映画「IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー」を映画館で観てきました。
映画「IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー」は鬼才レオスカラックス監督の「アネット」以来の新作である。前々作「ホリーモーターズ」で奇怪な映像を見せてくれた後に「アネット」ではミュージカル仕立ての部分もあった。さてどんな映像を見てくれるのかが楽しみだ。上映時間は42分と短い。
経緯と作品の紹介は作品情報を引用するしかない。
パリの現代美術館ポンピドゥーセンターはカラックスに白紙委任する形で展覧会を構想していたが、「予算が膨らみすぎ実現不能」になり、ついに開催されることはなかった。その展覧会の代わりとして作られたのが『IT‘S NOT ME イッツ・ノット・ミー』である。
『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』。それは「これは私ではない」と題されたセルフポートレート。カラックスが初めて自ら編集しためまいのようなコラージュ。「鏡を使わず、後ろ姿で描かれた」自画像。子供の始めての嘘(フィクション)のような「僕じゃない」という言い訳――。(作品情報 引用)
不思議な映像体験を楽しめた。42分間は短く感じなかった。
レオスカラックス監督作品の常連ドニ・ラヴァンが奇怪な服装で出てくる映像や初期作品のジュリエットビノシュの場面をいじくった映像もでてくる。自らの過去作や古今東西のニュースフィルムの引用などさまざまなホームビデオから映画、音楽が次々と連続してでてくる。映像の断片が盛りだくさんなので、短い感覚がなかった。
前作「アネット」を観た時、それまでの作品よりも予算があったように感じた。その勢いで新作を構想していたのに違いない。でも予算不足で断念。一部新しい表現があっても旧作の引用だけど編集にすぐれる。短い時間を緊張感をもって過ごせる。それ以上は書きようがない。
そこにはストーリーも結論もないが、至る所に見る者の心を揺さぶる声や瞬間がある。難民の子供の遺体に重なるジョナス・メカスの声。留守電に残されたゴダールの伝言。娘のナスチャがピアノで奏でるミシェル・ルグランの「コンチェルト」のテーマ。
主観ショットで捉えられた『汚れた血』のジュリエット・ビノシュ。『ポーラX』のギョーム・ドパルデュー(1971-2008)とカテリナ・ゴルベワ(1966-2011)。盟友だった撮影監督ジャン=イヴ・エスコフィエ(1950-2003)への献辞。その後で、不意に訪れる驚嘆すべき素晴らしい終幕――。すべてが親密で私的で詩的なカラックスからのメッセージだ。(作品情報 引用)