映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「大いなる不在」藤竜也&森山未來

2024-07-22 06:51:21 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「大いなる不在」を映画館で観てきました。


映画「大いなる不在」藤竜也認知症の老人で、両親の離婚で疎遠になっていたその息子森山未來が演じるシリアスドラマである。監督は近浦啓で作品を観るのが初めてだ。認知症問題の映画は得意な部類ではないが、藤竜也が主演となると気になる。予告編を観ると、かなり重症のようだ。映画館内の周囲には70代より上で、ヨタヨタ歩くよくもまあ映画館に来るなという老人も目立つ。

映画は時間軸をずらしながら進む。施設に入った父と息子とのかみ合わない会話、父と再婚相手との家庭に息子が訪問した様子などを交互に映し出していく。いきなり機動隊のような面々が銃撃を恐れながら父親の家に侵入しようとするシーンで始まり何だと思うが、その謎は最後に明らかになる。

俳優の遠山卓(森山啓)は九州に住んでいる認知症でケア施設に入った父親陽二(藤竜也)の元へ訪れる。もともと大学教授だった陽二は卓の母親と離婚していた。長きにわたり父と息子は疎遠になっていたが、最近再会した。卓は妻夕希(真木よう子)とともに施設職員の説明を聞いたあと、陽二の自宅に向かう。そこで、再婚した直美(原日出子)と一緒に暮らしているはずだったのにいない。直美の携帯電話に連絡すると家の中で着信音が鳴る。

以前卓が訪問したときには、脈絡のない言葉を話す陽二の一方で後妻の直美は卓を歓待してくれた。家中にメモ書きが貼ってある。認知症映画にありがちで、あったことを忘れないためだ。改めて卓が父親に直美さんはどうしたの?と聞くと自殺したと言う。卓は真実は違うと察して家の中の日記を読み始める。


見応えある作品だ。しっかりとした脚本でセリフも練っている。
藤竜也は一世一代の名演技だ。セリフも多く、80歳を超えた俳優が容易にできるレベルではない。直近に主役を張った「高野豆腐店の春」よりかなり難易度が高いすばらしいとしかいいようがない。

理系の元大学教授でアマチュア無線が趣味。皮肉屋で人の話を素直に聞かない。認知症というより統合失調症的な誇大妄想を感じさせるセリフが目立つ。この大学教授は、いつどのようにして、頭の配線が狂ったのかと思わせる。夫婦仲良いように見えるが、妻に対して冷徹な一面もある。原日出子とのやりとりを見ながら、結婚の時点では藤竜也より格上だった愛妻芦川いずみさんのことを想う。


森山未來の役柄は俳優で一部の場面にその片鱗を見せている。でも、大勢の筋に影響はない。映画内の髪を束ねた自由人的な風貌と比較すると、話すセリフは常識人といった感じだ。自分が同じ立場だったら同じように話すだろう。長期間父親と暮らしていないので、父親の嗜好などはまったくわからない。それなのに父親の突飛な発言にも声を荒げることもなく寄り添う。

突然、父親の後妻の連れ子が来て応対したり、父の面倒も見た後妻の妹と連絡を取ろうとする。その部分には軽い謎を残しミステリー的要素も脚本ににじませる。真木よう子は脇にまわって、主役の時ほどの存在感はない。でも、悪くない。


初老の域に入った自分も映画を観て、今後について考えさせられる。ボケずにいられるにはどうしたら良いかと。舞台は北九州だ。ただ、九州らしいシーンは息子の卓が熊本に訪ねて行った時に映る。桜がきれいな季節に撮ったようだ。以前、自分が天草に行った帰りに熊本の三角から熊本駅まで特別列車A列車で行こうに乗った。海側を列車が優雅に走る。海に向こうに島原の山を見渡す景色だ。なつかしい。最後まで飽きずに観れてうれしい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「お母さんが一緒」 江... | トップ | 映画「男嫌い」越路吹雪&淡... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(日本 2022年以降 主演男性)」カテゴリの最新記事