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映画「国家が破産する日」 キム・ヘス

2020-04-29 13:00:50 | 映画(韓国映画)

映画「国家が破産する日」は2019年日本公開の韓国映画


1997年の11月は山一証券の自主廃業と北海道拓殖銀行の破綻があり、日本経済が大混乱の様相を呈していた。そのころ隣国韓国でも通貨危機が起きていた。韓国の中央銀行である韓国銀行の通貨政策チームの女性リーダーが国家の経済を動かす中枢のメンバーとどうこの危機に対応するかを議論する。そしてIMFに救済を求めるのを描いた映画である。東南アジアで通貨危機が起きていたのはわれわれも知っていたが、あくまで対岸の火事にしか捉えていなかった。そもそも、自分たちのことで精一杯であった。ここではその韓国通貨危機について描いている。



IMFとの交渉の話と平行して、ある中小企業が大手企業からの手形取引で不渡りを出してしまう話と経済危機に際して金融コンサルタントが顧客にドル高ウォン安による取引を持ちかける話の3つを平行して進めていく。1回みただけではセリフが吟味しずらい映画である。2回目でよくわかってくる。中身は濃い。この時期に失業者が大量に発生したり、多くの中小企業の倒産などの整理があって改めて現代韓国経済が成り立っているのかと感じる。

1997年韓国ではそれまで続いていた好景気に変調がみられてきた。鉄鋼会社などの大企業の倒産などが続き、中小企業の不渡りも目立ってきた。海外の金融筋では韓国から撤退せよという号令もでていた。韓国銀行の通貨政策チーム長ハン(キム・ヘス)は海外からの資金回収に備えての外貨準備高が少ないことに気づく。短期的に通貨危機が起き国家が破綻すると予測してトップに報告する。

韓国銀行のトップは財政経済局、大統領経済主席に連絡して非公式の対策チームを立ち上げる。すでに状況は悪化しており、激論の結果IMFへの救済を求めるしかない状態であった。来訪したIMFの専務理事(ヴァンサン・カッセル)は韓国に対して資金を提供する代わりに外資が強く関与せよと要求してきた。


同じ頃、外国資本が撤退する危機の兆候をつかんだ総合金融会社に勤めるユン(ユ・アイン)は、会社をやめ金融コンサルタントとしてこれまでの顧客を集め、投資話を勧誘する。現在1$800ウォン寸前でとどまっている相場は1$2000ウォンを目指してウォンが急落するというのだ。ユンの話を理解する顧客も2人出てきてドル買いウォン売りで勝負をかけていく。実際にドルウォンのレートは1$790ウォンから909ウォン、1103ウォンと急騰するのだ。


国家経済危機とは関係ない町工場の経営者ガプス(ホ・ジュノ)のもとに大手百貨店からの大量発注がはいる。現金取引しかしない町工場であったが、手形決済という条件であった。不景気時の大きな取引に町工場の面々は喜ぶ。その後、経済情勢は悪化する。取引した大手百貨店が破綻してしまうのだ。手形はただの紙っぺらだ。発注した下請けも心配して押し寄せる中、資金繰りをたてるのが困難になってしまう。

こういう3つの話を平行させる。
韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョンが実質的主役である。保守的な韓国社会では女性への偏見が強い。中小企業や庶民の立場にたって財務局の責任者と対峙して政策を模索する。しかも、国民にこの窮状を知らせるべきだと主張する。

でも、中央銀行のスタッフにしては一般市民をかばうセリフが多すぎる印象を受ける。これはあくまで映画の登場人物としてのスタンドプレイではなかろうか?どうみてもフィクション像である。IMFとの連携を主張する財政局次官のパク・デヨンの発言の方がまともだと思う。

またIMF専務理事は、韓国政府に過酷な支援条件を提示している。それによって金融機関が破綻するとともに多くの倒産などの痛みを伴う。結局失業者が130万人出たという。ただ、このおかげで今の韓国があるのはまちがいない。そういう感想を持った。

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