小室直樹博士が亡くなった。というニュースが入った。
すでに4日に亡くなっていたようだ。
ここ最近の訃報では一番不思議な気持ちになった。
なぜなら、彼のことを学生時代より約30年追いかけていたからである。
何気なく書店でピックアップしたのが、「ソビエト帝国の崩壊」であった。
この本を読んで感銘を受けた。当時はまだ東西冷戦が残る時、ソビエトの存在が脅威に感じられていた。東欧諸国へにらみを利かせると同時に、アフガニスタン侵攻で世界を恐れさせた時代のソビエトの崩壊を予告する本の著述にはどきどきさせられた。
その後も「新戦争論」における本質的国連論、「中国」の特殊性と資本主義に向かう中国の矛盾、「超常識の方法」での数学の論理の話や山本七平との共著、田中角栄弁護論など彼の本が出ると真っ先に読んだ。いずれも感銘を受けた。
「危機の構造」における急性アノミーの話は今も影響を受ける。
彼の本を読むと、彼が学んだ大勢の碩学の話が出てくる。
マックスウェーバー研究の大塚久雄、戦後日本の政治学の重鎮丸山真男、経済学のサミュエルソンなど大勢の碩学の存在を知ったのも彼のおかげだ。小室直樹がいなかったら彼らの本を読もうとはしなかったと思う。
小室直樹に教えを受けたことはたくさんある。
その中で一番印象に残る話はヒトラーに関することだ。
ヒトラーが経済政策の天才であることを教えてくれたのは、小室直樹が初めてである。マッカーサー率いる進駐軍が道筋をつくった戦後教育では、ナチスが全否定されていたのは言うまでもない。実際ナチスの迫害についてはどうにもかばうところはない。
でも子供ながらに、あの賢いドイツ人が何でヒトラーを支持していたのかがわからなかった。第一次世界大戦後有名なハイパーインフレに悩まされ、経済的に疲弊していたドイツに対して、ヒトラーはシャハト博士とともに経済の処方箋を与えた。そしてなんと600万人以上いた失業者を一気にゼロにしてしまうのである。日本の社会科の教科書で、アメリカの大恐慌を救ったルーズベルト大統領の話が出るが、実際にはそれほど景気回復が達成されたわけではない。制限速度のない高速道路「アウトバーン」の建設や、国民車「ワーゲン」の振興、1936年のベルリンオリンピックでの巨大競技場の建設など次々に政策を実施して失業者をなくしたからヒトラーが国民に支持されたということを小室博士の本で知った。
小室直樹のことを語ろうとするとつきない。
小室がゼミを主宰すると、昼飯を食べずに一気に勉強したそうだ。理由は単純
その方が頭がきれるということだった。確かに昼飯食うと眠くなるもんね。
そこではハードに勉強していたみたい。
彼の本は初期の一部の本を除いては、やさしく読者にわかるように難しい学問を噛み砕いている。本当に頭のいい人っていうのは、難しいことを難しく語るだけでなく、難しいことを誰でもわかるように説明できるものだと思った。
おそらくは印税がかなり入ったはずだが、貧乏暮らしをあえてしていたそうだ。テレビに出ると、あの独特の奇声でしゃべるから誰もが奇人だと思う。彼こそ本当の意味での勉強好きだと思う。テレビもない部屋にいたのに講談調の話題にもたけていた。
ああいう本音でもの語る人がいなくなるのは本当にさみしいと思う。
品川の家の書斎に彼の本が大量に置いてあり、今の家には「昭和天皇の悲劇」しかない。
そこでは「天皇戦犯論」に立ち向かう著述がされており、戦争に負けた後も君臨した天皇を奇跡としている。家からピックアップしてもう一度読み返していただけに今回は驚いた。
ご冥福を祈りたい
すでに4日に亡くなっていたようだ。
ここ最近の訃報では一番不思議な気持ちになった。
なぜなら、彼のことを学生時代より約30年追いかけていたからである。
何気なく書店でピックアップしたのが、「ソビエト帝国の崩壊」であった。
この本を読んで感銘を受けた。当時はまだ東西冷戦が残る時、ソビエトの存在が脅威に感じられていた。東欧諸国へにらみを利かせると同時に、アフガニスタン侵攻で世界を恐れさせた時代のソビエトの崩壊を予告する本の著述にはどきどきさせられた。
その後も「新戦争論」における本質的国連論、「中国」の特殊性と資本主義に向かう中国の矛盾、「超常識の方法」での数学の論理の話や山本七平との共著、田中角栄弁護論など彼の本が出ると真っ先に読んだ。いずれも感銘を受けた。
「危機の構造」における急性アノミーの話は今も影響を受ける。
彼の本を読むと、彼が学んだ大勢の碩学の話が出てくる。
マックスウェーバー研究の大塚久雄、戦後日本の政治学の重鎮丸山真男、経済学のサミュエルソンなど大勢の碩学の存在を知ったのも彼のおかげだ。小室直樹がいなかったら彼らの本を読もうとはしなかったと思う。
小室直樹に教えを受けたことはたくさんある。
その中で一番印象に残る話はヒトラーに関することだ。
ヒトラーが経済政策の天才であることを教えてくれたのは、小室直樹が初めてである。マッカーサー率いる進駐軍が道筋をつくった戦後教育では、ナチスが全否定されていたのは言うまでもない。実際ナチスの迫害についてはどうにもかばうところはない。
でも子供ながらに、あの賢いドイツ人が何でヒトラーを支持していたのかがわからなかった。第一次世界大戦後有名なハイパーインフレに悩まされ、経済的に疲弊していたドイツに対して、ヒトラーはシャハト博士とともに経済の処方箋を与えた。そしてなんと600万人以上いた失業者を一気にゼロにしてしまうのである。日本の社会科の教科書で、アメリカの大恐慌を救ったルーズベルト大統領の話が出るが、実際にはそれほど景気回復が達成されたわけではない。制限速度のない高速道路「アウトバーン」の建設や、国民車「ワーゲン」の振興、1936年のベルリンオリンピックでの巨大競技場の建設など次々に政策を実施して失業者をなくしたからヒトラーが国民に支持されたということを小室博士の本で知った。
小室直樹のことを語ろうとするとつきない。
小室がゼミを主宰すると、昼飯を食べずに一気に勉強したそうだ。理由は単純
その方が頭がきれるということだった。確かに昼飯食うと眠くなるもんね。
そこではハードに勉強していたみたい。
彼の本は初期の一部の本を除いては、やさしく読者にわかるように難しい学問を噛み砕いている。本当に頭のいい人っていうのは、難しいことを難しく語るだけでなく、難しいことを誰でもわかるように説明できるものだと思った。
おそらくは印税がかなり入ったはずだが、貧乏暮らしをあえてしていたそうだ。テレビに出ると、あの独特の奇声でしゃべるから誰もが奇人だと思う。彼こそ本当の意味での勉強好きだと思う。テレビもない部屋にいたのに講談調の話題にもたけていた。
ああいう本音でもの語る人がいなくなるのは本当にさみしいと思う。
品川の家の書斎に彼の本が大量に置いてあり、今の家には「昭和天皇の悲劇」しかない。
そこでは「天皇戦犯論」に立ち向かう著述がされており、戦争に負けた後も君臨した天皇を奇跡としている。家からピックアップしてもう一度読み返していただけに今回は驚いた。
ご冥福を祈りたい