映画とライフデザイン

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硫黄島からの手紙  クリントイーストウッド

2009-05-22 05:51:27 | クリントイーストウッド

イーストウッド硫黄島二部作の日本側視点の作品。家族との別れを惜しみ本当は死にたくなかった人たちのプライベートな気持ちに入り込み、戦争の悲惨さを訴える。戦闘云々よりも戦前日本の撃沈主義への疑問を感じた。
一部渡辺謙の回想場面を除き、すべて日本語である。日本映画といっても良い。しかし、この映画の中に流れる独特の無常さは「ミスティックリバー」や「ミリオンダラーベイビー」をつくったクリントイーストウッドならではである。


結果は誰でも知っていることなので、ストーリーはあえて語らない。ただ単に負けそうだから自決するのが美徳としていた軍の考えではなく、最後まで防御を固め、相手に向かって戦う栗林中将の姿勢はすばらしいと思う。アメリカの駐在経験があるので、前近代的であった軍中枢部とは違う考えも持ち合わせていたようだ。渡辺謙は「ラストサムライ」に劣らない好演である。

捕虜に対する扱いがこの映画で一つの焦点となっている。
東条英樹首相は「相手に捕らえられるくらいなら自決してしまえ!」という話をしていたようだ。当然捕虜に関するジュネーブ条約は、軍上層部の知るところであったであろうが、下士官には伝わっていなかった節がある。
この映画で興味深い場面が3つある。
1.バロン西こと西中佐が、捕らえられた米軍兵を抹殺しないで手当てをする場面
2.相手側に投降した日本兵の同士の会話で、ここでは食事が出るそうだと話し合う場面
3.2の日本兵を監視していた米軍兵が、夜通しの監視が面倒くさくなって日本兵を殺してしまう。その殺された姿を見て、日本軍下士官が「捕まえるとお前らもこうなるぞ」と言う場面

1.西中佐は乗馬の1932年ロスアンゼルスオリンピック金メダリストである。学習院初等科経由(鳩山、麻生の先輩)で東京府立一中経由(今の日比谷高:昭和40年代まで全国一の高校)の秀才であり、男爵である。国際感覚があり、ジュネーブ条約に基づいた扱いをしたのであろう。
2.日本では捕虜を虫けら扱いしたといわれている。米軍の捕虜たちにはろくなものは食べさせなかったのであろう。しかも、戦況悪化とともに何も食べていない日本軍兵にとっては、一瞬オアシスに見えたかもしれない。
3.とはいうものの全ての米兵がまともであるわけがない。面倒くさくなって捕虜を殺してしまうシーンが出る。それみたことかと日本の下士官たちが叫ぶ。玉砕するしかないよと。。。。 非常に微妙である。

デイヴィッドリーン監督「戦場にかける橋」の捕虜収容所の話を思い出した。アレックギネスと早川雪州との微妙な関係のなか、捕虜たちが日本軍に協力して、一緒に橋を作る話である。これは2次大戦開始間もないからこういうこともあったのかもしれない。

いずれにせよ、玉砕していった人たちのことを思うと悲しくなる。
幸せな時期に生まれて本当に良かった。

コメント
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