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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」 井浦新&杉田雷麟 

2024-03-24 19:38:09 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」映画館で見てきました。


映画「青春ジャック止められるか、俺たちを2」は1983年の若松プロに入ろうと志願した脚本家井上淳一の若き日の成長物語である。自らメガホンを持つ。「福田村事件」でも脚本を書いていた井上は左翼思想を感じさせる男だ。荒井晴彦中心に討論会形式でまとめた本「映画評論家の逆襲」での左巻き発言は、どうも好きになれない。

それなので,今回見ようかどうか迷ったが,若松プロの監督志望の女性を描いた「止められるか、俺たちを」の1作目が良かったので、とりあえず観てみようかという軽い感じで映画館に向かう。最近出番が多い若手の芋生悠の存在も気になる。でも、予想外によかった。

1983年、ピンクの巨匠若松孝二監督(井浦新)が名古屋で自分の作品を上映するシネマスコーレという名の映画館を経営しようとする。ビデオ機器のセールスマンだった木全(東出昌大)が人伝てで紹介されて映画館の支配人に起用される。バイト志望を募ったところ、映画研の女性金本(芋生悠)が入ってきた。名画座として、二本立ての名画を上映しても、客がなかなか入らない。新東宝から名古屋でピンク映画の上映館を探していると言う話を聞きつけ,若松監督は番組編成を変えた。


シネマスコーレに挨拶で来ていた若松監督に向かって河合塾の予備校生の井上(杉田雷麟)が弟子入りを志願する。東京に帰ろうとする若松監督が乗る新幹線に井上が飛び乗り,東京で助監督業をするがうまくいかない。1度は名古屋に帰っていたが、若松監督と和解して監督が頼まれた河合塾のセールスプロモーションの短編映画を大学生になった井上が監督として作品を作ることになる。


久々に笑いころげる映画に出会った。
若松監督のパフォーマンスを巧みに演じた井浦新の演技がむちゃくちゃ面白かった。何度もハラを抱えて笑った

前回も門脇麦演じる女性映画監督の成長物語であった。この映画も同様に予備校生から大学に進学する脚本家井上淳一の成長物語である。左巻きの強い井上の嫌な部分は感じない。在日韓国人の外国人登録のための指紋について言及する場面があるが,さほどいやらしくはない。まだ大学生なのに、助監督を頼まれても、大人の仕事ができるわけがない。ドジを踏んでばかりで、若松監督に怒られる。1度は放り出されるが、また戻され、鍛えられる。でも完全に任せられない。その任せる任せない部分のパフォーマンスが実に面白い。映画館内も笑いの渦となる。


若松孝二も慈善事業で映画館経営をやっている訳ではない。映画館名シネマスコーレは「映画の学校」を意味する。東出昌大演じる映画の支配人が,大林信彦監督作品の3本立てのような普通の映画の名画座としようとするが,それでは儲からない。若松監督はピンク映画を中心の上映に染めようとするのだ。客の入りは、ピンク映画と普通の映画では全く違う。それでも支配人は普通に戻そうとする。この辺の映画館の上映事情が語られている。


固有名詞が実際の名前で呼ばれる映画である。河合塾もその通りの名前で出てくる。結局,監督志望の井上が作った脚本は,偏差値30の女の子が予備校で頑張って、東大に入ろうとする話である。演技指導を井上監督に任せているはずなのに、見ていると、若松監督が口出しをしてくる。仕方ないだろう。ただ,若松監督のパフォーマンスにあまりに理不尽な話が多すぎるので、笑えてしまうのだ。



理屈っぽい井上監督の自戒のような言葉が,井浦新演じる若松監督のセリフによって語られる。人の映画を批判してばかりとか、結局監督でモノにならず、脚本家になろうとしたけど、うまくいかなかったとか、井上監督を評価するそんな話が出てくる。「映画は言葉でなく映像で語れ」とか。「理屈は映像では伝わらない」など若松監督語録の気になる言葉が随分と多い映画だった。

新宿ゴールデン街でばったりあったということで,若松監督が赤塚不二夫を出演させようとしてどこかに出番はないかと電報を持ってくる郵便局員役で登場させる。それがモデルになった映画の実際の映像として、エンディングロールのところで本物の赤塚不二雄が出てきたときには、さすがに感動した。
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映画「ゴールドボーイ」岡田将生&羽村仁成

2024-03-10 16:13:32 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ゴールドボーイ」を映画館で観てきました。


映画「ゴールドボーイ」岡田将生主演のクライムサスペンス映画で、金子修介監督がメガホンをもつ。「ばかもの」から金子監督とは相性は悪くない。最近辛気臭い映画が多く、急に鑑賞ペースが落ちてしまう。中国人作家による原作の映画化という割には評価は悪くない。娯楽作品を観てみるかという感覚で選択する。

岬の先の絶壁の上で記念写真を撮っている夫婦と義理の息子東昇(岡田将生)がいる。結婚のプロポーズをした記念の場所を見るためにきた3人だが,写真を撮った後突如として息子が両親を崖から突き落とす。警察に電話をして,父親が意識が朦朧となり妻を引っ張るように崖から落ちたと義理の息子が証言した。

犯人が最初にわかってしまう展開だ。でも、単純ではない。遠く離れた浜辺に2人の少年と少女がいて、浜辺で記念撮影をしていた。ところが撮った動画に崖から夫婦を突き落とす証拠映像が映っていた。

崖から落ちた主人は沖縄でも有名な企業グループの東オーナーだった。TVニュースで報道されているのを確認した3人はこの義理の息子から金を奪いとることを思いつく。


展開のテンポがよく,最後まで楽しめるサスペンスだ。
人間関係は複雑にもかかわらず,わかりにくくはない。脚本港岳彦のうまさであろう。ネタバレサイトは見ずに映画館に行くのが望ましい。自分も一定以上の話はしない。中国人作家による原作があるとはいえ、今回海の匂いを感じる沖縄を舞台にしたのは正解だったと思う。

岡田将生が主演でクレジットトップであるが,実質的には安室少年(羽村仁成)が主人公である。gold boyも少年のことだ。脅されている岡田のほうも妻から離婚を申し出されている事情がある。夫婦関係は冷え切っていた。


一方で少年は父親(北村一輝)と母親(黒木華)が離婚をしていた。その後妻と少年との関係が悪かった。浜辺で少年と一緒にいた先輩浩は母親のつれ子夏生(星乃あんな)と一緒にいるが,その家庭も複雑だった。

息つく間もなく次から次に殺人事件が起きていく。オー!こうくるかと思う場面も多い。主人公の少年は中学から高校受験の時期に既に微分方程式を解いてしまう数学的能力を持っている設定だ。悪知恵を次から次に実現させていく。


沖縄県警の刑事役を江口洋介が演じる。殺された夫婦やその娘とは親戚関係にある。謎解きとして鋭い能力を持った刑事ではない。ただここで警察としての江口洋介の存在がなければ,話がおかしくなる。悪役としての岡田将生の存在もいい感じだ。一緒に悪さをはたらく少女星乃あんな存在感がある。この年齢で殺人に絡む演技は容易ではない。将来の有望株の登場である。

おもしろかったが、それなりに欠点もある。音楽が弱かったのが残念。挿入曲として、マーラー5番の名フレーズを使った。でも、日本映画でこれを使ってうまくいった試しがない。倖田來未のエンディング曲はいい。どんでん返しが続いたあと最後に向けてはどう決着させるのかと思ったが,帳尻を合わせた感じだ。こうなるかなあ?と思いながら,最後の場面を追っていた。
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映画「夜明けのすべて」 松村北斗&上白石萌音&三宅唱

2024-02-18 08:22:04 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「夜明けのすべて」を映画館で観てきました。


映画「夜明けのすべて」は、「ケイコ目を澄ませて」で映画界の各種賞を総なめした三宅唱監督瀬尾まいこの原作を映画化した作品である。病気系の話で暗いかなと思ったけど、妙に評判のいい映画で気になってしまう。軽い障がいを持った役柄を演じる主演の2人は松村北斗と上白石萌音である。上白石萌音の顔を見て、主演作を観るのは吹替えの「君の名は」はあっても「舞妓はレディ」以来10年ぶりだということに気づく。光石研、渋川清彦、最近注目の若手芋生悠といったメンバーが脇を固める。

月に一度、PMS(月経前症候群)イライラが抑えられなくなる藤沢(上白石萌音)は新卒で入社した会社を発作によるトラブルで辞めた。結局子ども向けの理科実験道具などの科学グッズをつくる栗田科学で商品管理をする。転職で入社してきた山添(松村北斗)が周囲に挨拶もせずに炭酸水をガブガブ飲むのを見て、いつものように必要以上に癇癪を起こしてしまう。

注意された山添もまたパニック障害を抱えていて、定期的に通院していた。恋人(芋生悠)がいるにもかかわらず、電車にも乗れない状況になっていた。最初はぎくしゃくしていた2人の関係も,病気持ちはお互い様と面倒見の良い藤沢から接近して,お互いのアパートへ訪れるようにもなる。栗田社長(光石研)をはじめとした職場の人たちも2人の病気を理解して、移動プラネタリウムのプロジェクトに取り組んでいる。


柔らかいムードが流れる障がいを持った人の成長物語だ。
2人の障がいの発作を示すシーンはあっても,血生臭い暴力シーンは一切ない。ベタベタした恋愛シーンや濡れ場もない。不快に思うシーンはない。2人が周囲の理解のもと徐々に自らの障がいを克服していく姿が映される。恋愛か友情かのようなコメントも目立つけど,そんな事は言ってられない事情が2人にはある。いかにも文化庁からの支援を受けている映画らしい健全さが売りだ。カーネギーの「人を動かす」の実例みたいな逸話も多い。

PMSという障がいがあることを人生で初めて知った。毎月1度の生理に付き合わざるを得ない女性は誰もが知っているのかもしれない。若い頃、私は生理がキツイと言ってピルを飲んでいる女の子と付き合ったことがある。こちらはラッキーと思っていたが、もしかしてPMSだったのか?確かに癇癪持ちだった。

主人公藤沢は普段はおせっかいで,周囲に気を使いすぎる位の女性である。ところが発作を起こすと,二重人格のように豹変する。周囲に起きるちょっとむかついたことにあからさまに憤慨するのだ。新卒で勤めた会社でも,先輩社員のコピー機の扱いに尋常じゃない怒りを表して周囲をびっくりさせる。自分でも気がついて薬を飲むと睡眠薬の効果が強く寝過ごしてしまう。ある意味不器用だ。

上白石萌音二重人格的な藤沢のパフォーマンスを巧みに演じた。藤沢の山添のアパートに乗り込んでいく積極性は単なるおせっかいだけではなく恋愛の要素が全然なかったとは言えないと感じる。積極的な女の子の一面を持つ。


パニック障害はよく聞くが,具体的な症状については知らない。電車に乗れない位の状況になっているとは思わない。2年前にラーメンを食べているときに突然発作を起こしてから、前の会社も辞めた。映画では, 会社内で薬をなくしてパニックを起こす山添のシーンがある。もともと転職した仕事に関心を持っているわけではなかった。やる気なく働いていた。ところが,病名は違っても障がいを持つ仲間として藤沢と接しているうちにお互いのことを思いやる気持ちが芽生えてきた。

PMS障害を起こしそうになった藤沢を会社の外に連れて行って,深呼吸をさせたり、体調の悪い藤沢の家まで届け物をしたり気配りもできるようになった。脳の中の配線がつながったような変貌を見せるようになる。会社のプロジェクトにも積極的に参画するようになる。パニック障害になった山添の症状が大幅に改善して成長している。普段はモテモテの松村北斗も好演である。髪を切られるシーンが笑える。


脇を固める光石研や渋川清彦の役も心に闇を抱えている。親族をなくして精神的に参っている人たちのサークルに2人とも入っている。そこで自分の悩みを語り合うのだ。この映画ではその部分についての深いツッコミはなかったが,そのシーンがあるだけに障がいを持つ2人を支えていく姿がよくわかる。それにしても、光石研は適役だ。最近はキャノンのCMで課長役を演じているけど、誰もが好感を持つと思われる笑顔が素晴らしい


原作と違う仕事の内容にして、移動プラネタリウムを題材にするのは三宅唱監督としては会心の出来だったに違いない。上白石萌音の朗読も良かった。藤沢が母親の介護のために転職しようとリクルーターと会っている場面など,現代若者事情もよくわかるように映画に盛り込まれている感じがした。
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映画「罪と悪」 高良健吾

2024-02-15 19:44:11 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「罪と悪」を映画館で観てきました。


映画「罪と悪」は数々の作品で助監督をつとめてきた齊藤勇起監督のオリジナルの脚本による初長編作品だ。クリントイーストウッド「ミスティックリバー」を思わせる3人の主人公を取り巻く物語というコメントが目につく。後味は最高にわるい作品だけど心に残る。それなので公開以来「罪と悪」が気になっていた。田舎町の3人の中学生が犯した罪と20年の月日を経た現代の3人の動静を描くクライムサスペンス映画である。

20年前、14歳の少年正樹の遺体が川ぺりの橋の下で発見された。中学のサッカー部員仲間の春・晃・朔は、正樹を殺した犯人と確信した男の家に押しかける。もみ合いの末、男は3人によって殺され家は燃やされる。1人が犯人だと名乗りでる。


刑事になった晃(大東駿介)は父の死をきっかけに地元に戻り、農業を営む朔(石田卓也)と再会する。朔は引きこもりになった双子の兄弟と暮らしていた。晃が捜査中に出くわしたある少年の死体が橋の下で見つかる。少年は半グレ集団の仲間の1人だった。晃は少年の殺害事件の捜査をするために、怪しい世界に生きる昔の仲間春(高良健吾)の事務所を訪れる。


クライムサスペンスとしてはまあまあの出来
20年前中学生の時に仲良し4人組の1人が殺されて、こいつが犯人だという不穏な老人を仲間3人で殺してしまう。でも、罪は高良健吾演じる春が1人でかぶって少年院に行く。20年の月日が流れて決着がついていると思わせるが、そうではなかった。現在春がからんでいる裏仕事にからめてストーリーが展開する。高良健吾がメインだ。

20年前の殺人と現在起きている事件の関わりだけに焦点を合わせるだけでない。現代風ヤクザ半グレ映画のようにもアレンジする。いったん罪をかぶった春が、若者を集めて、半グレ集団のように生きている。親分の貫禄もある。コンビニもやれば、土木工事の下請けもやるし、夜の酒場でクラブも経営する。こんな奴は身近にいそうだ。以前はヤクザがしのぎでやっていたことを引き受ける奴らだ。スーツを着て一見はパリッとしているように見える本物のヤクザ集団との争いもストーリーに組み込む。


登場人物を昔のヤクザ映画のような「いかにも」の風貌とせず、現代風ワルっぽくする。暴対法がうるさいので、社会の中に潜んでいるワルはこんな奴らか。いずれも実生活で絡みたくない奴らだ。刑事役も登場するが、裏社会の問題は警察に頼らず裏社会で解決する構図だ。佐藤浩市は普通の老人ぽいヤクザの真の親玉で、椎名桔平は悪と通じている菅原文太「県警対組織暴力」で演じたような警察官だ。村上淳は現代風スーツ姿のヤクザだ。


ただ、高良健吾以外は一時的に登場する佐藤浩市と椎名桔平を除いては見慣れた俳優がいない。そのためか、20年前と現代それぞれに登場人物が多く、この顔誰だっけかとアタマの整理がつきづらい面はあった。

最後に向けて、監督が予想外の結果を導き出そうとしたどんでん返しもある。自分の理解度の問題もあるだろうが、正直なところ真相もネタバレサイトを見て納得した次第。確かに色んなシーンで伏線を張っていてそれを回収している。決して悪くはないが、もう一歩複雑にさせすぎない工夫が必要な印象を受ける。
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映画「カラオケ行こ!」綾野剛&山下敦弘

2024-01-19 17:17:36 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「カラオケ行こ!」を映画館で観てきました。


映画「カラオケ行こ!」は山下敦弘監督綾野剛とコンビを組んだコメディ映画である。和山やまの漫画が原作でカラオケが上手くなるために、ヤクザが合唱部部長の中学生に指導を受ける話である。昨年末の荒井晴彦監督「花腐し」のラストで主演の綾野剛がさとうほなみとあまり上手くないカラオケを披露した。今だに歌声が耳に焼きついている。昨年、山下敦弘監督は台湾映画のリメイク「1秒先の彼女」のメガホンを持った。自分的には相性が良い映画だった。このコンビが組めばなんとかなるだろうと映画館に向かう。

大阪の中学で合唱部部長の岡聡実(齋藤潤)は合唱コンクールの会場でヤクザの成田狂児(綾野剛)に突然カラオケに誘われ、歌のレッスンを頼まれる。組のカラオケ大会で最下位になった者への罰ゲームを回避するためだ。変声期に入ってスランプ気味の聡実が狂児やヤクザ仲間のレッスンに付き合ううちに奇妙な友情が生まれてくる。狂児の勝負曲はX JAPANの「紅」だ。

ヤクザの存在が関わっても、実はシンプルな青春コメディだ。
軽めの役を受けもった綾野剛がノッてる。中学生との絡みがおもしろい。


序盤に軽い沈滞部分があっても、途中からエンジンがかかる。裏社会がからむと映画の舞台設定が大阪になってしまうことが多い。でも、その大阪のヤクザがいかにも裏社会的な犯罪行為に走る映画ではない。ヤクザたちが一瞬恫喝的に突っ張っても、音痴を克服するテーマなのでストーリーが笑いの世界に入っていく。中学生がカラオケ屋でヤクザの歌を一言で評価をする場面が実に楽しい。一方で、純朴な中学生たちの合唱部青春物語を並行する。スレていない。それだけにまとまりがつく。エロ系の描写や激しい流血シーンなどはなく,中学生でも安心して見れる映画になっている。


エンディングの曲に背筋がゾクッとした。女性ボーカルグループLittle Glee Monsterの「虹」だ。これが抜群に良かった。みずみずしい歌声が心に響く。観客の誰もが席をたたなかった。自分と同じような気分になったのであろう。そして、エンディングロールの最後に改めて綾野剛が登場する。

⒈綾野剛
ずいぶんと綾野剛の映画を観ているけど、悪徳警官やヤクザ、半グレの役が多い。どれもこれも激しい格闘シーンがあるから肉体的にはたいへんだ。今回ヤクザ役と言ってもこの映画には立ち回りはほとんどない。いつもより楽だったんじゃないかな?中学生との掛け合いトークが楽しそうだ。大阪弁のセリフにキレがある。ぼそぼそ話をしていた「花腐し」とは大違いだ。この役柄にノッてる感じがした。

「花腐し」の最後で山口百恵「さよならの向こう側」を歌う時にはびっくりした。率直にあまりうまくないと思ったが今回はその流れを引きずっている。ひたすらX JAPANの曲にこだわっていても,中学生からこの曲を歌ったほうがいいんじゃないかとリストを用意される。そこで実際に「ルビーの指環」などのリストの曲を歌ってしまうシーンも目線を下げていい感じだ。


⒉山下敦弘
数多い山下敦弘監督の作品でも函館が舞台の「オーバーフェンス」と大阪ミナミで撮った「味園ユニバース」の2つが1番好きだ。「味園ユニバース」はまさに大阪千日前を舞台にした作品で,歌と大阪弁が前面に出てくる。大阪芸大出身の山下敦弘だけに大阪弁を駆使した映画はのれるのかもしれない。毎回コミカルなテイストを組み込むのが得意だ。

改めて素性を確認したら,山下敦弘は愛知県出身,綾野剛は岐阜県出身でいずれも中部エリア出身で関西人ではない。しかも,エンディングロールで今回のロケ地を確認したら,どうも千葉中心の関東のようだ。合唱団も府中となっていた。よくもまぁこんな大阪テイストの映画が撮れたものだ。妙に感心した。

中学生の主人公は映画クラブの同級生と一緒に「カサブランカ」を観ている。
まさにハンフリーボガード「君の瞳に乾杯」の場面だ。山下敦弘の趣味だろうか?


⒊そして自分
先日協力会社の人たちと浅草寺に参拝に行った。隅田川のほとりで会食した後,映画「PERFECT DAYS」でも出てくる東武浅草駅そばで一杯休憩をしつつ,「花腐し」にも出てくる四谷荒木町で飲もうかと迷い,結局銀座に突入した。ホステスとデュエットしたりジルバ踊ったりやり放題だったが、「花腐し」を観た昨年末から「さよならの向こう側」の曲フレーズが耳について離れない。練習中だけどなかなか思い通りにいかない。綾野剛がうまく歌えないとは偉そうに言える立場ではない。
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映画「ある閉ざされた雪の山荘で」重岡大毅&間宮翔太郎

2024-01-17 19:53:58 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「ある閉ざされた雪の山荘で」を映画館で観てきました。


映画「ある閉ざされた雪の山荘で」は東野圭吾のミステリー小説の映画化である。当然原作は未読。重岡大毅がクレジットトップで近年人気の若手俳優たちが集まっている。そういえば、新年恒例の人気番組「芸能人格付け」にこの映画を代表して中条あやみと間宮祥太朗が参加していた。間宮翔太郎の味覚がすごかった。


山荘に有名舞台演出家が手掛ける次回作の最終オーディションに7人の役者が集められる。命じられたのは雪に閉ざされ、外部との通信が閉ざされた密室での演技。四日間の集団生活で行われる。指導者は目の前にはいない。隠しカメラその他で遠隔で監視している。台本通り携帯電話を通じての外部との連絡は禁止されている。そんな中、次から次にオーディション参加者がいなくなっていく話だ。


作品情報を引用する。

劇団に所属する役者7人に届いた、4日間の合宿で行われる最終オーディションへの招待状。新作舞台の主演を争う最終選考で彼らが“演じる”シナリオは、【大雪で閉ざされた山荘】という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件。出口のない密室で一人、また一人と消えていくメンバーたち。(作品情報引用)

自分にはあまり合わない映画だった。
ミステリー的要素を期待して,この映画を選択した。ストーリーのオチは,なるほどと思わせる部分もある。でもなんかすっきりしない。俳優志望の若手が山荘で合宿生活をしているわけだ。自分の理解度が弱いのかもしれないけど,交わしている会話が自分の頭にしっくり入ってこない。言葉遣いも悪い。一見お互いに仲良さそうに見えるけど裏がある。見ていてあんまり気分がよくない。結局腑におちるという感覚が得られなかった。20代とかの若い人たちが見たら違う感覚を思うのかなあ?

ここで繰り広げられているのは俳優同士の嫉妬だ。配役を得ようと前のめりになる中で,山荘にいるライバルが何か悪いことをしているのではないかと言う疑心暗鬼のもとで嫉妬が生まれる。役をもらうために寝たとかそんなセリフが多い。結果的には嫉妬が事件を起こしている。女性同士の取っ組み合いの喧嘩もある。


ミステリーだから解決するのは誰かと思ったらいつのまにか重岡大毅が探偵みたいになっていた。間宮祥太朗はキーパーソンだ。中条あやみや堀田真由嫉妬深い女を演じている。これまでの作品のイメージと全く違ってどうも調子が狂う。岡山天音は先日の「笑いのカイブツ」で演じていたときのわめき方と全く同じような演技をしたので思わずほくそえんだ。
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映画「笑いのカイブツ」 岡山天音

2024-01-05 22:29:00 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「笑いのカイブツ」を映画館で観てきました。


映画「笑いのカイブツ」はお笑い番組に投稿し続け、お笑いにとりつかれた実在の若者の生き様を描く。岡山天音主演で、菅田将暉、仲野太賀、松本穂香の主演級が脇を固める。監督は数々の名作で助監督をつとめてきた滝本憲吾である。正直なところ、映画ポスターの岡山天音の雰囲気にはいい印象を持たず、どうしようかと思ったが、選択してよかった

観てみると、なかなか強烈な映画だ。岡山天音怪演が際立つ。あえて作品情報を引用する。

大阪。何をするにも不器用で人間関係も不得意な16歳のツチヤタカユキ(岡山天音)の生きがいは、「レジェンド」になるためにテレビの大喜利番組にネタを投稿すること。狂ったように毎日ネタを考え続けて6年。自作のネタ100本を携えて訪れたお笑い劇場で、その才能が認められ、念願叶って作家見習いになる。しかし、笑いだけを追求し、他者と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることに。

自暴自棄になりながらも笑いを諦め切れずに、ラジオ番組にネタを投稿する“ハガキ職人”として再起をかけると、次第に注目を集め、尊敬する芸人・西寺(仲野太賀)から声が掛かる。ツチヤは構成作家を目指し、上京を決意する。(作品情報 引用)


お笑いに取り憑かれた尋常でないキャラクターの男を描く今まで観たことがないタイプの映画である。観る価値はある。

スポーツでも、クリエイターでも特異な人物の成長にスポットをあてるストーリーは割と好きなジャンルだ。男性の場合、映画と相性の良いボクシングなどのスポーツ系が多く、女性だとクリエイターの方が多い。一昨年の吉岡里帆「ハケンアニメ」とか昨年の松岡茉優「愛にイナズマ」なんてその類で、頑張る女性を応援したくなる成長物語だった。脇役にまわる菅田将暉はスポーツ、クリエイター両方とも主役を演じている。ただ、この主人公はちょっとこれまでの成長物語の人物像にはいないタイプだ。


映画を見始めると、乱雑な主人公の部屋がすごいのに気づくだろう。家の中にある紙という紙に書ききったペン書きのお笑いのネタが所狭しと置いてある。アイディアが浮かんだらすぐ机に向かって何かに取り憑かれたようにペンを走らせる。投稿した自らのネタがTVやラジオで取り上げられると喜ぶ。お笑いが好きなのだ。

好きなことに一心不乱に取り組む映画は随分とあるけど、もう少し常識人であることが多い。他と比べても主人公のツチヤは生きることに不器用と解説されるけど、「人間関係不得意」だけでは片付けられないかなりの性格異常である。別に自閉症的症状ではない。生計を立てようと、飲み屋やスーパーなど色んなところでバイトしてもクビになる。アル中に近いくらい酒も飲む。酒グセも悪い。スカウトされて放送作家になろうとしても周囲と問題を起こす。取り巻く連中にも問題はあれど、本人に帰することも多い。ともかく普通じゃない。

そんな主人公ツチヤタカユキを演じた岡山天音の怪演が光る。「伝説のはがき職人」と呼ばれたツチヤタカユキの私小説をもとに映画化している。実際にこんな奴がいたのだ。成長物語によくあるキレイなストーリーではない。認められたい本能が満たされない。笑いのネタを提供しているのが自分なのに手柄は別の人だ。そのジレンマで心身のバランスを崩すことの繰り返しだ。


ショッピングモールのファーストフードの座席でお笑いネタを書き続けるツチヤに好意を寄せる中卒の店員役の松本穂香やさしさに満ちあふれていていい感じだ。お笑い漫才の片割れで番組のDJをやっている芸人役の仲野太賀が、変人だけどお笑いに関しての才能をもつツチヤを何とかしてかばおうとする姿がいい。「オカン」を演じた片岡礼子の肝っ玉かあちゃんも良かった。


それに増してうまいし、まさに適役と思ったのが菅田将暉だ。ツチヤがバイトするスナックの店主で、居酒屋の店員もこなす。別名ピンク。髪の毛をピンクに染めて、半グレ系若者によくいる町のならず者だ。ケンカがバレると刑務所に逆戻りといった危ない筋でもある。

今や、日本のメジャー作品で主演級と出世した菅田将暉も、初期は「ディストラクションベイビー」「そこのみにて光輝く」などの名作でこの映画と似たようなハチャメチャな若者を演じていた。今回は菅田将暉のルーツの大阪が舞台だし、原点回帰といった感じだ。主演級になると自惚れる俳優が多い中で、脇役にまわる菅田将暉の意気込みを賞賛する。

でもこうやって自分のことが主題になる映画ができると、主人公のツチヤタカユキも少しは気が晴れただろう。
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映画「PERFECT DAYS」 役所広司&ヴィムヴェンダース

2023-12-23 19:50:08 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「PERFECT DAYS」を映画館で観てきました。


映画「perfect days 」はドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督の作品で役所広司カンヌ映画祭主演男優賞を受賞した作品である。ヴィムヴェンダースの監督作品ではロードムービーの名作「パリテキサス」が好きだ。ジンワリと心に残る。オール東京ロケで言語は日本語役所広司はトイレ清掃員を演じる。トイレ清掃に従事している役所広司を映し出している予告編を観たけど、まさか清掃作業のルーティンだけのストーリーではないだろう。先入観なく映画館に向かう。

見上げると東京スカイツリーが見える古いアパートの一室に住む平山(役所広司)は東京の公衆トイレの清掃員だ。朝早く起きて軽のバンに乗って、各地のトイレをまわって清掃作業をする。仕事は丁寧だ。平山の日常生活と、同僚や行きつけの飲み屋などでの触れ合い、家出してきた姪との交情を淡々と描いていく。


シンプルな佳作だ。
セリフは少ない。ほぼオールロケで、役所広司の動静をカメラが追っていく。役所広司が清掃にいく公園などにある公衆トイレの建物のデザインがいずれも斬新なので驚く。便器も最新式でウォシュレットもつく。普通街の公衆トイレはこんなにきれいではない。その一方で、役所広司が住むアパートは昭和40年代に建てられたと思しき風呂なしの古いアパートで、本とカセット以外は荷物も少ないシンプルな部屋だ。

朝目覚めて出発の準備をした後でバンを運転しながらカセットテープの古い洋楽に耳を傾ける。曲の選択のセンスは抜群だ。現地での休息時にはフィルムカメラで写真を撮る。トイレ清掃作業した後は、銭湯で身を清めて、浅草駅地下の一杯飲み屋でハイボールを飲む。たまに美人ママのいる居酒屋にも寄り、帰るとフォークナーや幸田文の文庫本を読みながら静かに寝る。そんな毎日に少しづつ変化がある。小さなエピソードを積み上げる。


自分がもしこれから1人住まいをするなら、こんな生活をするのかな?と感じていた。映画を観ながら、遠方に行くというわけでないけれど、ロードムービー的な感覚があるなとも感じる。役所広司はほぼ出ずっぱり。あえて類似している映画をあげるとジム・ジャームッシュ監督の「パターソン」かな。バス運転手の日常を日めくりで静かに追っていくその映像作りに似ている。

山田洋次と吉永小百合が組んだ「こんにちは、母さん」も東京スカイツリーを見渡す隅田川沿いの光景が再三映り、この映画と似たようなロケ地だ。隅田川に架ける桜橋を自転車で渡る役所広司の表情が清々しい。吉永小百合も銭湯に行っていたな。ホームレスを田中泯が演じるのは両作で共通する。


この映画を観て驚いたことがいくつもある。こんなにハイセンスな公衆トイレがあるとは知らなかった。調べると、渋谷区がユニクロなどと組んだプロジェクトのようだ。隈研吾などの日本を代表する建築家が設計している。恵比寿駅前のトイレだけは知っていた。それと、古いカセットテープの買取価格がそんなに高いのかと驚く。

後は、石川さゆりが出てきた時も驚いた。役所広司が常連の店に入った時、着物姿の美人女将がいる。アレ!石川さゆりかな?、声がちょっと違うかな?そう思っていたら、歌い始めて背筋がゾクッとした。間違いない。「朝日のあたる家」を歌う石川さゆりに感動した。こんな店あったら週3行くな。元夫役で三浦友和がでてくる。出番は少ない。

すごい傑作とまでは思わない。でも、無口な中年の役所広司の少ないセリフと妹に再会した時の感極まる姿がジンワリと心に残る。
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映画「首」 北野武&加瀬亮&西島秀俊

2023-11-27 17:41:25 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「首」を映画館で観てきました。


映画「首」は北野武監督の新作。戦国時代の織田信長明智光秀に本能寺の変で殺害される以前の武将同士の駆け引きの物語である。織田信長を加瀬亮,羽柴秀吉をビートたけし,明智光秀を西島秀俊が演じている。出演者は北野武監督「アウトレイジ」とかなり共通している。

映画評を見るとかなり割れている。高評価もあれば,北野武監督にしてはイマイチの評価もある。経験的に評価の分かれる映画は自分にとっては面白い場合が多い。そういう経験則に則り早速映画館に向かう。

織田信長(加瀬亮)は自分勝手でかなり強引に重臣たちを扱っていた。織田信長の重臣の1人荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こし、1年かかってようやく鎮圧するとともに村重は姿を消した。

信長は明智光秀(西島秀俊)や羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣たちを集め、自身の跡目相続を任せると村重の捜索命令を下す。秀吉は弟・秀長(大森南朋)や軍師・黒田官兵衛(浅野忠信)らとともに策を練り、元甲賀忍者の芸人・曽呂利新左衛門(木村祐一)に村重を探すよう指示する。

おもしろかった。
3作続いた「アウトレイジ」ムードが映画全般に漂う。時代をかえて、同じような手法でつくった感じだ。ビートたけしが原案を提供した「アナログ」はありふれていたけど、本人監督の作品は違う。映像の質、編集いずれも北野武監督の腕がさえる。悪いけど、評価低くした人たちの映画観る目??

日本史の中で戦国時代については妙に詳しい日本人が多い。別にインテリでなくても、信長、秀吉、家康と続く基本的な歴史の流れは日本人としての常識になっている。そういう前提でいくと、この映画は普通の日本人にとっては観やすい北野武監督がうまく自分なりの解釈をつくって面白おかしく映画を作ったと感じる。親分の織田信長が亡くなったと聞き、これまでは泣き悲しんで復讐に燃える秀吉を映し出すことが多かった。ここでは、裏で秀吉が高笑いだ。

逆にいうと、日本の戦国時代史に関する常識のない外国人には理解しづらい点が多いのではなかろうか?北野武流に茶化した部分が不自然に見えるような気がする。他国の映画祭ではウケないのではないか。


解像度の高い映像になっている。首切りを露骨に見せたり、血が吹き出すような場面も多く、普通だと映像の質を鮮明にしなかったりモノクロにしたりすることも考えられる。でもしない。通常よりも大画面の劇場で前の方で観たが、リアル感があり迫力を感じる。カメラワークもいい。接近戦の時にオッと唸る映像がいくつもあった。

⒈現代サラリーマン社会の縮図
横暴な経営者って最近減ったかもしれない。でもたまにニュース記事になっている。この映画は現代サラリーマン社会と通じるものがある。まさに怪演加瀬亮の織田信長は横暴なワンマン経営者に通じる。加瀬演じる「アウトレイジ」初期の暴れまわるヤクザは突っ張っているだけの弱々しいものを感じたが,ここでの名古屋弁交えた暴君パフォーマンスはすごい。蹴られたり暴力を振るわれた西島秀俊や遠藤憲一はたまったもんじゃないだろう。

ビートたけしのような上司もずいぶん出会った。「うまくやれよ。」と具体的な指示と言うよりも大雑把に結果を求める上司タイプだ。そういう自分もそんな指示した覚えがある。人のことはいえない。いずれも現代サラリーマン社会の縮図のようで何度も笑える。「翔んで埼玉」の10倍笑えた。


2.荒木村重
繰り返し放映される信長、秀吉、家康もので遠藤憲一演じる荒木村重話の肝になっているのはこれまでのドラマと異なる。信長に逆らって謀反を起こし、1年以上踏ん張ったという事実も知らなかった。それにしても、残された女子どもも含めた一族が皆殺しで首斬りされるシーンは残酷だ。

荒木村重千利休に近く、明智光秀に預けられるというのは北野武監督の創作だろう。でも、明智光秀と親しき仲で謀反に協力したなんて解釈はおもしろい。調べると、荒木村重は信長死後も生き延びたようだ。今回、斬られる訳でなく籠の中で山から放り出されるとしたのは、折衷案で余韻を残していいかも。


3.男色系の匂いと女性の扱い
「おんな太閤記」なんてTV番組もあったし、正妻、側室なんでもありとばかりに大勢女が登場することが多い。ここでは、メジャー女優の影がない。あくまで男性中心の映画だ。しかも、男色系の匂いをぷんぷんさせる。織田信長に対する森蘭丸の話はあまりにも有名だが、その信長が武将たちとの男色の関係を匂わせる。付き合わないなら干す。部下たちも色仕掛けで近づいていく。

本来、織田信長が行方不明になった荒木村重を何が何でも探せと言うのがこの映画の主題である。しかし千利休の斡旋で荒木村重が明智光秀のところに預けられる。しかも明智光秀とは男色の仲である。そこからこの映画が動くのだ。


今日のフェミニストからするとこの映画はあまりお好きでないかもしれない。女性の存在感が弱い。武士たちについている遊女たちが,毛利の水攻めから羽柴秀吉が撤退しようとしているときに,「メシの種逃げるぞ」という遊女のセリフがある。思わず笑える。まさに従軍慰安婦である。わけもわからない訴訟を出している連中を皮肉っている。

4.忍びの者とお笑い
忍者映画って、今の60代以上であれば子どもの頃からの記憶で何かときめく部分がある。そのあたりを北野武監督もわかっているのであろう。ここでは甲賀忍者を登場させる。手裏剣だけでなく、忍者技が次から次へとでてくる。接近戦ではカメラワークが冴える。

「座頭市」でタップダンスを踊ったのと似たような感じで、甲賀忍者にコンテンポラリーダンスを踊らせる。こんな感じが好きだ。徳川家康には伊賀忍者服部半蔵を警護に就かせる。次から次へと徳川家康の影武者を登場させるところも面白かった。このあたりの配慮がすごい。


加えて、お笑いの要素も加える。そんなことありえないと思いながら、思わずほくそ笑む。

エンディングロールにリストアップされる協力者はものすごい人数だった。
その中でVFXの外人たちがものすごく多いのにも気づく。これだけの映画ができるだけのことがある。
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映画「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」 GACKT&二階堂ふみ

2023-11-26 17:15:33 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」を映画館で観てきました。


映画「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」は大ヒット作の続編である。「翔んで埼玉」の一作目を埼玉で見に行った時,周囲はすごい笑いの渦に巻き込まれていた。次から次に続く埼玉自虐ネタ。よくぞ核心をついているなと思うことが次から次にセリフになり,ハラを抱えて自分も笑った。娘も気に入り,今回も娘と2人で映画館に向かった。

GACKTと二階堂ふみのダブル主演は今回も継続。武内英樹監督と徳永友一脚本コンビも同じ。前作は埼玉の自虐ネタに加えて千葉対埼玉の対決がメインの話題となっていた。今回は海なし県埼玉に海を引っ張ると言うテーマのもとに, 砂を運ぶためにGACKTが海を渡って和歌山の白浜に向かう。ただ、肝心の白浜ビーチは関西のメインの大阪,京都,兵庫に牛耳られている。和歌山,奈良、滋賀、特に滋賀をクローズアップして同じような自虐ネタに踏み込む。大阪代表片岡愛之助,神戸代表藤原紀香に加えてが滋賀県のオスカルになりきる。

東京への「通行手形」問題は解決したにせよ,埼玉県民横のつながりが極めて弱い。東武、JR、西武各路線ごとのエリアで争いが激しい。埼玉にないのは海とばかりに,越谷のしらこばと公園に海を造ることで和歌山の白浜から砂を持ってくるためにGACKTが千葉の港から和歌山に向かう。
和歌山白浜のビーチは,大阪,京都,兵庫の住民以外は手形がなければ入れなかった。大阪府知事(片岡愛之助)が権力をふるい手がつけられないので、同じく滋賀県の杏とともに共闘を組む。


前回よりも埼玉の映画館内での笑いは少なかった。
一作目よりは続編の方が受けないことが多い。そこで、製作者もよくぞ考えたのか,今回は関西を巻き込んだ。埼玉イジメのネタは、浦和、大宮の争いに中立の与野が戸惑う話や西武と東武の争いなど序盤戦に少しある程度で少ない。前回でネタを出し尽くしちゃったのかもしれない。一作目ほど埼玉の観客に受けなくなったのではないか?自分も不覚にも途中ウトウト寝てしまった。

埼玉に対応するのが滋賀で、の登場場面が多い。GACKTは関西に遠征するし出ずっぱりだけど、二階堂ふみの出番が減った。滋賀の車のナンバープレートが虫みたいだという話や琵琶湖の水量が増すと街が浸水してしまうなどのネタが中心だ。片岡愛之助率いる大阪が威張っている。何かにつけて甲子園ネタも絡む。自分は関西勤務5年で妻が兵庫生まれの和歌山育ちなので、だいたいのことはわかるけど、埼玉の人はどうみたのかな?比叡山京都府内はわずかで、ほとんど滋賀県ということに娘が驚いていた。

あんなにおもしろかったのに、今回はもう一歩
色んな県を取り上げすぎで焦点が絞れていないのでは?


⒈藤原紀香の復活
藤原紀香を久々に見た。今回は片岡愛之助演じる大阪府知事がGACKTと対峙する。同時に藤原紀香が神戸市長,川崎麻世京都市長の役だ。これがなかなか面白い配役だ。大阪がメインとはいえ藤原紀香も威張っている訳だ,でも出身地は和歌山県紀の川市と映画の中で出てくる。え!そうなのか。と思った。実は,藤原紀香の両親が和歌山出身で,藤原紀香自体は西宮で育っている。紀香の「紀」「紀州」から出た名前であろう。紀子妃殿下の名前の由来も和歌山が絡む。藤原紀香は紀の川観光大使になっていて,どうやら和歌山を好きなようだ。初めて知った。


⒉和久井映見の変貌
熊谷で県内の運動会もどきをやっていて、応援に向かう和久井映見を久々観る。神奈川出身だけど、高校は川口だ。CMで大人気の朝日奈央が娘役だ。朝日奈央は入間出身だ。平成の初めは和久井映見は清純で可愛かった。随分とTVに登場していた。それなので、あまりに太っていてビックリだ。この間観た映画で、洞口依子がふっくらしてイメージが違ったのと同様だ。


⒊行田タワー?
序盤戦で前回の延長のような千葉、埼玉の軽いけなし合いがある。その時に千葉にはタワーがあるが、埼玉にはないというセリフがあった。その時は確かにそうだななんて思っていた。ところが、途中の片岡愛之助とGACKTとのディスり合いの中で、大阪が通天閣を引っ張り出す。そこで突如として現れるのが、「行田タワー」だ。今回この映画でもっとも驚いたのがこれだ。

自分は「行田タワー」の存在を初めて知った。「古代蓮の里展望タワー」というらしい。埼玉の人口は738万を超えるけど、「行田タワー」の存在を知っている人が行田市民8万とプラスアルファで20万いるのかなあ?場所を確認すると、駅からはかなり離れている。クルマでないといけないだろう。たぶん一緒に映画観た人で知っている人いるかなあ。でもこの映画では大活躍だ。それがいいところ。
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映画「花腐し」 荒井晴彦&綾野剛&柄本祐&さとうほなみ

2023-11-17 05:30:03 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「花腐し」を映画館で観てきました。


映画「花腐し(クタシ)」は、脚本家荒井晴彦「火口のふたり」以来の監督作品だ。芥川賞を受賞した松浦寿輝の原作を脚色してピンク映画の監督を主人公にしている。主演のピンク監督は綾野剛で、元脚本家として「火口のふたり」の主役柄本佑を起用する。荒井晴彦の作品は毎回観ているし、自分のブログでも昭和の時代の「遠雷」「嗚呼!おんなたち 猥歌」「赫い髪の女」などアクセスの多い記事もある。「映画芸術」の主宰者で、左翼系の連中と付き合っているせいか映画にもその匂いを感じることもある。しかし、根本的思想は自分と真逆でも信頼する映画人だ。

ピンク映画の監督栩谷(綾野剛)は直前まで同棲していた女優祥子(さとうほなみ)が、映画監督桑山と心中したことに衝撃を受ける。栩谷はもう5年も映画を撮っていない。生活も困窮して、家賃も滞納している。

そんな栩谷が大家のところへ行った際、所有するアパートの住人が1人だけ立退に応じないので追い出してくれれば賃料を配慮すると大家に言われた。早速、部屋に行き交渉する。入居者の伊関(柄本佑)と押し問答した後で、伊関も映画に携わっていたと知る。気がつくと缶ビール片手に2人で語り合う。過去の女の話題になり、関わりをそれぞれ語り続けていく。


凡長になる部分も多いが、荒井晴彦作品らしい味わいが感じられた。
男女の性的絡みのシーンは多い。城定秀夫監督「愛なのに」でも大胆な濡れ場を演じるさとうほなみがここでも頑張る。
モノクロ映像でスタートする。心中して亡くなった祥子の葬儀でお焼香を拒否されたり、映画監督の通夜できびしいピンク映画の現状を映画仲間と語り合ったりするシーンが続く。ところが、回想シーンとなると、カラー映像にかわる。現在がモノクロで、過去がカラーだ。

妙な縁で出会った2人の女は同一人物の祥子だったのだ。延々と飲んで初めてわかる。この映画の時代設定は2012年で、伊関は2000年に祥子と知り合い、栩谷は2006年に撮影がきっかけで祥子と付き合う。それぞれが祥子と一緒に過ごす場面はカラー映像で語られる。よくある同棲物語だけど、それぞれのカップルの性の履歴をクローズアップする。

東京でもいくつものピンク映画館がなくなっているので、新作映画の需要がない。スタッフは仕事に困る。予算は50万円くらいしか出てこない。通夜のお清めで映画人が語り合う。最近出演頻度が高い川瀬陽太がケンカを別の映画人に仕掛ける。でも、横で見ている綾野剛演じる栩谷はボソボソと話しながら取り乱さない。同棲相手が別の男と心中したら何にも話す気はないか。

賃料滞納で大家に謝りに行った時、立ち退きをやってくれと言われる。入居者の伊関のところへ行っても綾野剛には凄みがない。ボソボソ話すだけだ。今まで来た人と違うねと妙なことに感心される。ずいぶんと綾瀬剛の映画観ているけど、タイプが違う。撮影中の荒井晴彦監督の仕草を意識したようだ。今回は濡れ場もこなす。


柄本佑は一時期ピンク映画を大量に観たことがあるとインタビュー記事で語る。なるほど。「火口のふたり」でも最近の「春画先生」でも濡れ場が多い。選んで出演しているのかな。さとうほなみとはじめての交わりでは童貞で、やっとのことでホールインだ。同居する中国人の若い子との絡みも含めて、繰り返し濡れ場をこなす。楽しそうだ。さとうほなみとの激しい性的絡みで前貼りはしているのであろうか?この映画では義父奥田瑛二も出演しているが、多忙な安藤サクラとはすれ違いになっていないだろうね。

さとうほなみは、「愛なのに」で初めて存在を知った。真面目そうな顔のわりにずいぶん大胆だなと印象づけられた。「愛なのに」映画芸術では昨年のベスト10に入っているので、当然荒井晴彦は知っているはず。オーディションで選ばれたと知り、意外に思った。柄本佑からアナルで交わろうと言われ、痛い痛いと応じるが、時が過ぎ綾野剛とはむしろ進んでアナルでいたす。性的成熟が徐々に進むところも示す。飲み屋のシーンで奥田瑛二に水をぶっかける。山口百恵「さよならの向こうに」をカラオケで歌う。特別上手いわけではないけど、2度観たので脳裏に焼きついて離れない。


映画が始まりヴァイオリンとピアノによる音楽のセンスがいい。まだ残っているんだなあという共同廊下のアパートが舞台。2人が語り合うアパートも昭和の部屋のつくりそのままだ。ロケ地は坂や階段が多い場所を巧みに選択。四谷荒木町のなくなった料亭の看板をそのまま映すので見覚えのある稲荷神社裏手の階段だとわかる。雨が降るシーンもそこで撮る。飲み屋自体は新宿ゴールデン街のどこかの店の中で、映している飲み屋街はゴールデン街じゃないのでは?新宿ゴールデン街、四谷荒木町いずれも自分のホームグラウンドなので親しみが深まる。


荒井晴彦が楽しみながらつくった映画という印象を受ける。ストーリーで観る映画ではない。欠点は多いが、映画のもつさびれた雰囲気は自分の好きな感じだ。さとうほなみはそれなりのボリューム感だけど、柄本佑演じる伊関と暮らす中国人の女の子とその友人はいかにもAVという感じのバストのボディだ。デイヴィッドリンチ監督作品で、乳輪の大きなボリュームたっぷりの女性の裸が登場するのを連想する。ピンク映画の色彩を根底に残す。荒井晴彦の苦笑いが目に浮かぶ。最後のさとうほなみの歌も好みの曲なのだろうか?しつこいけど、残る。

柄本佑のインタビュー記事を読むと、荒井晴彦「雨月物語」のような映画がとりたかったそうだ。ラストに向けて、もうすでに亡くなって存在しないさとうほなみ幻影を映して怪談的要素をもたせる。たしかに「雨月物語」での田中絹代の幻の姿を連想する。

後記 11/20
小説を読了した。主人公はデザイン事務所の経営者に変わっていたが、倒産寸前で街金のおやじに立ち退きを頼まれる。立ち退き交渉のセリフなどは映画とは同じだ。さすが、松浦寿輝の筆力はすごい。短編だけど、読み応えある。でも、今回の荒井晴彦の脚色は上手だったと思う。ピンク映画という言葉はどこにも出てこないけど、その設定で、しかも祥子の設定を含めてお見事だと言える。最後の場面は原作に忠実だった。ここを読んで、荒井晴彦は「雨月物語」を連想したのであろう。このように映像に具現化できてよかったと感じる。
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映画「法廷遊戯」 永瀬廉&杉咲花&北村匠海

2023-11-15 05:26:29 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「法廷遊戯」を映画館で観てきました。


映画「法廷遊戯」若手弁護士五十嵐律人が書いた法廷ミステリー小説深川栄洋監督が映画化したものである。永瀬廉、杉咲花と北村匠海の3人が司法修習生役で主役を務める。ジャニーズ系若手が主演の若者向き映画はあまり観ていない。スルーの予定だったが,時間調整での作品変更で観てみることにした。割と人気があるようだ。もちろん原作は未読。ベテラン俳優が脇を固めるとは言え,若手中心の配役でどういった法廷映画になるのか、若手の弁護士がどういった法廷の立ち回りを見せるのかまずはお手並み拝見という気分で観てみる。

いきなり,モノクロ画面で満員電車に乗り込もうとする乗客がいる中で,ぱったりとホームに倒れている男女を映し出す。何かあったようだ!ただ詳細はその場では伝えない。映画の最初に映し出される事件が、この3人の関係に大きく関わってくる。

その後,名門大学の法科大学院の学生たちが, 模擬法廷ゲームをしている場面に移る。バカでかい声を出している男子学生がいる。何かよくわからない。そのゲームを主導しているのは,在学中に司法試験に既に合格している結城馨(北村匠海)だ。ほぼ全員でゲームに参加する。


その後,殺人事件が起きる。弁護士になった久我清義(永瀬廉)が久しぶりに一緒に法科大学院で学んでいた馨に呼び出される。現地に行くと胸を刺され息絶えた馨と血だらけの織本美鈴(杉咲花)がいた。自分は殺していないという美鈴から弁護を引き受けるが、美鈴は黙秘権を主張して法廷出廷までなにも話さない。このままでは殺人罪になるのは間違いない。


最初の模擬法廷ゲームの場面は訳がわからないで進む。この辺りがノレない。
でも、訳もわからないゲームごっこかと思ったら、途中で殺人事件が起こる。しかも、女性が男性を刺している。その女性は返り血を浴びているのに、自分はやっていないと言い張る。周囲に人はいない。USBメモリーを清義に託すが、ロックがかかっている。見れない。証拠として出せるかどうかわからない。徐々に目が離せないストーリー展開になってくる。たぶん原作者五十嵐律人は数多くのミステリー小説を読んだと思われるネタをだしてくる。

訴訟王国アメリカの法廷ミステリー映画の傑作は多い。日本でも法廷ドラマはある。それらに比べると、法律の専門家が執筆しただけあるなと思わせる場面は多い。例えば、裁判長が仕切って、事前に検察側と弁護側が対峙する席の場面だ。この時点ではどう見ても被告に不利。どうして無罪を証明と聞かれても、被告には動機はないというだけだ。たしかに、動機を問われない窃盗犯とは違い、傷害では動悸は重要だ。でも弱い。

法廷開始前での事前の動きを映画で観ることはあまりない。あとは、洋画では見れない日本の法曹界独特の裁判官や検察官の立場に踏み込む場面だ。こうすると、検察側の立場が悪くなるなどの状況も作り出す。奥が深い印象を受けた。


ネットを見ると、若い人たちの評判がいいようだ。これはこれで良いことだと思う。いきなり初対面のごとく弁護側、検察側が対峙するのではないとか、再審請求が容易にできないとか、初めて知ることがたくさんあったんじゃないかな?ごく普通の法廷劇と違う見方ができる意義のある作品だと思う。見終わったあと、「90分台でここまで凝縮」的なコメントをいくつかネットで見たけど、このくらいに短くしなきゃいけないダラダラした映画が多すぎるのかも。

深川栄洋監督の作品って観たことがないけど、かなりの絶叫好きのようだ。杉咲花にしろ、大森南朋にしてもオーバーアクションだった。ただ、トリック的におもしろいけど、事前に起きた事件に絡むメンバーがこんな感じで同じ法科大学院で出会うかな?事前の事件後ももっと別の展開になったのでは?とも感じるところがあった。ビリーワイルダーの名作「情婦」までいかないけど、観客を驚かすためにちょっと出来過ぎの印象だけは持った。
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映画「正欲」 稲垣吾郎&新垣結衣

2023-11-12 08:27:27 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「正欲」を映画館で観てきました。


映画「正欲」朝井リョウの小説を岸善幸監督が映画化して,稲垣吾郎,新垣結衣,磯村勇斗等の出演者で描いた新作である。東京国際映画祭監督賞を受賞している。何よりまず新垣結衣が出ているだけで飛びついてしまう。星野源に奪われたことで,若者たちはショックを相当受けた。その気持ちは我々も変わらない。

稲垣吾郎も前作の今泉力哉監督「窓辺にて」での超長回しの演技はなかなか格好がついていた。それにしても次から次に新作に出る磯村勇斗の人気ぶりには驚く。内容はよくわかっていない中,早速映画館に向かう。

いくつものストーリーが同時進行する。
寺井啓喜検事(稲垣吾郎)の息子は小学校がイヤになっていた。毎日YouTubeを見ながら同世代の女の子が不登校でも幸せになっているのを見て,自分もそれでも良いかと父親に言い出す。似たような学校嫌いの子供たちが集まるNPOに参加して,息子はそこで見つけた友人とYouTubeのチャンネルを登録して,動画を公開する。父親はよく思っていなかった。


福山に住む桐生夏月(新垣結衣)はショッピングモールの寝具売り場で働いている。両親と暮らしているが,彼氏もいない。モヤモヤしている毎日の生活だ。妙に水フェチ的なところがあったのは,中学時代同級生だった佐々木(磯村隼人)と一緒に校庭の水飲み場の水を散水させた経験があったからだ。両親がなくなり,故郷に戻った佐々木と昔の同級生の結婚式で再会する。


学園祭実行委員としてダイバーシティフェスを企画した神戸八重子(東野絢香)は、ダンスサークルに出演を依頼する。そのダンスサークルに所属する諸橋大也(佐藤寛太)に八重子は好意を寄せる。諸橋は黙々とダンスに精を出し心を誰にも開かずにいる。


同時並行のいくつものストーリーを収束させる。
現代日本のアップデートな話題を巧みに映画としてまとめ上げていると思う。想像していたよりも良かった。


朝井リョウの原作は未読。彼の小説の映画化では,「桐島部活やめるってよ」「何者」「少女は卒業しない」の3作を見た。いずれもまだ若い朝井リョウが自分の学校生活での経験をもとに創作した作品と思っていた。IT化してきた現代の暗部に接近して今までの作品よりも朝井リョウの世界が広がっている感じを受けた。今後も現代若者の実態に迫ることを期待したい。

小学生にして不登校の子供たち,YouTubeに傾倒する子供たち,児童への性的関心の強い異常者。いずれも近年話題になる出来事である。大きく分けて3つのストーリーを1つに収束させるこの物語の映画化は容易ではないと思う。岸善幸監督の手腕が光る。監督の「あゝ荒野」は前編後編に分かれる位の長さとなり,寺山修司の原作の影響もあるが,さっそうと駆け抜ける前半に比べて後半は若干ダレる。それを思うと、実際の映像に具現化してこの時間にまとめたのは上出来だと思う。岩代太郎の音楽の使い方もうまかった。

登場人物に水フェチの性癖がある面々を登場させる。新垣結衣も磯村勇斗も水が流れるのを見るのを好む。自閉症の幼児は,公園の立水栓から水をジャージャー流すのを異常に好むことが多い。身内にいたのでよくわかる。今回の登場人物も人付き合いを得意としない明らかに自閉症の症状である。

一般に自閉症を扱う映画では異常に目をそらしたりする人物を登場させている。重度な患者ではない健常者と変わらないごく普通に生きている人たちは大勢いる。ダスティン・ホフマン主演の「レインマン」等の重症の自閉症映画と一線を引くが,根本的にはこの映画も自閉症映画である。


子供のYouTubeへの傾倒をここまで取り上げた映画は見た事がない。自ら作った動画に対する反応が不登校児童のよりどころになっている話である。中学受験が一部の生徒だけのものではなく、下手をすると低学年から塾通いをせざるをえない状況になっている。特に都市部の子供たちにとっては厄介な時代になってきた。ついていけない子供たちも多いだろう。,そのはけ口を何かに求めなければならない。YouTubeもその一つだろう。


少子化時代なのに子どもたちは大変だ。もし今の時代に生まれていたら,どうなっていたのか?戦争の影響もなく育った自分たちは良い時代に育ったのかもしれない。

新垣結衣の復活はうれしい。結婚しても瑞々しいし、相変わらずかわいい。今回は今までの役柄よりも普通ではない水フェチの女の子だ。水の流れに体が疼く。ベッドの周りが水で満たされていく奇妙なシーンもある。疑似恋愛もどきなのは「逃げ恥」と似ている。


稲垣吾郎は今回のジャニーズ事務所問題が起きるずいぶん前に離脱した。問題があるから早々逃げたのであろう。この映画では検事役で, 一番まともに見える人間の役である。着々と俳優としてのキャリアを築き上げている。磯村隼人は映画「月」で重度障がい者を虐殺する施設の従業員を演じて、演技の幅が広がった。ここでは,水フェチではあるが,前作ほど異常人物ではない。まだまだ活躍が期待される。
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映画「春画先生」 内野聖陽& 北香那

2023-10-14 19:02:34 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「春画先生」を映画館で観てきました。


映画「春画先生」塩田明彦監督の原作脚本で、江戸時代の春画を研究する先生をクローズアップする。まさに春画先生を内野聖陽、先生に弟子入りした女性を北香那、ちょっとエロな本の編集者を柄本佑が演じる。先週と比較すると、観てみたい映画が増えたけど、割と暗めの作品が多い。春画がテーマなら少しはマシだろうと推測して「春画先生」を選択する。15禁で露骨に性器が描かれる春画が出てくるのは想像した通りだった。

喫茶店でウエイトレスをしている弓子(北香那)は、お店で偶然知り合った春画の研究者の芳賀(内野聖陽)に自宅に招かれる。書斎で春画の数々を見て、その講釈を聞き関心を持ってしまう。気がつくと弟子入りして毎週芳賀家のお手伝いとして和装で働くことになる。芳賀先生の元には編集者の辻村(柄本佑)が出入りしていて、芳賀は熱烈な恋愛結婚をした元妻(安達祐実)への想いが消えないのを聞かされていた。弓子は密かに元妻に嫉妬していた。

芳賀は弓子を春画をめぐるいろんな集いに連れて行ってくれた。
出向いた金沢での春画品評会で、元妻の写真に瓜二つの女性がいるのに弓子は驚く。


想像とは異なる展開でおもしろかった。
あくまで春画研究に一途の先生と若い女性とがふれあう話だと思っていた。江戸時代の男女の性的交わりを描く春画を無修正で映像に映すので、15禁となったと想像した。春画では「海藻」をまわりに添えた「貝」を大きな「キノコ」のような男根が捻りこむのを露骨に見せる。しかし、それだけではなかった。内容的には往年の日活ポルノのグレートアップ版といった印象を受ける。「さよならくちびる」塩田明彦監督もエロ路線に入り込む。

北香那という女優を初めて観た。小ぶりでキュートなバストを気前よく見せてくれて、割と健闘している。今後映画での起用が増えそうだ。高畑充希によく似ているので、途中までそうかと思っていた。アレ?彼女ここまでやるのかな?違うのかな?と初めて気づく。春画研究に身を捧げている芳賀先生に好意を寄せている一方で、柄本佑演じる軟派な編集者がちょっかいをだし、意外に軽く身を許す。寛容性ありすぎのキャラだけど、自分は好きなタイプの女の子だ。演技はうまい。


「火口のふたり」の時ほどではないけど、絡みのシーンもあって柄本佑も楽しんでいる印象を受ける。プロデューサー役だった「ハケンアニメ」と似たような雰囲気だ。お尻を触ったりセクハラし放題でその昔はたまに上司でいたけど、普通だったら最近のサラリーマン社会ではアウトのキャラクターだ。この手のイヤな奴系の脇役が上手い。


大昔を知っている人からすると、安達祐実がずいぶん変わったなあと思う人もいるだろう。でも、初ヌードを披露してから随分とたつ。映画「花魁道中」で脱いだ時を連想させる。亡くなった春画先生の奥さんという存在で、途中まで回想シーンだけの登場かと思っていた。突然目の前に現れてからは一瞬、ヒッチコックの「めまい」のような匂いを感じる。元妻の双子の姉として登場してからは、まさにSMの女王様のようだ。気がつくと、同じ日活ポルノでも谷ナオミや麻吹淳子が出てくるような展開になり、徐々におもしろくなっていく。


内野聖陽は無難にこなしたという感じで、共演者の強い個性で引っ張った映画という印象をもった。白川和子は春画先生宅の家政婦役である。エロい話は何もない。城定秀夫監督の「恋のいばら」とかたまに出てくるよね。彼女の日活時代はあまり関心がなかったけど、元日活ポルノの女優さんが健在なのはうれしい。
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映画「アナログ」 二宮和也&波瑠

2023-10-09 05:22:04 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「アナログ」を映画館で観てきました。


映画「アナログ」ビートたけしの書いた小説の原作を二宮和也とヒロイン波瑠で映画化した作品である。予告編でだいたいの雰囲気がつかめて普通だったらスルーのパターンの映画だ。でも、世間のジャニーズバッシングに呆れきっている自分は二宮和也応援のつもりでつい観てしまう。こういうのもたまにはいいだろう。

デザイン設計事務所に勤める水島悟(二宮和也)が自分が内装のデザインを設計した喫茶店ピアノで1人の女性みゆき(波瑠)に出会う。意気投合した2人は毎週木曜日喫茶店ピアノで会うことを約束して,定期的に会うようになる。小さな貿易会社で働くみゆきは携帯電話を持っていなかった。その後,恋が徐々に実っていき悟は結婚の約束をしようと婚約指輪を買い、いつもの喫茶店で待っていたが,みゆきは来ない。携帯電話がないので連絡もつかない。途方にくれたまま,悟は大阪に転勤になってしまう。


ごく普通の作品であった。

ビートたけしの原作となれば,一定以上のレベルを期待した。でも,古典的なプロットのラブストーリーに終わってしまった。韓国映画のような手の込んだストーリーではない。寸前に見た「アンダーカレント」と比較すると,脚本に大きなレベル差を感じる。脇役を活かし切っていないのが弱い。

東宝の資本が入っているので,映画制作に金がかかっている印象を受けた。満席のコンサート会場におけるフルオーケストラ演奏など,普通の単館物ではここまで予算は出ない。映画としての体裁は整う。海辺の桟橋の映像などきれいに撮れている。

主演2人には好感を持てた。映画人になろうとしている二宮和也からすると,ライト感覚の映画だったかもしれない。店舗内装を中心にしたリノベーションの設計仕事の設定でスケッチが得意でサラッと模型を作ったりする。インチキ英語でわけのわからない上司との対比を浮かび上がらせる。学校時代からの友人に小学生程度の子供がいるのに独身。母親の面倒を見るからと言っても妙に不自然かも。

一方波瑠にとっては二宮との共演はいっそうの飛躍にはまたとないチャンスである。それにしても,現在の彼女は非常に美しい携帯電話を持たずアナログの彼女には秘密があった。村上春樹の小説のように彼女は失踪するが、ちょっとしたハプニングがあったという話だ。ちょうど10年前に濱田岳主演の「みなさんさようなら」という団地の外に出ない男の映画に出演していた。いい映画だった。そこで波瑠は濱田岳の幼少時からの腐れ縁の友人を演じる。その時と比べると30代になって格段に美しくなっている。


二宮和也のギャラで予算はかなり使ってしまうにしても,リリー・フランキー,筒井真理子,板谷由夏など現在活躍の映画人を起用する。加えて二宮の母親役に高橋恵子が登場する。でも、年老いた高橋恵子を見るのは若干忍びない。リリー・フランキー「アンダーカレント」のような存在感がないのはもったいない。


それにしても現在のジャニーズバッシングには腹立たしいものを感じる。マスコミ各社の発言及び会見へのバッシングはちょっとひど過ぎる。言論の自由は守らなければならないが,図にのっている印象を受ける。

聖職者の少年への性的虐待が映画の題材になることがある。「スポットライト」がその一例だ。今回のジャニーズスキャンダルもその要素に近い感じがしている。世の中には少年好きの地位が高い変態男っているもんだ。人生でも数回見てきた。なくなったジャニーさんもその1人であろう。少年イジリについては呆れるばかりである。

ただジャニーさんはもう亡くなった人である。性的虐待に対する補償については対応してもらいたい。でもジャニーズ事務所のタレントには罪は無い。これでいろんな仕事をから干してしまうのは理解しづらい。まさに日本人の同調性が生んだ愚かな話であろう。

あと今回改めて呆れたのは会見でのNGリスト問題である。まっとうな社会人であれば,危機管理のために集団での会見があるときにはこのような注意リストを用意するのが当然である。例えば一般株主が参加する上場会社の株主総会では,会社に対して不満を持っている株主のリストを事前に集めて,その株主が質問するであろう質問に模範回答例を用意する。まず役員だけで回答の練習をする。その後会場で社員株主含めて総会進行の予行練習をするのがごく普通である。社員株主は懸命に拍手をする。今回は会見までそんな余裕は無い。リストを用意して臨んだのは当たり前の話だと思う。

普通にビジネスを知っている人ならそんな事は当然だと思うけれど,非難するのはどうかと思う。橋下徹が,こういったNGリストを用意するのは当たり前だと発言している。自分は改めて橋下徹はまともだと思った。いずれにしても日本人は狂っている。マスコミ及びSNSに変な言論誘導されないように気をつけたい。旧ジャニーズ事務所のタレントたちが,今まで通り日本映画界で活躍することを希望する。
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