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映画「キングメーカー 大統領を作った男」ソル・ギョング&イ・ソンギュン

2022-08-14 09:25:36 | 映画(自分好みベスト100)
映画「キングメーカー 大統領を作った男」を映画館で観てきました。


映画「キングメーカー」は韓国の名優ソル・ギョングパラサイトの主人公イ・ソンギュンが共演した新作である。韓国映画も当たり外れがある。おもしろそうと思って先日観た「なまず」は訳がわからない映画で大外れ、感想を書く気になれない。まあこんなこともあるだろう。押井守先輩じゃないが、「愚作駄作も回避せず観よ」という訳だ。

現代韓国史の暗部に踏み込んだ実話ものはどれもこれもおもしろい。この映画は金大中大統領が若き日に組んだ選挙参謀について描いている。直近ではいちばん興味深い映画で早速映画館に向かう。予想を裏切らず、久々の大当たりだ。

1961年国会議員選挙に落ち続ける政治家キムウンボム(ソル・ギョング)の演説を聞いて感銘を受けた薬剤師ソチャンデ(イ・ソンギュン)は選挙のお手伝いをしたいと志願する。選挙に勝つことに主眼をおいたソの発想で、対抗候補のスキをつき勝つとともに、1963年地元木浦選出の国会議員選挙に挑戦する。与党は負けてられないとばかりに多額の資金を投入するが、選挙参謀ソの巧妙な作戦でキムが優位となる。そういった選挙のエピソードと常にキムの影の存在であるソの心の彷徨いを描いていく。


実におもしろい!
実話に基づいたフィクションだというが、ブラックコメディ的な面白さが所々にみえる娯楽映画の最高峰である。2時間まったく飽きる場面はなく、スリリングに突っ走る。笑える場面も多い。時間も長すぎずに構成力よくまとめると同時に主演2人がともかくすばらしい。文句なしの5点満点だ。

⒈選挙参謀ソチャンデ
元々は小さな薬局を経営している。街頭で演説するキムウンボムは、選挙には弱い。理想国家を訴えても、選挙に勝てなくては仕方ない。ソがお手伝いしたいと言っても最初は断られるが、「負けたら善戦でもダメだ。」と訴えるソの心意気に押される。

やり方はキレイではない。ひと時代前の日本には似たような選挙戦の裏工作はあったかもしれない。1960年代までの韓国は朝鮮戦争が尾を引いて貧しかったと言われる。今と違い後進国だった。相手側は買収は日常茶飯事で、投票日に停電させて票を操作するなんてこともやる。そんな相手に対抗するのだ。


ソの思いつきは前近代的悪事だ。悪知恵がはたらく。要は対抗馬が自滅するように有権者に悪い印象を与えるインチキくさい手を使うのだ。1票増やすよりも相手の10票減らすことをめざす。自分の選挙運動員にライバル党の制服を着せるなんてありえない。その運動員にライバル党の悪態を有権者の前で演じさせるのだ。いずれにせよ、一時代前の日本もそうだったが、 田舎の従順な農村地域では有力者が推す候補者にみんな投票する。そこに狙い撃ちをかける。


イ・ソンギュンは韓国映画好きには最後まで行くの存在感が強いし、主役だったTVシリーズマイディアミスターやアカデミー賞作品パラサイトで日本でもお馴染みになる。国会議員に立候補したキムウンボムの対抗候補が「マイディアミスター」で対抗勢力の常務役だった俳優だと気づき、思わず吹き出す。でも、エンディングロールがハングルだと誰が誰だかわからないんだよなあ。


⒉政治家キムウンボム(金大中)
九段下のホテルグランドパレスからKCIAを使って、韓国の大統領候補金大中を拉致した事件は日本中で大騒ぎになった。新聞、TVいずれも金大中一辺倒だ。中学生だったけど、仲間との会話でもKCIAが日本人にとって恐ろしい存在となった。昨日のことのようによく覚えている。当然その時初めて金大中の名前を知ったわけで、そもそも日本では今のように韓国の大統領選挙は話題にもなっていなかった。映画KT金大中事件を取り上げた傑作だ。

この映画では金大中事件は取り上げられていない。むしろ、選挙に勝てない金大中がモデルのキムウンボム(金雲範)が汚い手を使うソチャンデを巧みに使って国会議員から大統領候補に這い上がる姿を描く。結局、ソチャンデがいなくては国会議員にもなれなかったという事実がわかる近代韓国史の側面を学習するいいチャンスだった。


韓国映画を代表する名優ソル・ギョングが実にうまい。天下国家を語る演説姿がすばらしい。Netflix映画夜叉の不死身の男もよく演じていた。すごい功績をあげた選挙参謀は悪どいやり方をとる汚れ役であくまで裏方だ。でも、そろそろ表舞台にとなった時に2人の葛藤が生まれる。そこが大きな見どころだ。脇役も含めて操縦するビョン・ソンヒョン監督の手腕を感じる。それにしても、実録政治ドラマを巧みにつくる韓国映画の凄みに圧倒される。

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