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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「白鍵と黒鍵の間に」池松壮亮

2023-10-06 17:53:32 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「白鍵と黒鍵の間に」を映画館で観てきました。


映画「白鍵と黒鍵の間」は池松壮亮が一人二役で昭和のジャズピアニストを演じる新作だ。予告編からジャズがテーマとわかって気になっていた作品だ。原作者のジャズピアニストである南博の本は読んだことがある。ここのところ、「ジョージ追悼コンサート」「CCRのライブ」と続いて音楽系の映画を観ている。ジャズクラブでグラスを片手にジャズを聴くのは大学生時代からずっと好きだ。今年はジャズミュージシャンをクローズアップした映画「BLUE GIANT」に感動した。バックの上原ひろみの演奏がスリリングで迫力があり自分の今年の5本の指に入る。同じようにジャズを味わいたく映画館に向かう。

昭和63年(1988年)、銀座のキャバレーで歌手のバックでピアノを弾く博(池松壮亮)が酔客(森田剛)にゴッドファーザーのテーマを弾いてくれとリクエストされる。キャバレーのマネジャーからこの曲は街を仕切る会長(松尾貴史)の好きな曲だと聞き、銀座では特別な曲で演奏できるのはあるピアニストだけだと阻止される。そこでイザコザとなり、博はキャバレーを辞めてしまう。

一方で、銀座のクラブではジャズヴォーカルのリサ(クリスタルケイ)がギターの三木(高橋和也)と千香子(仲里依紗)のピアノをバックに唄っていたが、客が誰も聴いてくれず憤慨していた。クラブに会長が来るということで南(池松壮亮、一人二役)が呼ばれる。南は音楽を学びに米国に留学することになっていた。


残念ながらつまらなかった。
銀座での一晩の出来事を描いた物語だ。ストーリーが不自然であり、何コレ?と思ってしまう。要は、夜の街を仕切る組の会長が好きな曲が「ゴッドファーザー」で、それを誰かが勝手に弾いたということでもめるというだけの話だ。予告編でそれらしきことはわかったけど、実は他に何もなかったということ。これだけの公開館でやる映画にしてはお粗末だ。


ジャズプレイには若干期待していた。南がアメリカの音楽学校に留学したいけど、学校に提出する演奏デモテープが必要なので、クラブでヴォーカルとリズムセクションと一緒に演奏するシーンがある。ある意味、この映画では唯一に近い見どころである。クリスタルケイの躍動感あふれるヴォーカルがいい感じだけど、この曲だけなのがさみしい。池松壮亮はかなりピアノを練習したという。一人二役でキャラを若干変えて演じたこと自体は好感が持てる。


銀座でのロケがむずかしいのはわかるけど、昭和実質最後の年の銀座の街を描くにはちょっと街のイメージがちがう印象を受けた。地方の商店街にある飲み屋街のようなところで、空き地がごまんとあるところって、いかにも当時の銀座を誤解している人が作ったのが見え見えだ。作品情報のstoryに「場末のキャバレー」という言葉があった。とっさに「白いばら」や「ハリウッド」を思い浮かべるけど、銀座のキャバレーをいくらなんでも場末とは言わないでしょう。


映画では街がきっちり描写されていると、登場人物も含めてリアリティがでる。ちょっと違うなあ。あと、プロのジャズ歌手が唄うとなったら、クラブ内で拍手が何も流れないということはないと思うよ。アニメとはいえ、「BLUE GIANT」の出来があまりに良かったのでこれは残念だ。1つ驚いたのは母親役の洞口依子、いつも週刊文春の映画評を読んでいるけど、エンディングロールで洞口の名前見てアレ?いたっけと思ったけど、まさかあの母親とは?「タンポポ」のイメージが強い自分はビックリだ。
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映画「仕掛人 藤枝梅安2」 豊川悦司&片岡愛之助

2023-04-12 18:10:12 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「仕掛人 藤枝梅安2」を映画館で観てきました。


映画「藤枝梅安2」池波正太郎原作の映画化藤枝梅安シリーズ第2作目だ。前作に引き続き豊川悦司主演で片岡愛之助が脇を固める。前作「藤枝梅安」は予想以上によくできている時代劇だったし、まったく飽きずに引き込まれていった。天海祐希が実に良かった。期待して映画館に向かう。

前作の最後にオマケがあり、梅安(豊川悦司)と京に向かう旅の途中で相棒彦次郎(片岡愛之助)が昔妻をてごめにした侍(椎名桔平)を見つけるシーンで終わる。うーん、2作目は復讐がテーマかと。実際に予告と同じ流れで始まる。しかも、椎名桔平演じる長髪のならず者とその仲間5人が京の遊郭に乱入して荒らすシーンが映っていく。実際すごいワルなのか?このならず者が昔の姿で今は普通の侍になったのか?


2人は見つけた侍を追っていく。でも、前半戦で何か復讐の動きがあるのか?しかし、この映画のストーリーはそれほど単純ではなかった。その侍の行き先は藤枝梅安が目指した墓所と同じだ。梅安とご縁があったのだ。2人に共通した恩人がいる。そんな悪いことをするような奴なのか?ある事実がわかると同時に、複雑な展開になっていくのだ。


イヤー!これもおもしろかった。
前作は豊川悦司も良かったけど、天海祐希のワル女将でもっている部分もあった。2作目は経済学の限界効用逓減の法則のようにすこし落ちるかと思ったら、そうではなかった。ストーリー展開がどうなるかわからず、どうなっていくんだろう?と興味しんしんに見入った。この映画の作品紹介は最小限に留めておいた方が良さそうだ。

相棒彦次郎の復讐がポイントになるかと思ったが、もう一つ別の復讐を用意していた。しかも、殺しの仲介者として、前回は柳葉敏郎を用意したが、今回は石橋蓮司を登場させる。これがまたうまい!その情婦は高橋ひとみだ。天海祐希のような貫禄を感じさせる。(ちなみに高橋ひとみは自分の実妹と塾の同級生、小学生から背が高かった)


佐藤浩市演じる浪人にお供する一ノ瀬颯演じる美少年剣士も味がある。この映画はキャスティングに成功している。それぞれに活躍の場を与える脚本も見事だ。監督の河毛俊作が巧みにまとめる。じっくりとストーリーの流れに身を任せて堪能してほしい作品である。


映画が終わっても帰らないでほしい。エンディングロールが終了して、席を立ったら、またオマケがあった。クレジットに名前があり、アレ?と思った人物が出てきた。名乗るとまた、大物である。楽しみだ。
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映画「零落」 斎藤工&趣里&竹中直人

2023-03-26 07:09:41 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「零落」を映画館で観てきました。


映画「零落」浅野いにおの原作漫画を竹中直人がメガホンを持ち斎藤工主演で映画化した作品である。原作は未読。斎藤工がスランプに陥った漫画家を演じる。MEGUMIや玉城ティナに加えて趣里の女優陣が脇を固める。漫画というより漫画家を題材にした映画って割とおもしろい作品が多い。「パクマン」や昨年の「ハケンアニメ」も良かった。期待して映画館に向かう。

8年にもわたる連載漫画が終了した深澤薫(斎藤工)には、売れっ子漫画家の編集者の妻(MEGUMI)がいる。偏屈な性格の深澤は新作の構想も浮かばず、次第に編集者からも見放されてくる。スタッフを食わすこともできず、妻との関係も徐々に険悪な方向になる。そんな時、気晴らしで呼んだ風俗嬢ちふゆ(趣里)の不思議な魅力に引き寄せられていく話である。



おもしろく観れた。
運気に見放された偏屈な漫画家斎藤工がうまく演じる。連載漫画が終了した後で、スランプに陥る。漫画雑誌の編集者の妻は人気女流漫画家の面倒を見るのに忙しく、いつもすれ違い。ストレスが溜まる。もともと、性格はひねくれている。おもしろいとか売れているという話に反発する。誰にも相手にされていないという感覚で、風俗に癒しを求める。気持ちはわからないことはない。

そんな時現れた風俗嬢ちふゆが妙に魅力的だ。猫のような目をしたショートカットの出立ちでコケティッシュだ。部屋の中でやさしくしてくれる。ついつい通ってしまう。ハマっていく気持ちに共感する。美人ではない。でも魅力的、いったいこの子は誰なんだろう。


エンディングロールで2番目なので、趣里という女の子だとわかる。知らねえなあと調べると、水谷豊と伊藤蘭の娘とわかりビックリだ。前に写真を見て、何この子?と思った記憶がある。良くは見えなかった。今回は髪型がマッチして実にナイスフィットだ。実家に帰るという設定で、さびれた田舎の風景がでてくる。たぶん房総エリアだなということがわかる。ロケハンに成功している。そこでの話の展開も悪くない。

伊藤蘭といえば、仕事絡みで挨拶をしてくれと頼まれ、数年前リアルに会ったことがある。イヤー!きれいだった。昔からファンでしたと言おうと思ったけど、びびって声が出なかったことがある。この映画の趣里には同じようなオーラがあった。


妻役のMEGUMIやアシスタントの女の子の使い方もうまかった。
MEGUMIのダイナミックなブラジャー姿にドキッとしたが、それまでだ。もうすこし女性陣の露出を高めてくれたらもっと良かったのにね。
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映画「Winny」東出昌大

2023-03-16 05:57:45 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「Winny」を映画館で観てきました。


映画「winny」は2000年代に入ってネット上で人気となったソフトWinnyをめぐる物語。実話に基づく話をぜんぶぼくのせいで監督デビューの松本優作が脚本監督した法廷ものの要素を持つ作品だ。天才プログラマー金子勇東出昌大が演じる。恥ずかしながら、題材になった裁判がここまで話題になっているとは全く知らなかった。

ファイル共有ソフトwinnyを利用して、著作権違反に当たる違法ダウンロードをする事件が多発した。開発した金子勇(東出昌大)には全く関係のない事件であったにもかかわらず、警察当局は当初参考人として金子を取り調べる。そして,著作権法違反幇助の容疑で金子が逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)が開発者が逮捕されるのはおかしいと弁護に乗り出す。

これはおもしろかった。
法廷もの映画だと切れ味のいい逆転劇と弁論がもてはやされるけど、これは実話だ。都合の良いようには展開しない。不器用さを感じるけど悪くない。Winnyが悪用されたのを、開発したプログラマー金子勇のせいにしようと警察と検察が落とし込める構図が基調である。もっとも、その上部には国家権力による指示があるのかもしれない。ある意味悲劇である。ひと時代前は世界一を誇ると言われた日本の理系の優れた人材が、最近は欠乏しているという直近の話題にもつながる。


⒈東出昌大
東出昌大演じる天才プログラマー金子勇が開発したWinnyを2ちゃんねるに公開して、数多くの人たちが利用した。ただ、悪用して映画やTVを違法ダウンロードした事件が頻繁に起きた訳だ。まったく金子勇に悪意はない。プログラムのコードにしか興味のない男なのに、著作権違反が蔓延するように金子自らが仕向けていると警察に睨まれて、冤罪を受けるが如くやられてしまう。最近も袴田事件の再審が話題になるが、よく世間で語られる冤罪事件の構図と変わりはない

でも、劇中の金子勇のパフォーマンスはいかにも一般常識がなく世間の事情に疎い。リーダーの刑事が書いた文面をそのまま書かされてサインしたりする。弁護士が登場した後でも、検事調書にサインをする。しかも、サインさせられたことを弁護士には話さない。目をそらしながら話す話し方は自閉症の患者のようだ。天才にありがちな匂いがする。一回プログラムのことを話し出したら止まらなかったり、妙に明るくなったりするそのパフォーマンス東出昌大がうまく演じる。いまだ不倫事件の余韻が世間で残っているけど、東出昌大の出演作はいずれも良い出来だ。


⒉捜査費の裏金化
Winny の開発者の裁判に関する話題に並行して、警察が絡んだもう一つの物語を語っていく。吉岡秀隆演じる愛媛県警のベテラン警察官が、犯人捜査費の名目でカラの領収書を大量に発行する警察署内の悪い慣習に反抗して、マスコミに公表する事件も語られる。当然のことながら、警察当局は否定するわけだが、カラ領収書がWinny によって漏れていく。同時にベテラン警官が尾行されたり、家に石を投げつけられたりしつこく嫌がらせを受ける。


どちらかと言うと、警察には都合の悪い話が続いていく。公安当局から見ると、この映画はあまり好まれないかもしれない。日本では比較的少ないが、アメリカ映画ではロス市警やニューヨーク市警の悪態をついた映画がたくさんつくられている。

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映画「銀平町シネマブルース」 小出恵介&城定秀夫

2023-02-17 20:03:27 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「銀平町シネマブルース」を映画館で観てきました。


映画「銀平町シネマブルース」は次から次へと驚異のスピードで質の高い新作を送り込む城定秀夫監督の新作だ。城定作品の常連とも言える俳優たちとともに小出恵介が主演で登場する。名画座のスカラ座に集まる映画好きの男女をめぐる人間模様の物語である。どちらかというと、ルンペンと生活保護の境目を生きる生活力のない面々の貧困ストーリーとも言える。

以前、転勤で埼玉の小江戸川越に2年半住んだことがあった。今や観光地化された蔵の町川越の一角に川越スカラ座があり、自分はそこから徒歩5分程度のところに住んでいた。今回、好きな城定秀夫作品というだけでなくスカラ座で撮影されたということも気になっていた。

銀平町に来た金のない男近藤(小出恵介)が公園である女性(浅田美代子)に声をかけられていくと、生活保護でしのいで行こうとする連中の集まりだった。そこには、似たような金欠男たちがたむろっていて、近藤のカバンを盗んだ男佐藤(宇野祥平)もいた。

そこでスカラ座という名画座の経営者梶原(吹越満)と知り合う。映画館の開館から60年も経つのに客が不入で給料をまともに払えないし、借金は積み上がる。それでも近藤はスカラ座でバイトして梶原のアパートに一泊1000円で同居する。傷を舐めやっているときに、スカラ座にたむろうメンバーで60周年記念デーをやろうと思いつく。


城定秀夫作品にしては普通の映画だった。
日本映画には貧困、生活保護のテーマが多すぎて嫌気もさす。日本の映画人ってみんな貧困のドツボにハマっているのかな?と思ってしまうような「いまおかしんじ」の脚本である。

演じるのは日本のインディーズ映画の常連たちである。その中で浅田美代子が生活保護者を騙して金を巻き上げる貧困ビジネスの親玉を演じているのが印象的だ。こんな悪党もできるのかと思わず吹き出してしまう。


映画の中の映画の手法を使う。
小出恵介演じる近藤が元映画監督で、離婚した上に1人で放浪してようやく青春時代に過ごした銀平町に戻る。ホラー映画界ではカルト的存在という設定だ。スカラ座60周年で上映するお蔵入りのゾンビ映画では元夫人が出演していて、この映画をきっかけに再会する。いつも不思議に思うんだけど、こういう自主制作の映画って何でいつもゾンビ映画なんだろう。

あともう一本の記念上映の作品は、城定秀夫監督「アルプススタンドのはしの方」でいい味を出していた小野莉奈が監督したという設定の作品だ。その2本を公開すると、観客も大勢きてめでたしという展開だ。2本ともいかにも商業ベースというよりも自主映画のレベルである。城定秀夫の近作に比べると、脚本の底が浅くて残念だった。

ロケ地の川越スカラ座は全面的に協力したようだ。いかにも昭和30年代にできた映画館である。川越市役所の近くにあり、周囲には老舗の料理屋がなぜか多い。スカラ座に隣接した洋食屋太陽軒も歴史を感じさせる趣きある建物である。以前は客は少ないさびれた店だった。川越にくる人が増えてからはかなり垢抜けた。


他にも川越のロケがあるかと期待したが、田舎の川風景や海が出てきてこれは明らかに違う。どこかな?とエンディングロールを探すと、木更津の文字はあったけど、どうなんだろう。

映画の持つ雰囲気はのどかだけど、他の作品をさておいてみる価値はなかった
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映画「仕掛人 藤枝梅安」 豊川悦司&天海祐希

2023-02-04 19:53:48 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「仕掛人 藤枝梅安」を映画館で観てきました。


映画「仕掛人 藤枝梅安」は池波正太郎の原作の映画化で、豊川悦司藤枝梅安を演じ、天海祐希と片岡愛之助、菅野美穂という主演級の共演と豪華キャストである。予告編に夜のムードの表現がうまい大映時代劇のテイストを感じる。

藤枝梅安は今も五反田に現存する雉子神社のそばに住むという記述がある。自分の初参り、七五三はいずれも雉子神社である。今は、ビルの中に囲まれている神社だ。しかも、池波正太郎はわたしの品川の家から徒歩10分程度のところに住んでいた。藤枝梅安に何かのご縁を感じて、事前情報なく映画館に向かう。

品川で鍼医者を営む藤枝梅安(豊川悦司)には隠密に殺しを請け負う裏稼業があった。その元を依頼人の仲介者(柳葉敏郎)が訪れて、料理屋万七の女将を殺してくれという依頼が来た。梅安には以前、前の女将を始末したことがあった。偵察のため万七に行くと、女中のおもん(菅野美穂)が相手をしてくれ、聞き出すためにおもんと深い仲になる。その場に女将(天海祐希)が挨拶に来ると、梅安は既視感に襲われる。


これが実に良かった。
何はともかく、天海祐希の存在感に圧倒された。現代劇にいくつか出演しているが、これほどの当たり役はないだろう。年相応に貫禄十分で、色気もある。セリフの間の取り方も絶妙だ。登場人物が並ぶポスターを見て、てっきり天海祐希が仕掛け人の一人だと思っていた。実は、最重要登場人物であるが、ネタバレになるのでここでは言わない。もちろん豊川悦司の冷徹な仕掛け人もさすがのうまさである。殺し方は痛快だ。長身の天海祐希なので、主役は豊川悦司しかないでしょう。

一流どころの俳優が適役に恵まれただけで、映画の質がグッとあがる良い例であろう。もちろん、梅安の相棒片岡愛之助も彼のキャラクターを生かせる役だし、梅安の自宅の女中である高畑淳子が味のあるコミカルな演技をする。最初に映る依頼人役の中村ゆりが、ここ最近の作品同様に実にいい女だった。

登場人物は割と多い方だが、状況がわかりやすく混乱しない。2時間以上まったく退屈しなかった。法律用語で言う双方代理になりかねない展開に進みそうになったり、情に揺らいでくる部分もある。仕掛人がきっちり職務を果たすと思っても、いったいどうなるんだろうと思う展開に進む。バックの音楽スリリングな雰囲気を盛り上げる。予想外の掘り出し物であった。


この映画もある意味悪女映画の一種である。歴史的に悪女映画というと、女性の狂乱を招くマイケルダグラス「危険な情事」クリントイーストウッド「恐怖のメロディ」の類はある。それよりも、美人が登場する保険金殺しにからんだビリーワイルダー監督「深夜の告白」の匂いがある。

天海祐希は料理屋の女将だけど、けっしてイヤな女ではない。裏があっても、銀座の高級クラブでよく見る涼しい顔をして店を捌くやり手美人ママに近いのではないか。客にいい女中紹介しますよと天海祐希の女将が言って、「女将がいいよ」と客に言われた時にかわす言葉がまさにやり手ママのセリフそのものだ。時代を現代に移して松本清張のミステリーに登場するようなクラブのママ役もやらせてみたい。

エンディングロール終了後、オマケがあるのでご注意を。
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映画「とべない風船」 東出昌大&三浦透子

2023-01-11 17:07:15 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「とべない風船」を映画館で観てきました。


映画「とべない風船」瀬戸内海の孤島を舞台にした人間ドラマだ。不倫事件で干されてから、ひっそりと映画キャリアを積み上げている東出昌大「ドライブマイカー」のドライバー役でハマり役をつかんだ感じの三浦透子の共演、ベテランの小林薫と浅田美代子が脇を固める。

瀬戸内海の孤島にいる元教員の父(小林薫)を東京で派遣事務をしている娘の凛子(三浦透子)が訪れる。妻を亡くし一人住まいの父は島の港で働く若者から慕われている。居酒屋の女将(浅田美代子)のたまり場の店で、漁師仲間がワイワイ飲んでいる中で一人だけ影のある男憲二(東出昌大)がいる。憲二には妻子を豪雨による土砂崩れで亡くしたつらい過去があり心を閉ざしていた。そんな憲二に凛子は関心をもつ。

のどかな瀬戸内海の周囲に小島が浮かぶ孤島の風景が美しい。大画面いっぱいに海が広がる映像を観ると、心が豊かになる。宮川博至監督の出身地広島の離島でのオールロケで、時間がゆったりと流れる人々を映す。


東出昌大、三浦透子いずれも好演、小林薫が円熟味あふれる演技で渋い。浅田美代子も永瀬直美監督「朝がくる」に引き続きいい味を出している。しかし、この狭い島での逸話だけではネタづくりに限界がある。大きくは動かない。島以外のエピソードを交えた変化がないので、傑作という領域までには届かない。でも、心地よい時間を過ごせた。

「とべない風船」という題名は、東出演じる憲二の家にある黄色い風船だ。その黄色は「幸せの黄色いハンカチ」からとっているそうだ。

⒈東出昌大
世間の週刊誌ネタでは相変わらず悪者扱いだが、東出昌大映画界で引き続き活躍している。この映画は、2018年に中国地方を襲った豪雨の影響もテーマの一つにしている。東出演じる憲二の妻と子が、豪雨の中父親の様子を見に行ったときに土砂崩れで亡くなった。その余韻で失意のあまり閉じこもっている。

過去を振り返って東出昌大が号泣する場面もある。実際に不倫で杏と子どもと別れざるをえなかった実生活にもつながる。配役のオーダーがあったときどんな気持ちだったであろうか?一見クールに見える東出もこの映画に感情移入している気がした。

⒉三浦透子
つい先日「そばかす」を観たばかりである。結婚や恋愛に関心のない30歳の女性を演じる。喫煙者ドライバーの「ドライブマイカー」と同じようなキャラクターの女性に見えた。今回は瀬戸内海の孤島でのロケで、広島の海辺を悠々とドライブしていた「ドライブマイカー」に近い場所だ。父親同様に教員になったけど、うつで教員を辞めて派遣の事務をやっている。もう一度教員の道に進もうかと考えているのも父親に会おうとするきっかけだ。

現代の若者にはたまにいるタイプである。その独自のキャラクターで今後も起用されるだろう。それにしても、男性共演者がいるんだけれど、恋愛とは無縁の映画が続く。そろそろ大恋愛物語があってもいいかもしれない。


⒊小林薫
妻に先立たれた元教員だ。ここで死にたいと妻が選んだ島で、もともと住んでいたわけではない。ここでの小林薫の演技はいぶし銀という感じでよく見える。前作の阪本順治監督の「冬薔薇」は犯人捜査が絡むストーリーなのに現代のIT捜査の要素がうまく織り込まれていなかった。難ありの映画ではあったが、小林薫は良かった。時々、痛みで胸を押さえる。心臓疾患にかかっているようだが、病院に行かない。その健康状態の悪化も映画の題材になる。

うつで教員を辞めた娘に、「自分が長く教員を勤められたのも、適当にサボっていたからだ」と言う。たしかにそうだよね。その気持ちはよくわかる。いい感じだ。


⒋浅田美代子
浅田美代子の顔をみていると童心に戻れる。デビュー時に生まれた人でも今年50歳だ。「時間ですよ」での大フィーバーを知っている人は少ないだろう。当時中学生の自分の仲間たちはアコースティックギターを弾きながら「赤い風船」を歌った。目をそわそわしながら歌う仕草がモノマネ芸でずいぶんとマネされた。最初は西城秀樹と噂されたけど、結局吉田拓郎と結婚、その後離婚で芸能界復帰。元祖天然ボケキャラさんまとのコンビでずいぶんと活かされる。


「朝が来る」も広島の海辺の施設が舞台だった。望まぬ妊娠をして産んだ子どもを斡旋する施設で働く役柄をみて、自分より年上ながら、浅田美代子も大人になったなあと思ったものだ。ここでの居酒屋の女将役もうまい。かわいい東京女学館の制服が似合う東京育ちの浅田美代子が、地方を舞台とした映画で味のある役柄で活躍している。気がつくといい役者になっていて個人的にはうれしい。
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映画「THE FIRST SLAM DUNK」

2023-01-08 17:33:32 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「THE FIRST SLAM DUNK」を映画館で観てきました。

映画「THE FIRST SLAM DUNK」は人気漫画の映画化で、原作者井上雄彦自ら脚本監督を受けもつ。現在興行ランキングトップを独走中である。もともとアニメは年に数作観るかどうかで、最近の人気作も観ていない。それでも、アニメ技術に見所があり、試合から感じるエナジーがすごいと聞き観ることにした。高校バスケットボールの名門校と戦う試合を中心に、登場人物の背景を探る展開である。


自分はアニメやCGの技術には疎いので偉そうなことは言えない。確かに、バスケットボールの試合で、3ポイントシュートなどは静的だが、プレイヤーが鋭く切り込むプレーを動的に映像化したのは現代のアニメ映画技術の大きな進歩だと感じる。リアルで写実的なバックで、アニメ顔の登場人物を縦横無尽に動かす。

試合は途中で強豪高校のチームに続けて点数を入れられ劣勢になり、それをどう挽回するのかがポイントだ。自分は中学からハンドボールをやっていた。バスケットボールとの類似点もあるスポーツなのでよくわかる。(あまりうまくはないけど。)点数差が10点以上ついて負け試合と思しき戦いが、ある転換点から大きく挽回して奇跡のように勝ってしまう試合はリアルで経験している。この試合で逆転に向かう流れがまんざらありえないことでもない。

試合における点数の入れ方も3ポイントオンリーでなく、速攻あり、ダンクシュートあり、デフェンスの間を切れ込むシュートありで偏りなく表現して、リバウンド処理や一対一の防御などデフェンスにも焦点を合わす。ゲームのストーリーとしても緩急をつけて、反撃も一方的にはならない。どちらが勝ってもおかしくない流れをつくる。選手の顔つきもゴリラのような顔をした奴らが実際にいそうな感じだ。内容的には脚本、映像とも満足だ。

でも、この映画は好きになれなかった。
登場人物の性格がほぼ全員悪い。最後の最後までチームはもとより誰も応援する気にならない。いろんな人種が集まる普通の公立中学やレベルの低い高校にはこの手の登場人物はいるかもしれない。そうでなくても、スポーツ選手にありがちな自分勝手で性格の悪い奴らはいる。まあ、すべてのパフォーマンスが好きになれない奴らのドラマにはおもしろ味を感じない。ヤクザ映画の方がまだまだ感情移入できる。少なくとも中学はともかく高校より後でこんな奴らには会わなかった。

小学生くらいの息子を連れている母子がそばの座席に座っていた。まあ、普通の学校でバスケットボールをやったらこういうクズな奴がいっぱいいるよと見せにいくならいいだろう。
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映画「夜、鳥たちが啼く」山田裕樹&松本まりか&城定秀夫

2022-12-15 04:58:35 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「夜、鳥たちが啼く」を映画館で観てきました。


映画「夜、鳥たちが啼く」は函館出身の作家佐藤泰志の原作を名脚本家高田亮が脚本にして、城定秀夫が監督を受けもつ新作だ。この3人は自分にとってはゴールデンコンビで、そこのみにて光り輝くから佐藤泰志原作の一連の作品が映画化されるたびに観ている。今回は松本まりかが主演ということ以外は事前情報なしで映画館に向かう。

若き日に文学賞を受賞した後、サッパリいい作品が書けない慎一(山田裕樹)の住んでいる処に裕子(松本まりか)が息子アキラを連れてもぐり込んできて、慎一は仕事部屋のプレハブ小屋に移り住む。裕子は離婚する一歩手前だ。以前、慎一は恋人(中村ゆりか)と同棲していたが、精神が安定しない慎一は愛想を尽かされ恋人は飛び出していた。裕子が夜の仕事にでるので、息子のアキラが徐々に黙々と小説を書く慎一になつくようになり話が広がる。

事前情報なしで観たので、慎一(山田裕樹)と裕子(松本まりか)の関係がしばらくはよくわからない。お互いに言葉づかいに気を配っているので、恋人同士でないことがわかる。近所に挨拶しようかという裕子に慎一は2人の関係を説明するのも面倒だと言う。そんな2人の間に1人存在するのがわかるのは映画がはじまって1時間後くらいだ。わからないようにさせるのもテクニックだ。


⒈佐藤泰志
佐藤泰志の私小説なんだろうか?若き日に賞を受賞したにもかかわらず、その後パッとしないという主人公のキャラクターと佐藤泰志の経歴は一致する。いつもの作品と異なり今回は函館が舞台ではない。こんな出会いが佐藤泰志にリアルであったのであろうか?映画のような実際の出会いがあったなら、自殺をしていない気もする。

佐藤泰志作品は下層社会を描き、いつも自堕落な男がでてくる。この小説家もそうだ。ダメ男ぶりを山田裕樹がそれらしく演じるのはいい。同じように鳥が題名に入るきみの鳥はうたえるという佐藤泰志原作の映画があった。そこで、ヒロイン石橋静河が本屋の店長と付き合っているシーンがあった。ここでも、恋人役の中村ゆりかが、スーパーの店長に言い寄られている。もしかして、佐藤泰志が実際に彼女の勤務先の店長に言い寄られたという経験があるとも考えられる。


⒉高田亮と城定秀夫
この映画のネット作品情報はある意味ネタバレしすぎのように書いてあるが、事前情報なしで観る方がいい気がする。高田亮の脚本はうまい。どちらかというと、監督の城定秀夫とコンビも組んだ今泉力哉ダラダラ感とは違う簡潔さだ。セリフは最小限で映像で見せる

高田亮の脚本では、真木よう子主演のさよなら渓谷が何よりすばらしい。佐藤泰志原作の作品ではそこのみにて光り輝くという傑作を生んだ。まともじゃないのは君も同じはコミカルで楽しいが、裏アカはイマイチで、死刑にいたる病阿部サダヲの怪演こそあったが、まあまあのレベルだった。

廣木隆一同様ピンク映画出身の城定秀夫からみシーンが得意だ。今年公開の愛なのにでは瀬戸泰史に珍しく絡みを大胆に演じさせる。よくできている。ただ、「夜、鳥たちが啼く」は子どもの出演場面も多いから、泣く泣くエロシーンを最小限に抑えているのではないか。廣木隆一も多作だが、城定秀夫も次々と新作を出す。いかにも2人とも量で勝負のピンク出身らしい。


⒊松本まりか
オダギリジョー主演のぜんぶぼくのせいでは息子を養護施設に入れ込んで別の男のもとで暮らす女を演じる。シングルマザーになることから逃げた無責任な女だ。今回は、夫の不倫でシングルマザーになり果てた女だ。役柄的にも似ているし、ピッタリの配役だ。年齢的にしばらく同じようなオーダーが松本まりかに来るだろう。


城定秀夫作品だから、当然からみもあると推測されその通りだった。ただ、男性サイドからすると寸止めの感じは否めない。もうちょっとバストトップの露出を高めて欲しかったなあ。

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映画「月の満ち欠け」 大泉洋&有村架純&廣木隆一

2022-12-13 18:22:39 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「月の満ち欠け」を映画館で観てきました。


映画「月の満ち欠け」佐藤正牛の直木賞受賞小説を映画化した作品。原作は未読。ここのところ多作の廣木隆一がメガホンをもつ。予告編を夏ごろから何度も観た。大泉洋の父親が子どもを亡くすストーリーと推測されて、その娘がジャニーズの目黒蓮に会いにいく途中で、事故に遭うというセリフはわかった。でも、映像にでてくる有村架純は何なんだろう?そう思っていた。洋画系で行きたい作品がなく、ピンク映画出身でサービス精神旺盛の廣木隆一監督に娯楽度を期待して選択する。

泣ける映画である。
途中から激しく涙腺を刺激される。廣木隆一観客のツボを熟知している印象を受ける。以前のような長回しはさほどでもなく、適度な時間配分で複雑な登場人物を巧みに捌く。ジョンレノンの「woman」が効果的に使われている。演技で特筆すべきところはない。ただ、有村架純がものすごく魅力的に見える。セットで20年以上前の高田馬場を再現するというニュースを見ていた。うまくできている。


⒈予告編での迷彩と高田馬場
予告編で大泉洋の娘と妻が事故で亡くなるというのはわかった。その娘が大泉洋を訪ねてきた若者のところへ向かおうとして亡くなったのも理解できる。しかし、大泉洋が若者に怒っている。訪ねてきた男の言う女性と自分は何も関係ないと。え!何で?意味不明。有村架純って、いったいどういう存在なの?

映画が始まり、大泉洋八戸の漁港にいるシーンを映す。そこで一転1980年までさかのぼり、結婚、娘の出産などを追っていく。幸せそのものだ。そこで後半に向けての伏線をいくつかつくる。最初は、全般の意味がはっきりしない。
でも、途中から徐々に筋がつながっていく。そういうことなのか?と少しずつ気づかせる。

予告編での騙しがあっても、観客にやさしい映画である。途中この言葉遣いおかしいというセリフもあるが、長編小説を脚本化するために簡潔に映像にまとめる。廣木隆一の娯楽映画作りのうまさも光る。


ネタバレにならない程度に言うと、有村架純の役は大泉洋の娘ではない。このストーリーでは有村架純の恋が並行して描かれている。ただ、時間的にギャップがある。1980年から2007年まで縦横無尽に飛ぶ。恋の舞台は高田馬場だ。早稲田松竹と神田川沿いのロケが頻繁になされる。しかも、大泉洋のところに、実娘の親友(伊藤沙莉)が訪ねてきて会うホテルのラウンジは早稲田裏のリーガロイヤルホテルだ。自分が人間ドックするところなのでよくわかる。まさに高田馬場尽くしである。


⒉生まれ変わり
前世なんてものは信じないけど、身の回りでなんかおかしいと思うこともある。大泉洋演じる主人公も前世に懐疑的だ。実はこの映画には軽いファンタジー的要素がある。前世を知っている少女が次々出てくる。まだ小学生なのに、英語の歌を歌ったり、デュポンのライターのうんちくを話したり、大人びた絵も描く。

その生まれ変わった少女を軸にストーリーをつなげる。これはこれでいいのではないか。自分の父の葬儀前後で、娘が明らかにおかしな行動をとった。今もその名残がある。人智を超えた世界はあるかもしれない。


大泉洋はそれなりかな?大泉洋の当たり役「探偵はbarにいる」で喫茶店にいつもいる安藤玉恵介護士役ででてくる。最後に向けて安藤玉恵のアップの場面があり、思わず吹き出す。主役を演じることもある田中圭がここでは悪者になる。「流浪の月」横浜流星が演じる役柄に似ているなと感じた。
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映画「宮松と山下」 香川照之

2022-11-23 06:53:52 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「宮松と山下」を映画館で観てきました。


映画「宮松と山下」は香川照之主演のシリアスドラマである。佐藤雅之、関友太郎、平瀬謙太郎の3人の監督集団の演出で、香川照之が記憶喪失したエキストラ俳優を演じる。銀座ホステスの問題でメジャー路線から干されてしまった香川照之であるが、ここでは静かに役柄に没頭している。

時代劇の斬られ役のエキストラ俳優の宮松(香川照之)は、ロープウェイの下働きも兼ねながら京都で暮らしている。宮松には過去の記憶はない。そんな宮松のもとに元同僚だというタクシー運転手(尾身トシノリ)が訪れる。映像でみて「山下」という名だった男に気づいたのだ。12才下の妹が心配しているよと横浜に呼び寄せ、兄妹再会するのであるが。。。


ゆったりしたムードで流れる。質の良い短編小説を読んでいる気分になる。
TVでは悪役で売っていた香川照之が、いつものかんしゃくを見せない。3人のインテリ監督による映像である。セリフを極力少なく、演技する俳優の表情で変化を伝える映像だ。監督は映画理論にうるさそうだ。はっきりと言葉にせずに、観客にある事実を推測させる映画である。

観客を騙そうとする意図が感じられる場面がいくつもある。あえて詳しくは語らないが、エキストラで役柄を演じている場面とリアルな場面が交錯するので、アレ?という感じで意表を突く。観客に錯覚を起こさせようとする。この辺りの誘導はうまい。自分もまんまと引っかかる。


エキストラの場面では、香川照之も三枚目に徹する。それがいい。銀座ホステスの問題は、異論もあるだろうが不運と感じる。銀座に行くと、夜の蝶の美女たちは「銀座の女がすることじゃないよ。」と誰もが香川照之を擁護する。ただ、公人的にはアウトだろう。世の中、目立たず生きるのがいちばんかもしれない。
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映画「ある男」安藤サクラ&窪田正孝

2022-11-20 17:51:33 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ある男」を映画館で観ていました。


映画「ある男」は平野啓一郎の原作を映画化した作品で、今年観た数多い予告編の中でももっとも行ってみたいと思わせた作品だった。原作は未読である。「一緒に暮らしていた夫が全くの別人だった。」という安藤サクラと窪田正孝の映像はいったいどんなストーリーになるんだろうと興味を抱かせる。期待して観に行く。当然事前情報が少ない方が楽しめる。

宮崎で文房具店を営む里枝(安藤サクラ)は子連れで故郷に戻ったシングルマザー、その店にスケッチブックを買いにくる谷口大祐(窪田正孝)は林業の仕事をしていた。親しくなり2人は結婚して、娘も授かった。ところが、樹木を伐採している時に不慮の事故に遭い亡くなってしまう。葬儀後、一周忌に伊香保温泉で旅館を営む大祐の実家から兄(眞島秀和)が訪れ写真を見て、写真にうつる男は大祐ではないと言われて里枝はあぜんとする。DNA鑑定も別人を示していた。


里枝は自分の離婚調停で世話になった横浜の弁護士城戸(妻夫木聡)に相談して、真実の調査を依頼する。

期待以上とはならなかったが、予告編にない展開もあり興味深く見れた
映画を観た後に作品情報を改めてみながら、原作はどうなっているのかと確認する。もともとは作家の一人称小説で、バーで出会った弁護士の城戸を主体にしているようだ。もちろん、ここではそうしていない。ラストに弁護士がバーで誰かと会話をするシーンがあり、そこで終了する。

これって、原作を読まないと「何でこのラストシーンがあるの?」と思ってしまう。エンディングロールのクレジットでは格で妻夫木聡が1番目となっていると思ったが、主役もあくまで城戸弁護士ということなのだ。


この映画についてはネタバレに近いことまで言及してみる。映画を観る前は読まないで下さい。

⒈妻夫木聡
この映画の予告編はよくできている。映像に妻夫木聡がでてきて、これが真実の男なの?と一瞬思わせた。改めて見ると,途中で予告編の内容が変わって、仲野大賀の写真も出てくるので違うんだなとわかるが、あまり情報がない方が意外性を楽しめる。

帰化している在日3世の人権派弁護士の設定である。最近妙に韓国寄りの発言が多い真木よう子も妻役で出てくるので、在日やヘイトスピーチの話を意図的に加えたのかな?と映画を観ながら感じていた。終わって、原作を確認すると、その通りになっている。城戸弁護士は,伊香保温泉に行って、兄やむかしの恋人に会ったり、戸籍交換で捕まった男がいるとわかり、刑務所までその男に会いに行ったり丹念な捜査をしている。京大出の平野啓一郎だけに在日コリアンとの縁は深いかもしれない。

ただ、柄本明妻夫木聡演じる弁護士に対してお前の顔を見たらすぐ在日だとわかるぞと言ったセリフがあったが,あまり妻夫木聡の顔は在日には見えない気がする。

在日2世はわれわれの同世代で、高校の同級生にもいた。明大から韓国系金融機関に行き、最終妻の実家のパチンコ屋を営んだが、60過ぎにがんで亡くなった。高校時代、「自分たちは普通の就職はできない。汚れ仕事をやるか、893になるか、勉強して医者になるしかない」と言っていた。兄貴2人いて、上は左右両刀使いの反政府運動をしてパチンコ屋をやり、下の兄は秀才で医者になった。姉は街金融を営む家に嫁いだ。でも、その友人の在日3世となる息子は、普通の日本の名門大手企業に勤めた。死ぬ前に日本も変わったと言っていたものだった。

⒉窪田正孝
この映画でもっとも頑張ったといえよう。ナイーブな性格を演じていて,安藤サクラに近づいていく時の雰囲気が柔らかく良い。映画が始まり, 30分位で窪田正孝が死んでしまって,もう出番はないのかなと思ってた。

ところが,過去を回顧するシーンを演じるにあたって,謎の男窪田正孝が改めて前面に出てくる。これは予告編には全くないシーンだ。新人王を目指すボクサーだったのだ。これがよかった。

映画の大きなテーマに「殺人者の家族の悲劇」と言う一面もある。結局,一緒に暮らした謎の男が、なぜ赤の他人を演じなければならなかったのかと言う理由がある。その理由について語られていく。映画を観る前は予測していなかったいいシーンであったし、窪田正孝は好演している。トレーナー役のでんでん「あしたのジョー」の丹下段平を思わせてよかった。


⒊安藤サクラ
安藤サクラの代表作と言えば,「百円の恋」であろう。安藤サクラが一気に成長した。「ある男」で安藤サクラを見て優しい顔立ちになった気がする。窪田正孝に合わせたナイーブな感じも良い。実生活でも母親になった影響があるせいか、今回の母親役は非常に良かった。

安藤サクラの母親役が山口美也子だと知る。若い頃は日活ポルノでお世話になっている。懐かしい。

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映画「窓辺にて」 稲垣吾郎&今泉力哉

2022-11-16 18:53:47 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「窓辺にて」を映画館で観てきました。


映画「窓辺にて」は稲垣吾郎主演で今泉力哉監督のオリジナル脚本による新作である。元SMAPのメンバーが次々と映画出演しているのと同様に稲垣吾郎も役者らしくなってきた。「半世界」で好演したあと、長回しが多い今泉力哉作品で役者限界能力への挑戦といったところか。妻の不倫に揺れる夫という設定をどう演じるかが見ものだ。健闘していると思う。

フリーライター市川茂巳(稲垣吾郎)は編集者の妻紗衣(中村ゆり)と2人暮らし。17歳の高校生作家久保留亜(玉城ティナ)がある文学賞を受賞する。マスコミ向け受賞発表会で、市川が対象作を深読みしたと思しき質問をすると、留亜から好感をもたれる。そして、請われて直接面談するようになる。小説のモデルになっている人に会わせると言われて、留亜の若い恋人や叔父に会う。市川は留亜の叔父と会話している際に、ふと妻が浮気をしていて、自分も気がついていること。その浮気に関して腹もたたないでいることを独白する。

この間、上映時間は約1時間。その途中には、市川の若き友人有坂(若葉達也)が妻(志田未来)と子がいるのにタレントのなつ(穂坂もえか)と不倫しているシーンや市川の妻紗衣が小説家の荒川と浮気している場面を織り交ぜる。


観ていてしばらく、人間関係がつかめない。市川が独白するまでは、いつもの今泉力哉監督作品のような長回しで、不倫から離れられない2組のカップルとわがまま娘の留亜に翻弄される市川をじっくりとセリフ多めに映す。ダラけてはいないが、完全にはのれない。

それでも、市川が告白してから妙に重いモノがとれた感覚をもつ。「誰にも話せないというのは、周囲を見下しているのではないか」と留亜の叔父に言われるのだ。そこから市川が動く。将棋の戦いで睨み合いから互いにぶつかり合うが如く、人間関係が少しづつ交わっていくと、徐々に頭脳が反応する。

⒈今泉力哉と重層構造の脚本
今回の今泉力哉の脚本はなかなかの重層構造だ。こうやって映画を見終わると、今泉力哉が計算づくでつくっているのがわかる。出版マスコミ系で男女の入り乱れた恋というのは「猫は逃げた」も似たような感じだけど、物語づくりは上手だ。

それでも、途中まで自分には全容がつかめない。勘のいい女性観客陣はもう少し早く理解しているかもしれない。ようやく、稲垣吾郎が独白してからは、謎解きパズルを少しづつ解いていくようになる。ステップを踏んで均衡点に迫っていく。ミステリーものではないのに、どうやって決着つけるのか気になってしまう。稲垣吾郎をはじめとした配役も成功だ。今泉力哉作品の常連若葉竜也も彼らしいキャラクターで安定している。


⒉長回し
今泉力哉監督作品をこれまで観ているので、いつものごとく長回しの映像が続くのは覚悟している。これって演じる方はさぞかしたいへんだろう。稲垣吾郎もよく応えた。前半戦は、クエンティンタランチーノ作品によくある「ダラダラしたダベリ」が多すぎる印象をもった。人気の「街の上で」では無意味なセリフが多すぎで、女性陣の性格が悪すぎで好きになれなかった。逆に「愛はなんだ」江口のりこの使い方がうまい気がした。


「猫は逃げた」は肝心なところでの長回しシーンに絞って109分にまとめてくれて良かった。各シーンの時間を計るのにまさかストップウォッチを使うわけにはいかないけど、これは長すぎる。ある意味、今泉力哉のフォームかもしれないが、これってもう少し何とかなるのでは?

⒊中村ゆりと玉城ティナ
この映画では、今泉力哉監督の女優の使い方が実にうまい中村ゆりと玉城ティナに加えて志田未来の存在で不思議なコントラストをつくる。


中村ゆりと気づかない時に、その美貌に驚く。ずっとこのいい女は誰だろうと思っていた。担当編集者の領分を越えて、作家と不倫している。今泉力哉の盟友城定秀夫作品だとベットシーンがあるけど、ここではない。それが残念。ラストに向けての、稲垣吾郎と2人での長回しシーンは良かった。そう簡単には演技できない長さで、セリフも含めてお見事だ。


玉城ティナ惡の華での高校生役でその存在感に圧倒された。あの演技があったからの起用だと思う。平手友梨奈主演で高校生で文才のある少女が主人公の「響」も意識していると思う。2つを混ぜたキャラクターでかなりませた高校生だ。稲垣吾郎相手に一歩も引かず、大人びた高校生になり切る。ちょっと変態系な女の役への今後の起用もあるだろう。
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映画「アイアムまきもと」 阿部サダヲ

2022-10-02 18:24:09 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「アイアムまきもと」を映画館で観てきました。


映画「アイアムまきもと」孤独死した人の後始末をする市役所の「おみおくり係」の話を阿部サダヲ主演で描く。『舞妓Haaaan!!!』、『謝罪の王様等に続き水田伸生監督とタッグを組む。

予告編で観ているときに、これって英国映画おみおくりの作法と似ているなと気づく。原作者ウベルト・パゾリーニ監督を製作者に入れて公認でリメイクしたもののようだ。この映画はジーンと心に響くすばらしい映画だった。映画スタート前に大きく「SONY 」の文字が出ている。日本映画にしては珍しいSONY配給だ。日本だけでなく諸外国にも売り込むつもりか?韓国に比べて、外国でのセールスには弱い日本映画だけに良いことだと感じる。

市役所の「おみおくり係」の牧本(阿部サダヲ)は孤独死した人の後始末をする仕事をしている。遺留品から遺族や友人だった人を探し、遺族から拒否されても葬儀を行なうことをモットーにしている。ところが、新任の局長から本来市役所が遺体や葬儀まで関わるべきでないと、今携わっている仕事を最後に「おみおくり係」の廃止を伝えられる。

警察の担当者(松下洸平)から連絡があった最後の仕事は、牧本が住むアパートの別棟に住む蕪木(宇崎竜童)という男の孤独死の処理だった。遺留品から蕪木のこれまでの人生をたどり、元いた会社の人(松尾スズキ)、同棲していた女性(宮沢りえ)、一緒に仕事をしていた仲間(國村隼)、そして娘(満島ひかり)にたどり着くが、誰も葬儀には出席しないという。それでも牧本はあきらめない。


やっぱり泣けた。
おみおくりの作法は好きだった映画だけに、数多く観た映画でも基本的なストーリーは鮮明に覚えている。今回日本が舞台になるので日本固有の事情でアレンジしている。それがいい。うまく脚本ができている。登場人物も宮沢りえをはじめ主演級を脇役につける。


融通のきかない主人公のキャラクターは原作と一緒で、まさに堅物の公務員という感じだ。ストーリーもここは違うのかと思っても最後に合わせてくる。牧本の情熱が実ってくる中でラストを迎える。こうなるとわかっているのに、激しく涙腺が刺激されてしまった。

⒈阿部サダヲとおみおくり係
おみおくり係の部屋には引き取り手のない遺骨が部屋中に置かれている。先日観た川っペリムコリッタでも主人公松山ケンイチの父親が孤独死する設定で、市役所に遺骨が数多く保管されている部屋があった。「川っペリ」では主人公が柄本佑演じる市役所職員のところに取りにいくだけマシである。葬儀に顔を出しても遺骨は引き取らない人も多い。


阿部サダヲのおみおくり係が一人で葬儀に出ているシーンを見ながら、費用はどうするんだろうと思っていた。縁の薄い遺族に請求しても拒否される。おみおくり係が自費で葬儀をあげているセリフを聞き驚く。映画のおみおくり係はやりすぎだなと感じる。さすがにここまでやる人はいないでしょう。

オリジナルのおみおくりの作法の主演エディマーサンは地味な脇役が多い。いろんな映画で脇役ででるので、コイツ見たことあるという人も多いだろう。おそらく主演で演じることはもうないんじゃないかな。


逆に阿部サダヲは、死刑囚を演じたと思ったら、今度は律儀な公務員と本当に器用でこれからも主演作は続くだろう。その意味では対照的だが、両方とも適役だ。

⒉のどかな日本海沿岸エリア
庄内市役所という架空の市役所だけど、酒田駅が映像に映るし、山形の酒田市周辺でロケしているのはわかる。ドローンを使って、俯瞰した空からの映像を何度も見せる。のどかないい街に見える。羽越本線を上空から映し出す映像を観て萩原健一、岸惠子共演約束に出てくる日本海沿いを走る列車を連想する。

以前、部下の父親が亡くなって酒田市の葬儀に参列しようとしたら、簡単にはいけないからやめたほうがいいと言われた。確かに、東京から行くと交通の便が極めて悪く次の仕事ができないのがわかって断念した。そういう場所だ。


以前孤独死した男が同棲していた女(宮沢りえ)のところに行き、海辺で女が漁師相手に営む食堂を映すシーンがある。そこで見える岩が美しい。鉾立岩と言って新潟の村上にある。ここで岩を見ながら食べる磯料理はきっとうまいだろうなあ。


⒊公務員の最後の仕事(軽いネタバレあり)
公務員の最後の仕事といえば、黒澤明の不朽の名作「生きる」志村喬が演じた老公務員を連想する。ストーリーはまったく違うが、原作者は「生きる」を意識していたであろう。がんとわかった典型的なお役所仕事しかしない主人公が、残り少ない人生で公園をつくろうと懸命に奮闘する姿を描く。


牧本はおみおくり係最後の仕事として葬儀をあげようと懸命にがんばる。「生きる」では、志村喬演じる亡くなった公務員の通夜の席で役所の同僚が故人をしのんで回想するシーンが中心だ。牧本は重篤な病気にかかっていたわけでない。ただ、悲劇が起きる。その直後に牧本を思う周囲の気持ちの描き方がむずかしい。「ラストのラスト」原作と同じ設定でいいのであるが、いくらなんでも普通は同僚がこう処遇しないだろう。ひと工夫あってもいい気がした。

それはわかっていながらも泣けるのは、やはりこの主人公に自分が感情移入できるものがあるからであろう。
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映画「川っぺりムコリッタ」松山ケンイチ

2022-09-19 20:28:07 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「川っぺりムコリッタ」を映画館で観てきました。


映画「川っペリムコリッタ」は「かもめ食堂」の荻上直子が自らの原作をメガホンを持ち映画化したものである。出演者は松山ケンイチ、吉岡秀隆、ムロツヨシと主演級が揃う。予告編でみた時の田舎のほんわかした空気感に吸い寄せられ映画館に向かう。

富山の塩辛の加工工場に職を得た山田(松山ケンイチ)が紹介されて南(満島ひかり)が大家の集合住宅「ハイツムコリッタ」に住むことになる。人付き合いが苦手な山田は、静かに生活していくつもりだった。ところが、隣部屋の島田(ムロツヨシ)に声をかけられる。ずうずうしい島田と付き合うのを最初は嫌がったが、徐々に親しくなり、息子と一緒に墓石を売っている溝口(吉岡秀隆)などとも一緒にご飯を食べる仲となる。ただ、住人それぞれがつらい過去を持っていた。


田舎が舞台のほんわかしたムードは予想通りで、末梢神経を刺激しない穏やかな展開が続く。ただ、大きな起伏がなさすぎで、想像以上に何もなかった。孤独な男が徐々に周囲に心を許すようになるというテーマはよくわかる。でも、脂っぽさが少し足りない気もする。

⒈松山ケンイチと別れた父の死
塩辛工場に行き、社長(緒方直人)からここで頑張って更生してという言葉で、ムショ帰りなんだなというのがいきなりわかる。両親が4才で別れ、母親に1人で暮らせと高校時代に捨てられるなんて家庭環境は最悪だ。殺人事件の犯人といった凶悪犯でなく、いわゆる金銭的詐欺の片棒を担いだという。オレオレ詐欺の共謀者かもしれない。

生活するのがやっとなので、メシ食うために刑務所に入った方がマシだという。ようやく、職を得て住処も確保したのに、役所の福祉課から、父親が腐乱死体で見つかったと連絡があり戸惑う。ここからは、孤独死した父の身の上を考えたら、今の周囲と強調する暮らしがどんなにか幸せかというのが映画のテーマになる。


⒉満島ひかり
大家で娘と一緒に暮らしている。主人とは死に別れで、まだ夫への想いが断ち切れないという設定である。自慰を連想するきわどいシーンもある。松山ケンイチが働く水産工場をみて、満島ひかりが主役の川の底からこんにちはを思わず連想する。


⒊吉岡秀隆(溝口)
息子を引き連れ、飛び込みで墓石のセールスをする。こんなの簡単にうまく売れるはずがない。収入もなく家賃は半年滞納だ。普通、3ヶ月家賃滞納すると強制退去の訴訟を受けてもいいようなものだが、まあこの大家はのんびりとしたものだ。村上春樹「1Q84」NHK受信料係の主人公の父親が息子を引き連れて集金にあたった話を思い出した。まあ、子供連れても墓石売れないよね。ところが、劇中一回だけうまくいく。お祝いですき焼きだ。


⒋ムロツヨシ(島田)
ミニマニストを自称している。最小限に生きるとして、節約に走るがそもそも金がない。寺の住職が友達で地元育ちのようだ。いきなり初対面で、給湯器が壊れたから風呂に入らせてくれと言ってきたり、自分が家庭菜園でつくった野菜を持ってご飯を食わせてくれとやってくる。ずうずうしい奴だ。そんな奴でも徐々に親しくなる。父親の死体の引き取りをためらっている山田に背中を押していかせたのが島田だ。


他にも、緒方直人や柄本佑などメジャー級が登場する。水産工場の社長役の緒方直人もここのところ役柄に恵まれ観る機会が増えた。TVシリーズ「六本木クラス」でも同じような食品会社の社長をやっている。中小企業の社長役ってちょっとイメージが違うと思ったが、もしかしてハマり役なのかも?

遺骨を取りに行ったときに対応するのが、公務員役の柄本佑だ。保管場所にはたくさんの遺骨が置いてあり、山田が驚く。孤独死で誰も名乗り出ない遺骨ってあるのであろう。ところが、引き取った後の処理に戸惑う。後半戦はその処置で話が続く。遺骨はそのまま捨てると犯罪で粉々にして撒くならいいらしい。初めて知った。
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