昨日劇場で見た。こんなにすごい映画だと思わなかった!
インドスラム街出身の青年がテレビのインド版「クイズミリオネア」に挑戦し、正解を連発する。同時にその偉業に不正を疑われ警察に拷問的取調べを受けるという話。ジャンプカット、クロスカッティングといった映画の手法を駆使して、インドスラム街の実態とそこに育つ若者たちの悲劇的人生を描く腰の据わった傑作である。
映画は主人公が「クイズミリオネア」に登場する場面と警察で取調べを受けている場面が平行して展開する。主人公の少年はムンバイのスラム街で育つ。宗教闘争のからみで母親をなくし、兄と二人取り残されてしまう。そこにその後腐れ縁になる少女が紛れ込んでくる。「夢の島」のようなゴミの街の片隅でいるところを大人に助けられる。連れて行かれてお腹いっぱい食べさせてもらって3人は安堵する。しかし、大人たちは3人に街で物乞いをやらせるように強要する。。。。
兄と弟のつらい人生はずっと続く。二人は精一杯生きていく。学校には行かない。しかし、「人生の大学」を実体験で学んでいく。知恵をつけていく。その中でも、主人公の弟は純粋な気持ちを持って素直に生きていく。
「シティオブゴッド」というブラジル・リオのスラム街で育った子供たちを描いたすごい傑作があった。テンポが速く「マフィアになるしか生きる道がない」子供たちを描いていた。その映画を連想させた。この映画では近年のインドの大きな変貌を描き、黒い世界だけでなく、純愛を織り交ぜるところが違うところ。
みのもんたを連想させるあくの強いクイズ番組の司会者とのやり取りも映画の大きな見どころで、マイナーな世界だけでなく、メジャーな世界も映し出す。
戦後間もない日本を思わせる彼らが育ったスラム街の雑踏を映しながら、インドの変貌をカメラが見事とらえる。スタッフはあのドツボのようなところで良くがんばったと思う。しかも音響、編集、美術どれにしても最高である。オスカーをあれだけとるのに値する素晴らしいスタッフたちだと思う。
最後はインド映画特有のダンスで締めくる。途中目を背けたくなるシーンが多々あった。それでも一緒にいった娘は後味がいい映画だといった。
私にとっては今年に見た109本のベスト1である。