読むのに時間がかかった。最近は映画のことばかりブログに書いているけれど、本はかなり読んでいる。一日に4冊読んでしまうこともある。ビジネス系であればそれで良い。付箋をつけながら、一つでも役に立つことないかと読むわけであるから。。
でもこれは一日では読みきれない。いつものように好きな表現に付箋をつけながら、読むわけだが、これまでの村上春樹の作品の何かに照らし合わせる瞑想の時間が必要になる。時間がかかった。ようやく読み終わった。
世間一般にストーリーの内容が伏せられているので、多くは語れない。主人公は予備校の数学教師である。文学への関心も強く、小説を書いている。彼には10歳のときに強く心を惹かれた女性がいる。その女性も重要な登場人物である。彼女に関しても平行して語られていく。といったくらいにしておこう。
純愛の要素は彼の小説に共通して存在する。誰にもその人にとって強烈な吸引力を持った女性がいるものである。その人に対して、ずっと思い続けているわけではないが、なぜか忘れられない存在っているものだと思う。村上春樹の小説にはそういう存在が出てくることが多い。 ここ20年くらいに世間で話題になった重要事件の要素がネタになっている。それをパラレルに人生を過ごす二人に絡ませる。しかし、それ自体はそんなに重要なことではない。今までのように、その人にしか語れない純愛への思いやさまざまな女性との交わりを丹念に描写していく。村上春樹流というべきか、村上春樹節というべきかそういう丹念な描写が出てくるとほっとする?ような気がする。
でも、それだけではない。怖ろしい凄みを感じさせる場面もあった。ヒッチコックの映画のようなドキドキ感と「必殺仕事人」を思わせる鮮やかさにも感嘆
昔からよく行っているなじみの店に久しぶりに行って、なじみのマスターにあって、昔から食べているおいしいものを食べる。そんな気分になった。貴重な時間であった。
二次大戦以前ユダヤ人が最も多かったポーランドを舞台にしたユダヤ人ピアニストの物語。ナチスによるユダヤ迫害の強烈な惨劇が描かれる。その中でピアニストが助けられる話。
古代より行き場を失い世界中をさまようユダヤ人にとって、ポーランドは居心地のよい場所であった。第一次大戦では戦勝国であったポーランドは、逆にユダヤが多いこともあり、ドイツの格好のターゲットとなる。そこにいるピアニストエイドリアンブロディは、1939年のポーランド侵攻以降ひたすら身を隠す生活を続ける。ほとんどのユダヤ人が強制収容所に連れ去られる中、運良く生き残った彼だが、廃墟の片隅でパトロール中のドイツ兵に会ってしまう。。。。
こういう映画が賞をもらいやすいのかもしれない。見ている方はいやな感じである。「シンドラーのリスト」もいやらしかったが、ここでもユダヤ人が虫けらのように殺される。
世界史上屈指のすばらしい経済政策をおこなったヒトラーがああいう狂気の世界になぜ陥るのか?彼の政治能力が高いだけに惜しまれる。
ただ、ピアニストがドイツ軍士官と出会うシーンだけが、安らぎのようなところだ。あのシーンのショパン「バラード」は非常に印象に残る。何度も聴いた曲だが、エイドリアン自ら弾くたどたどしく始まるスタートを経て、(多分プロのピアニストであろう)すばらしい速弾きの場面だけはドッキリする。