか?無差別に爆弾を投下しているなら、相手の顔を見ることはない。それだけでも違うだろう。今回の主人公のようにドローン機から相手の姿やふるまいがはっきり認識できると、違うかもしれない。そんなことを思った。自分がこの主人公の立場になったら、命令には従うけど、同じような悪夢に襲われる気がする。

いろいろと考えさせられる映画だ。
いずれにせよ、科学の力による戦闘がひと時代前とちがうことを実感させる。

(参考作品)
アメリカン・スナイパー
天才狙撃者の精神の不安定


大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇
日本軍の怠慢さが顕著にわかる名著

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