映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

夜の女たち  田中絹代

2009-05-12 18:48:23 | 映画(日本 昭和34年以前)
戦後街娼がさまよう大阪を舞台にした溝口健二監督の作品。田中絹代が普通の主婦から娼婦に転落する役を演じる。溝口健二は「女を売ること」を映すのにひたすらこだわる。
この映画が映す焼け跡の大阪には、瓦礫の山がいたるところに残っている。梅田駅近くの闇市、西成の暗い世界。女たちがさまよう夜の街。
野良犬や猫が保健所にさらわれるように、取り締まり警官によって街娼たちがトラックに運び込まれるシーンからは、リアル感が伝わる。

カメラは大阪の焼け跡の街並みを映す。田中絹代は、夫を亡くし、中小企業の社長秘書兼恋人となっている。彼女は金に困って質屋に出入りする。質屋からお金になる仕事をやればといわれるが、断っている。そこに朝鮮からダンサーの妹が帰国する。彼女は田中の家に居候する。
田中が仕える社長は妹に会い、付き合いを迫る。それを知った田中は家を出て行くが。。。。

溝口健二の実姉は、金持ちの妾になってその貧しい家庭を支えていたという話がある。
そういう育ちのこともあってか、街娼、芸者、赤線の女と「女を売る」女性たちの物語が多い。
だからといって、濡れ場らしきものは直接は映さない。エロのにおいがない。
あるのは悲惨な女性の姿だけだ。

この映画ができたとき、どん底から先が誰も見えていない時代である。
昭和から平成になり、今でも「女を売る」人たちはいるが、戦後まもなくのような悲惨さはない。
この映画には先がないつらさがある。
今その気になれば、身体を売らなくても仕事はいくらでもある。
しかし、この時代の女たちには、男に頼るしか生きる道はなかったのである。

山のようにいたといわれる街娼たちは、その後どうやって人生をしのいでいったのであろうか
コメント
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