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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「アイアンクロー」 ザック・エフロン

2024-04-10 20:25:04 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アイアンクロー」を映画館で観てきました。


映画「アイアンクロ-」はプロレスラーの鉄の爪フリッツフォンエリックと4人の息子との物語である。自分と同世代か少し下までの少年たちには、フリッツフォンエリックの存在はかなり強烈なものがある。馬場、猪木時代の日本プロレスに再三来日して、我々少年たちを恐怖に陥れた存在だった。プロレスごっこをすると、アイアンクローをやる少年は多かった。題名自体にグッと引き込まれてしまう。映画館内も自分と同世代か上の男性が目立つ。同じような思いで来ているのであろう。


1960年代から70年代にかけて、プロレス界で一世を風靡した鉄の爪フリッツフォンエリック(ホルトマッキャラニー)、は,息子3人をプロレスラーに育てあげた。1980年代次男ケビン(ザックエフロン)、 三男デビット(ハリスリキンソン), 四男ケリー(ジェレミーアレンホワイト),五男マイク(スタンリーシモンズ)は世界の頂点を目指していた。しかし,デビットが日本でのプロレスツアー中に急死する。さらにここから悲劇に見舞われる。フォンエリック家は祖母の血筋の名前であるが,呪われた家族と言われていた。


まさに呪われた家族の物語である。
1980年代になると,自分はあまりプロレスを見ていなかった。それなので、あのフリッツフォンエリックの息子たちがここまでプロレス界で活躍していることを知らなかった。しかも、亡くなったケリーはNWAの王者にもなっている。息子たちが次々と亡くなるのには驚いた。

次男のケビンを中心にストーリーが展開する。ザック・エフロンはいかにもプロレスラーらしく、体を鍛えて、この映画に登場する。プロレスファイトのシーンも多い。NWA世界チャンピオンハーリーレイスやリックフレアも出てくる。両者との戦いもすっきりした形にはならない。プロレスファイトのシーンで高揚感を覚えることもほとんどない。ただただ,悲劇的な家族のことを描き出す。


映画自体は,最後まで飽きずに観ていける。ひいき目もあるかもしれないが、父フリッツ役ホルトマッキャラニーの好演が目立った。それにしても、これって本当に実話なのかと思ってしまうような悲劇であった。

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映画「オッペンハイマー」クリストファーノーラン&キリアン・マーフィー&ロバート・ダウニー・Jr

2024-04-01 17:06:52 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)

映画「オッペンハイマー」を映画館で見てきました。


映画「オッペンハイマー」は、本年度アカデミー賞作品賞に輝いた原子爆弾製造のリーダーを務めたロバートオッペンハイマー博士の物語である。クリストファーノーランがメガホンを取る。アメリカの公開からかなり遅れての日本公開である。下手すると同時公開がある位の時間的感覚なのに、今回は原子爆弾が題材になっているだけでせっかくの傑作をようやく見れた。3月は飲み会だらけで,映画をあまり見れなかった。本当の最終日にようやく観れた。

アカデミー賞受賞の主演男優賞のキリアン・マーフィー,助演男優賞ロバート・ダウニー・Jr、いずれもハイレベルの演技で当然の受賞であった。キリアンマーフィーは、特徴ある目の演技が素晴らしかった。オッペンハイマーと敵対するルイスストローズ役をロバート・ダウニー・Jrであると一瞬でわかる人は映画ファンでも少ないだろう。


3時間ずっと音楽がなり続ける。不穏な音楽だ。流れるムードは暗い。
原子爆弾がテーマではあるが、よくよく見ると,マッカーシズムの赤狩り摘発の映画と言ってもいい。東西冷戦に至る前、共産主義に強い対抗意識を持った戦後アメリカ史を理解しないで,この映画を理解できるのかなと言う感じもした。オッペンハイマーは、いらぬ疑いをもたれた被害者である。


原子爆弾製造の過程のプロセスと,原子爆弾の実験, 投下にもっとストーリーのウェイトがあると思っていた。オッペンハイマーがもともと共産主義者だったこと,組合結成に入れ込んでいたことなどを通じて左翼思想者だった事実が強調される。戦後ソ連が原子爆弾を開発する。それに対して,オッペンハイマーがソ連のスパイではないかと疑われた。そのための公聴会だ。映画を通して、その公聴会の映像が映る。周辺には確かにソ連のスパイが存在した。オッペンハイマーの妻は元共産党員であり,エロい場面もあるフローレンス・ピュー演じる浮気相手も共産党員だ。要はかなり前に共産主義者だった人まで摘発してしまおうとするマッカーシズムの怖さである。赤嫌いの自分が見てもやり過ぎだ。

いくつかの出来事が,時間差で映し出される。頭が混乱する観客も多いだろう。戦後の公聴会でのオッペンハイマーのパフォーマンスと, 1942年原爆製造の「マンハッタン計画」が始まってから原子爆弾完成までの映像が交差する。

コンピューターを作り上げ、原子爆弾製造にもにも関わった物理学者フォンノイマンの伝記を繰り返し読んでいたので,原爆投下までの流れは一応わかっているつもりだ。フォンノイマンはバリバリの赤嫌いだ。逆にオッペンハイマー共産主義に入れ上げていた過去がある。対照的なので、ファンノイマンの伝記ではオッペンハイマーの存在は英雄ではない。水爆の開発に関わった人たちに、オッペンハイマーに不利な証言をした連中がいたようだ。


原子爆弾の後に,より強い破壊力を持った水素爆弾製造に至るときに,オッペンハイマーが反対していた事は本を読んで知っていた。原子爆弾投下で一躍ヒーローとなったオッペンハイマーをトルーマン大統領がホワイトハウスに招いたときに、その発言に、あいつは二度と呼ぶなと言ったシーンもある。水爆製造反対だからといって,ソ連寄り、共産主義者とは違う。


この映画はオッペンハイマーの苦悩を示すものとなっていると想像はできた。確かに,原子爆弾が広島に投下された時、歓喜の声を上げるシーンはある。日本人はむかつくだろうと想像したわけだ。でも,原子爆弾投下完了の時点でも自分がリーダーとして爆弾を作ったのにオッペンハイマーは良心の呵責に悩まされている。それなのに、こんなに世論を気にして、この映画を公開させない日本映画興行界の知的レベルの低さを感じた。

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ドキュメンタリー映画「リトル・リチャード アイ アム エヴリシング」

2024-03-06 20:37:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「リトル・リチャード アイ アム エヴリシング」を映画館で観てきました。


映画「リトル・リチャード アイ アム エヴリシング」チャックベリーと並ぶロックンロールの帝王リトル・リチャードの人生を語るリサ・コルテス監督のドキュメンタリー映画である。

ビートルズに関心を持ち始めてすぐ典型的ロックンロールの曲「ロングトールサリー」が好きになり、リトルリチャードの名前を知った。いわゆるオールディーズと言われるロックンロールミュージックで誰もが知っている曲を作ったのがチャック・ベリーであり,リトル・リチャードである。

初期のビートルズは2人の歌を自らアレンジしてアルバムに収めていた。ロック界に影響与えたなんて宣伝文句が飛び交っているが,このリトルリチャードだけはまさに本物である。そんなリトルリチャードの人生を描いたドキュメンタリーとなると見てみたくなる。


編集力に優れた音楽ドキュメンタリーである。
ものすごい数のフィルムから映像を的確に引用し,それぞれをコンパクトにわかりやすく編集してまとめている。リトルリチャードの音楽人生がこの映画を見るだけでよくわかる。気分が高揚する映画である。

映画ではリトルリチャードの生まれてからの家族との関わりやその後音楽界で這い上がっていく履歴、そしてヒット曲を出してからのリトルリチャードの姿を追っていく。ポールマッカートニー,ミックジャガーといったロック界の巨人の証言なども交え、いかにリトル・リチャードがロック界に大きく影響を与えたのかも示している。。

若き日にコンサートツアーで一緒だったミック・ジャガー「ロックンロールは彼が始めた」と証言し、ポール・マッカートニー「歌で叫ぶのはリチャードの影響」と語る。この映画でリトルリチャードの歌っている歌詞がかなり卑猥だと言うことを知った。これはこれでいろんな影響与えているかもしれない。


ゲイだったリトル・リチャードが偏見を持たれた人生を送った。リトルリチャードと言えばあのオカマっぽいメイクやファッションが印象的である。ジョークを飛ばしまくりで,大きな口を開けながらボクシングのモハメッドアリのように大口を叩く。見ようによっては,バットマンのジョーカーのようにも見えてくる。


リチャードに不利だった契約書にサインして後に作曲して得られる印税がもらえない悲劇も映画の中で触れる。これには驚いた。ともかくオールディーズの曲がライブハウスでかかるとリトルリチャードの曲が流れる割合はむちゃくちゃ多い。ビートルズだけでなくエルビスプレスリーやパットブーン、クリーデンスクリアウォーターリバイバルなど彼の曲のリメイクを歌っているアーティストは多い。金に困った話にも触れる。契約書の読み込みさえ間違っていなければ本来は巨万の富を築いたはずだったのに気の毒である。

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映画「ダム・マネー ウォール街を狙え」 ポール・ダノ

2024-02-03 04:59:06 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ダム・マネー ウォール街を狙え!」を映画館で観てきました。


映画「ダム・マネー ウォール街を狙え!」は2020年末のゲームストップ株騒動を描いたポール・ダノ主演の新作である。女子フィギュアのお騒がせ女を描いた「アイ,トーニャ」クレイグ・ギレスピー監督がメガホンをもつ。期待できそうだ。株式投資に関わる話とあってか、アメリカンコメディでは珍しく男性陣の観客が目立つ。

大発会こそもたついたとは言え、年始から全般的に日本株も好調である。ただ、大型株が買われる正統派の相場なので、ちょっとこの映画の仕手株騒ぎとは違うかも。それでも、株好きはついつい劇場に向かうだろう。


2020年マサチューセッツ州の会社員キース・ギル(ポール・ダノ)は、全財産の5万ドルゲームストップ株につぎ込んでいた。実店舗でゲームソフトを販売するゲームストップ社は倒産間近のボロ株と見なされていたが、キースはネコのTシャツ姿で動画を配信し、ネット掲示板の住民に訴える。すると、個人投資家がゲームストップ株を買い始め、ジワリと上昇した後に大暴騰となる。

ゲームストップを空売りしていたヘッジファンドの主は大慌て。ゲームストップ株の大暴騰のニュースは、連日TVメディアで報道され、全米を揺るがす社会現象に発展する。キースは利食いせず、数百万人のちょうちん筋も持ちづけた時に事件が起きる。


傑作と言うわけではないが,ひたすら面白い。
言葉遣いも汚くて,現代アメリカ映画らしい荒っぽい作品だ。ネットでゲームストップ株の推奨をし続けるキースだけに焦点を合わせるわけではない。ゲームストップ株をスマホで買って一喜一憂するネット投資家も、ゲームストップの店員や女子学生、看護婦など数多く登場する。最初は静かに買い始めた後で,強い上昇基調に利食いをためらっていく構図が面白い。同時に, 100億ドル以上の運用資産を持っているヘッジファンドの投資家が完全にナメきっていたゲームストップ株の暴騰に唖然とする姿も見ていて面白い。


自分自身が大ファンであるボールダノのDJパフォーマンスが実に楽しい。またより面白くさせるためにセス・ローゲンなどのコメディーの人気俳優を登場させる。新NISAが始まって,シコシコ積み立て投資をし始めている人には,この映画の真意がわかるかなぁと言う素朴な疑問はある。信用取引をやったことない人には空売りの踏み上げをくらう精神的苦痛はわからないだろう。

⒈空売りの踏み上げ
信用取引での空売りは,証拠金を預けて株を売って,安いところで買い戻して利益を得る。それ自体はなんとなくわかるであろう。しかし、証拠金の担保割れ,すなわち追証発生の原理を理解していないと本質なところはわからないのではないか。

結局株で資産を失うのはレバレッジが絡むものである。100万円で2割下がっても20万円の損失で済むが, 100万円の証拠金で300万の株を買い2割下がったら証拠金は60万減り40万になるわけである。しかも売りの場合損は無限大である。担保割れになって,追証が発生して追加金を入れなければいけない苦しさは味わったものでないとわからない。

それにしても,日本と違いストップ安あるいはストップ高のないアメリカでは,青天井に急上昇あるいは下落していく。ゲームストップの売り方は肝を冷やしているだろう。黒木亮の小説にも「空売りファンド」の話が出てくる。ヘッジファンドは別にインチキをやっているわけではない。潰れそうな株を売り浴びせて倒産寸前に買い戻す正当な商行為なわけだ。ここでも大富豪たちがヒヤヒヤしている場面が数多く映って,観客の笑いを誘っていた。


⒉SNSで動く買い方
ポールダノが演じているのは実際のキースのパフォーマンスを真似していたのであろう。YouTubeの画面の前でパフォーマンスをしてゲームストップ株がいかに素晴らしいかを語っていく。それに対しての支持者が数多く出てくる。当初は数倍上がっただけだった。ただ、それだけでも凄い話だ。

狂信的支持者が一気に増えていく。買い方が何百万人と言うわけだ。ボリンジャーバンドと言う株価分析がある。その分析の中でバンドウォークという急上昇場面がある。2標準偏差以上の移動平均との乖離が続く。いわゆる偏差値で言えば70から80以上の乖離場面がずっと続く世界だ。

チャートを確認していないが,ゲームストップ株にとっては超バンドウォークの極致の域に入っていたのであろう。今年入ってすぐの日経平均もこのバンドウォークの域に数日入っていた。上昇し始めると止まらず、逆張りが一気に持っていかれる世界だ。


素人とプロ投資家の対決と映画宣伝でしたのは正直大げさな気もする。上昇しているときに売らない投資家だけ映画で取り上げたけれども,おそらくはかなりの投資家が利食いを繰り返して儲けたのではないか。一般投資家を先導しているキースは自ら公表している手前利食いができなかった。やはりええカッコしいで目立ちすぎはいけないと感じる。
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映画「小説家との旅路」 マイケルケイン

2024-01-24 17:43:14 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「小説家との旅路」(原題Best Sellers)は2021年製作の日本未公開のカナダ映画である。


以前はTSUTAYAのDVDコーナーに日本未公開の掘り出し物がいくつかあった。近所のTSUTAYAが潰れ、めっきりそういう作品を見なくなった。今回Netflixの一覧画面を見ているときにマイケル・ケインの主演作品「小説家との旅路」を見つけた。こんなの見たことないやと思い,やはり日本未公開だった。本がテーマなのでなんとなく話に乗れそうな感じを覚えたので見てみる。いい感じだった。カナダ人女性リナロースラーが監督で、復活したベストセラー作家マイケル・ケインが演じ,出版社の女性社長をオーブリー・プラザが演じる。

親が経営していた出版社を引き継いだルーシー社長(オーブリープラザ)は,経営難を打開しようと父と組んでいたベストセラー作家ハリスショー(マイケルケイン)の小説を出版する。そして,本を売り込むためにトークショーなどで地方をまわるブックツアーに出る。ところが、人嫌いのハリスは方々で突飛な行動を起こしルーシーを戸惑わせる。

ハートウォーミングなロードムービーだ。
掘り出し物のヒューマンドラマである。
恥ずかしながら「ブックツアー」と言う言葉を初めて知った。日本でも出版記念でサイン会を書店で著者が行うことがある。「ブックツアー」は地方のどさ回りをして著者自らプレゼンテーションするプロモーションを行う意味だ。海の向こうではごく普通に行われている作家の仕事のようだ。


まさに偏屈な老人の典型のようなハリスは、奇怪な行動をとる。酒のボトルが離せない。ルーシー社長も酒でハリスを釣ってブックツアーにでる。ハリスは出版レセプションでNYタイムズの書評家を脅したり、自分の本に放尿したりメチャクチャだ。抑えるルーシー社長が大慌てだ。でも突拍子もない振る舞いがSNSで評判になり本は売れる。公開当時は88歳だったマイケルケインが,オーブリープラザと絶妙なコンビを組んでいる。

残念ながらマイケルケインは直近に俳優業からの引退を発表した。助演男優賞で2度アカデミー賞をとっている名優だ。「アルフィー」「ミニミニ大作戦」の主演作は1960年代だ。戯曲の映画化「リタと大学教授」も印象に残る。直近では「サイダーハウスルール」バットマンの執事のイメージが強い。年齢からしたら引退は仕方ないと思うがクリントイーストウッドやウディ・アレンなど映画界には長寿な人たちがずいぶん目立つものだ。

マイケルケインと一緒にブックツアーに出るオーブリープラザもベテラン相手に一歩も引かず良かった。ラブコメの人気女優もドタバタに付き合わされたいへんだったが、終わり方は悪くない。一方で年老いたマイケルケインも自分の年齢の半分以下の若い女優や女性監督を相手にボケたふりをしながら楽しんでいるように見える。
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映画「サンセバスチャンへ、ようこそ」 ウディアレン

2024-01-21 11:14:26 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「サンセバスチャンへようこそ」を映画館で観てきました。


映画「サン・セバスチャンへ、ようこそ」は久々日本公開のウディ・アレン監督脚本のコメディ作品である。いろんな問題で干されているウディ・アレンだけれども,自分は大好きだ。新作をずっと心待ちにしていた。今回の舞台はスペイン,アメリカから映画祭に来ている映画の元大学教授が主人公だ。主演のウォーレスショーンは初期のウディ・アレン作品から出演している名脇役だ。自分にはルイマル監督「my dinner with Andre」の主演としての印象が強い。ここではウディアレン監督の分身のような存在だ。フランス,スペイン,ドイツの名俳優たちが脇を固める。

かつて大学で映画を教えていたモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は、今は人生初の小説の執筆に取り組んでいる。映画の広報の妻スー(ジーナ・ガーション)に同行し、サン・セバスチャン映画祭に参加。スーとフランス人監督フィリップ(ルイ・ガレル)の浮気を疑うモートはストレスに苛まれ診療所に赴くはめに。そこで人柄も容姿も魅力的な医師ジョー(エレナ・アナヤ)とめぐり合い、浮気癖のある芸術家の夫(セルジ・ロペス)との結婚生活に悩む彼女への恋心を抱き始めるが…。(作品情報引用)


久々ウディ・アレン作品に出会えてうれしい。
例によってウディ・アレン監督自らの分身とも言える男に独白させるシーンが多く,独りよがりなテイストが強い。その分身は映画祭に来ても現代の映画にはなじめない。妻の浮気を疑って悶々とする一方で診察を受けた女医に心をときめかして近づく。分身の主人公と一般人のセリフがかみ合わないのもいつも通りだ。ただ、ウディ・アレン作品らしくて良い。

それにしても,バックに映るサンセバスチャンの街の美しさに驚く。尋常じゃない。海辺の街並みが色鮮やかだ。デイヴィッドリーン監督の「旅情」のように観光案内的にバックの風景にこだわって映像コンテを作る。つい先日ブログアップした「ミツバチと私」も同じスペインのバスク地方が舞台だった。この映画は海辺が中心で、「ミツバチ」がの方だ。映画はいいね。簡単にはいけない所に連れて行ってくれる。

主人公の妻役のジーナ・ガーションはかつてポールヴァーホーヴェン「ショーガール」やウォシャウスキー姉妹「バウンド」のようなエロチックなテイストを持つ作品で存在感を示した。今でもフェロモンムンムンでボリュームたっぷりだ。浮気性の奥さんはフランスの人気俳優ルイガレルが演じる若き映画監督と逢引きをする。夫に関係を問われて、最初は「何もない」と言ったのに、「実は1回、いや2回」と思わず言ってしまうのが笑える。



診療所の魅力的な女医を演じるエレナ・アナヤはペドロアルモドバルの「私が生きる肌」「トークトゥハー」で主演を張った。解説を見るまでまったく気づかなかった。主人公はぞっこんになり、病気でもないのに仮病を使って強引に近づく。夫の浮気にわめき散らすシーンでは荒っぽいスペイン語だ。ペドロアルモドバルの映画を観てからずいぶん経つが、エレナ・アナヤは相変わらず魅力的だ。


ウォーレスショーンはハーバードとオックスフォードで学んだインテリだ。俳優でもあり、脚本家でもある。若い時からはげている。「死刑台のエレベーター」のルイマル監督「my dinner with Andre」は日本未公開だけど、アメリカの知識人に人気が高い1981年の隠れた名作だ。マンハッタンのレストランで繰り広げられるダイアログ観念的なセリフが続く。自分の高校の恩師から自ら翻訳した字幕付きのvideoを頂いて観た。むしろブ男の部類に入るウォーレスショーンもスペインで美人女優に囲まれさぞかしご満悦だったろう。

どんな映画がオススメと言われたウォーレスショーン演じる主人公は稲垣浩監督「忠臣蔵」と黒澤明「影武者」を薦める。これには驚く。薦められた方は唖然としていた。


最後に向けては、イングマールベルイマン監督の「第七の封印」の名シーンである死神とのチェスを再現する。ドイツのアカデミー賞俳優クリストフ・ヴァルツ死神を演じて主人公と一局指す。出てきた時には思わずゾクッとする。死神にチェスで負けたらあの世行きだ。他にも「男と女」「勝手にしやがれ」など古い映画などからの引用が多い。ベテラン映画ファンはその流れにすんなり入っていけるけど、若い人はわけがわからず戸惑うのでは?
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映画「ファーストカウ」

2023-12-26 06:08:47 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)

映画「ファーストカウ」を映画館で観てきました。

映画「ファーストカウ」は19世紀前半西部開拓途中のアメリカオレゴンでの出来事を描いた女性監督ケリー・ライカートの作品である。ケリー・ライカート監督作品は初めて、アメリカでは2019年に公開されている。普通だとスルーのパターンだが、評論家筋の評判が良い。他にイマイチな作品ばかりなので選択する。

 

オレゴンの田舎町に、料理人のクッキー(ジョン・マガロ) と中国人のルー(オリオン・リー)が流れ者のように来て毛皮業に足を突っ込む。気のあった2人は何か商売をやろうと企んでいた。

仲買人のファクター(トビー・ジョーンズ)が購入した一棟の乳牛に注目して、こっそり乳牛から乳をとり、材料を混ぜ合わせてお菓子にする。市場で売り出すと、おいしいと評判になり連日行列だ。うわさを聞きつけ乳牛の持主の仲買人も買いに来るのであるが。。。

 

評判ほど大きな感動は特になかった。

確かに独特のムードは悪くはない。でも、題材がある種の「泥棒」なので、潔癖症が多い日本人でも自分にその自覚のある人は見ない方がいいだろう。泥棒行為が見つかるかどうかの話に過ぎない。同じような題材を中世や近世以前の日本を舞台にしても作れる話だ。映画の結末を「寛容」という一言で片付ける評論家の神経を疑う

 

開拓途中のオレゴンといっても、よくある西部劇に出てくる町の域に達していない。もっと原始的だ。一時代前の西部劇だと、原住民と開拓民の対決がテーマだった。ここでは共存共栄で生きている。一世紀時代はズレるが、マーチンスコセッシ監督「キラーズオブザフラワームーン」に出ていたリリーグラッドストーンが似たような役柄で出演している。

 

コンビを組んだ2人は身寄りもなく金もない。前半はかなり沈滞しているムードだ。

気がつくとウトウトしてしまう。

色んなアイデアを2人が思いつくけど、実現不可能となった時にクッキー(ドーナツと言ってもいい)を作ることを思いつく。ここからは話が引き締まってくる。目がシャキッとして飽きのこない展開にかわる。

 

深夜に牛のいる邸宅に忍び込んでも誰も気づかない。乳を絞られるは大きな鳴き声を出さない。静かだ。こっそりととった乳をベースにドーナツをつくって市場で売ると大ウケだ。誰もがおいしいと言って行列もできる。材料は?と聞かれて、中国の秘伝として乳牛の乳とは当然言わない。2人はもっと儲けてやろうと、連日深夜の乳とりを欠かさない。

そうしているうちに、牛の所有者の仲買人が噂を聞きつけ、食べに来る。故郷英国の味と似ていると大喜びで、屋敷に招待してブルーベリーを混ぜたお菓子をつくる。そろそろ潮時かと思っても、やめない。そこでミスが起きる。バレてしまうのだ。

実はそれだけのストーリーだ。

ただ、中国でも北部出身のルーが広州からの貿易船に乗って、ピラミッドを見ながら欧州経由でアメリカに向かうセリフの事実がありえるとは思えない。映画作品情報記載の1820年代にスエズ運河は当然ない。1840年のアヘン戦争前の中国は世界中から開国と自由貿易を迫られてもびくともしない時代だ。こんな中国人がいるのかな?と思ってしまう。最近のアメリカ映画は人種を均等に入れることにこだわりが強い。アジア人を強引に入れ込む結果として不自然な設定になったのでは?

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映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」 ティモシーシャラメ

2023-12-12 05:06:17 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」を映画館で観てきました。

 映画「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」「チャーリーとチョコレート工場」ジョニー・デップが演じた工場主ウィリー・ウォンカの若き日の物語である。メジャーへの道を歩んでいるティモシー・シャラメがウォンカを演じる。監督はポール・キングだ。

テイムバートンの長いキャリアの中でもジャックニコルソンがジョーカーを演じた「バットマン」と同じくらい「チャーリーとチョコレート工場」が好きだ。それだけに、監督と主演が代わってどんな作品になるか楽しみだった。ミュージカルの要素も強いようだ。ファンタジー系を観ることは少ない。今回はと観に行く。

ウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は亡き母(サリーホーキンス)との約束、「世界一のチョコレート店を作る」という夢を叶えるために、チョコレートの町にやってきた。彼が作る魔法のチョコは、瞬く間に評判に。しかし、それを妬んだ町のチョコレート組合3人組に目をつけられてしまう。

強欲な宿の主人(オリヴィア・コールマン)や小さな紳士ウンパルンパ(ヒュー・グラント)にもひどい目にあわされる。以前からマダムに働かされている人々や孤児の少女ヌードル(ケイラ・レーン)の助けでチョコレート作りをひっそりとおこなう。

単純なファンタジーストーリーだけど、歌と踊りをちりばめて美しく楽しい映像を見せてくれる。色彩設計も楽しめる。
「チャーリーとチョコレート工場」ティムバートンらしい悪夢の世界が映画に漂っていた。ジョニーデップ演じるウィリーウォンカ変わり者の謎の経営者であった。ティモシー・シャラメという日本流で言えばジャニーズ系の人気者を起用して、めっきり明るくなった。

ウォンカにアクの強さはない。毒の要素は、あくまでライバルチョコレート店の3人の店主とホテルオーナーに転化している。悪夢の世界もいいけど、好青年のイメージをもつティモシー・シャラメには似合わない。前回イヤミな少年少女もいたし皮肉めいた部分があったけど今回はない。子どもが観ても十分楽しめる。


映画を観ていて、次から次へとアカデミー賞級の英国の名優が登場するのに驚いた。しかも、悪役を押しつける。思わず、この作品が英国製作の映画でティモシーシャラメも英国俳優だったっけと思ったくらいだ。オリヴィア・コールマン「女王陛下のお気に入り」自体が、普通ではない女王様だし、今回の悪役ぶりが似合う。本年公開の「エンパイアオブライト」では若干の変態要素を持っていた。ひと癖ある役柄をこなすのはさすがオスカー女優の貫禄である。


逆にサリーホーキンスはウィリーウォンカにとって今は亡き優しいお母さん。彼女も個性的な役柄を演じることが多いけど、今回は割と普通だ。主演作「ロストキング 500年越しの運命」は本年公開作品の中でも自分のベスト上位である。目標に向けてひたむきに進む女性だった。今回はひたむきさは息子のウィリーウォンカに譲る。


加えて、久々に元ラブコメディの帝王ヒューグラントを観た。個人的に左利きのゴルフプレイヤーであるフィルミケルソンに似ていると思っていたけど、今回は小人でわからないなあ。この振る舞いだけは観ていて退屈になる。途中で味方だか敵だかわからないけど、最後は味方。あとはおかしな神父になりきるミスタービーンことローワン・アトキンソンが登場する。ただ、彼独特の個性が見せつけられる時間が少ないのは残念。それにしても、英国の主演級をよくかき集めたものだ。
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映画「マエストロ レナードバーンスタイン」 キャリーマリガン&ブラッドリークーパー

2023-12-10 18:12:16 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「マエストロ その音楽と愛と」を映画館で観てきました。


映画「マエストロ」はブラッドリークーパーが名指揮者かつ作曲家であったレナード・バーンスタインを演じたNetflix製作の新作で自らメガホンをもつ。マーラーの5番がバックで流れるモノクロの予告編のセンスがよく、キャリーマリガン演じる妻との語り合い場面がよく見える。予告編を観れば、説明がなくても、ブラッドリークーパーがレナードバーンスタインを演じているのがわかる。そっくりになるようにメイクしている。

このブログに登場する回数は、ブラッドリークーパー,キャリーマリガンともに奇遇にも11回目である。2人ともメジャーに這い上がってきた。もちろん2人の共演は初めてである。

1943年カーネギーホールのコンサートでブルーノワルターの代役としてニューヨークフィルの副指揮者だったレナードバーンスタイン(ブラッドリークーパー)が代役を務めることになりキャリアが開ける。ユダヤ系の父をもつバーンスタインはミュージカルの作曲家としても活躍していた。ホームパーティで妹の友人のチリ出身の俳優フェリシア(キャリーマリガン)と知り合い恋に落ちる。

時は流れ、レナードバーンスタインは名声を高め、フェリシアとの男1人、女2人の子どもが大きくなっていた。一方で仕事仲間の男性とバーンスタインが接近している姿を見てフェリシアはいい顔をしていない。世間でもバーンスタインの男色系の噂が流れるようになっていた。

レナードバーンスタインのウラの一面をクローズアップする。
想像以上に見どころが多く、十分堪能できた。

音楽ファンはNetflixで見れるとケチらずに映画館の大画面で観るべきであろう。


センスの良い予告編を見るだけでは、50年代のモノクロ映画のような肌あいだと思っていた。レナードバーンスタインの若き日をモノクロで、中年以降をカラーの画面で見せてくれる。カラーの画面自体も解像度を落として70年代の映画を思わせるトーンだ。映し出す建物のオーセンティックなインテリアがゴージャスで、ロケハンにも成功して背景も美しい。コンサートホールも皆タキシード姿で正装だ。


演奏や舞台の場面は当然すごいが、1番の見どころは、キャリーマリガンとブラッドリークーパーのトークの絡み合いである。掛け合いがリズミカルでまさに職人芸の域だ。若き日のラブトークだけでなく、結婚倦怠期での罵り合いと両方である。さすがアメリカの超一流俳優の共演だと思わせる。エンディングロールのクレジットトップはあえてだと思うが、キャリー・マリガンである。闘病シーンも巧みに演じる。

映画ではバーンスタインのバイセクシュアルな振る舞いに触れる。若き日のレナードバーンスタインのところへ、ニューヨークフィルの音楽監督のロジンスキーから臨時指揮者依頼の連絡がある。その時、バーンスタインは裸で男性とベッドを共にしている。その場面を観て、初めてバーンスタインにゲイの要素があることを知る。それが、映画のストーリーを追うごとにエスカレートする。今と違って同性愛がタブーとされた時代だ。当然、妻のフェリシアの苦悩を追っていく。

映画で流れる曲の数々は,ブラッドリークーパーが選曲したという。センスある選曲だ。予告編で流れるマーラー5番は一度だけ。「ウエストサイドストーリー」もあの緊張感あふれるプロローグだけだ。

ミュージカルの場面やコンサートホールで指揮する場面もあっても、女性のオペラ歌手を従えてオーケストラを指揮する場面がこの映画の一番のハイライトであろう。レナードバーンスタインを意識したブラッドリークーパーの大げさな指揮ぶりも迫力がある。前半、ブラッドリー本人が連弾でピアノを弾いている場面が出る。リアルに鍵盤を叩いている。音楽的素養を感じた。


自分がクラシックを聴くようになった70年代前半の中学生の頃、レコード店のクラシックのコーナーでは,カラヤンのポスターがやたら目立ったものだ。それに対抗してCBSソニーがレナードバーンスタインを徹底的に売り込んでいた。4チャンネル録音のレコードもあった。

中学の同級生に高校生の兄貴がいて、マーラーが大好きだった。友人の家に行った時兄貴がレコードコレクションを説明してくれて影響を受けた。マーラーの指揮者はレナードバーンスタインだった。その兄貴は添削のZ会のペンネームもマーラーにしていた。映画「ベニスに死す」でマーラーの5番が全面に流れた後で、高らかに鳴り響くレナードバーンスタイン指揮のマーラーの交響曲を聴いたものだ。


映画の作品情報で、「ウエストサイドストーリー」の作曲家として紹介されているのに驚く。あの当時、超有名指揮者のレナードバーンスタインウエストサイドストーリー作曲していたという事実に逆に驚いた。ただ、「ウエストサイドストーリー」版権だけでバーンスタインは一生金には困らなかったそうだ。

指揮者の岩城宏之は追悼文で「ウエストサイドストーリー」について
「対位法やフーガなどのあらゆる作曲技法といい、音楽的ハーモニーの複雑な使い方といい、あの曲はびっくりするほど高度なものを盛り込んでいる。おそろしく高度な作曲技法を使っていてびっくりした。」(岩城宏之 文藝春秋1990年12月号)と大絶賛だ。
50年の時を隔ててレナードバーンスタインの伝記を観れたことがうれしい。
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映画「ナポレオン」 ホアキンフェニックス&ヴァネッサカービー&リドリースコット

2023-12-03 20:07:10 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ナポレオン」を映画館で観てきました。


映画「ナポレオン」はリドリースコット監督がホアキン・フェニックス主演でナポレオンの生涯を描いた新作だ。予告編からスケールの大きい映画だと想像できる。戴冠式のシーンもあるようだ。初めてパリのルーブル美術館に行った時、ダヴィッドが描くナポレオンの戴冠式の絵がもつ迫力に圧倒された。幅が約10mと巨大で、名作の多いルーブルで最も感動した。ずっと目の前にいて唸っていた。


高校の授業でナポレオンのことを習った記憶がない。大学受験で世界史を選択していたので、フランス革命からウィーン会議にかけての出来事はこまかく暗記した。なじみのある名称の事件や戦争が続くが、映像で観るのは初めてかもしれない。ホアキン・フェニックスとの相性はいい。期待して映画館に向かう。

映画はマリー・アントワネットギロチン処刑からスタートする。ナポレオンも処刑場にいたことになっている。軍に入隊して、トゥーロンで英国軍を撃退して戦功をあげた後、ジョセフィーヌとの出会いや国内の内乱に絡むナポレオンを映す。エジプト遠征へ向かった後、国内のトップに上り詰めた時の戴冠式、ロシア、オーストリアとのアウステルリッツの戦いなど歴史をつないでいく。運命のロシア遠征のあと、エルバ島の島流しから復活して、いわゆる百日天下でのワーテルローの戦いとセントヘレナへの島流しまで約2時間半で映し出す。


86歳のリドリースコット監督によるスケールの大きい見事な作品だ。
戴冠式は別として、世界史でただ暗記していただけの事件が実際に映像になっていて、すんなり頭に入っていく。ともかく、戦闘場面の迫力がすごい。これも一部VFXとか使っているとは思うが、実際に颯爽と馬が走り、ぶつかり合う。圧倒される。音楽も実に的確に感情を揺さぶる。これもすばらしい。あとは、ジョセフィーヌへの愛情については、自分は知らなかったので興味深く見れた。

⒈人間味あふれるナポレオンとジョセフィーヌ
ナポレオンが戦功をあげて上流社会を垣間見るようになった時、ジョセフィーヌを見染める。愛人で子供もいたジョセフィーヌに一気に引き寄せられる。そこで見せるナポレオンは、自分の知らないキャラクターをもつ人間ナポレオンだ。ホアキン・フェニックスが巧みに演じる。単純にナポレオンの喜怒哀楽を示す。頑張って?も、ジョセフィーヌとの間にお世継ぎが生まれない。ナポレオンはずっとヤキモキする。バックでいたす場面とかもでてくる。この焦りが前面に現れる。

この映画は比較的セリフが少ない。だからといって、観客にむずかしい解釈能力を必要とさせる映画でもない。革命以降の基本的フランス史がわかれば、映像で理解できる。ジョセフィーヌ役のヴァネッサカービーは適役だと思う。男女の駆け引きを知る恋多き女のイメージにピッタリだ。「ミッションインポッシブル」をはじめとして、いくつかの映画で観たイメージと今回は通じる。


⒉戦闘場面の迫力
ナポレオンが名をあげるトゥーロン要塞の英国軍撃破から軍事の天才ぶりを示す。作戦のアイディアが次から次へとうまくいく。何から何までうまくいく場面を見せるのは痛快だ。

そして、アウステルリッツの戦いだ。雪の中、戦場を映す。静かな雪景色はきれいだ。相手のオーストリア兵の動きを見て的確に指示を出すナポレオン。雪に向かって撃った大砲は雪の下の湖(川?)を露わにする。凍った水面に落ちる兵士たち。そのそばを大量の馬も走っている。こんな面倒な水中シーンよく撮ったな。兵士役の俳優たち大丈夫だったかなと気になるくらいだ。


⒊侮ったナポレオンとロシア遠征
ナポレオンは常にロシアを意識している。アレクサンドル1世の動静を気にしているのが映画でもわかる。トルストイの「戦争と平和」はまさにこの時代を描いた大作だ。

1812年のロシア遠征で失敗して、ナポレオンが勢いを弱めるのはあまりにも有名だ。モスクワからの退却で冬将軍には敵わなかった。映画でも物資補給がうまくいっていない場面がでる。日本軍の末期も補給がなく、ドツボにはまるのは同じだ。


クラウゼヴィッツの戦争論でも、ナポレオンの戦いについての言及がある。
「1812年にナポレオンがモスクワに向かって進軍したとき、その戦役の主眼とするところは、アレクサンドル皇帝に和を乞わしめるにあった。。。たとえモスクワに到るまでにナポレオンの得た戦果がいかに輝かしいものであったにせよ、しかしこれに脅かされてアレクサンドル皇帝が講和に追い込まれたかは依然として確実でない。」(クラウゼヴィッツ戦争論上 篠田訳 1968p.229)

諸国に対するナポレオンの脅威が徐々に弱まり、直前の戦争の時と同じのようにあっさり講和してくれなかったということだ。これが思惑に反したのと同時に、退却で損害を受けその後ナポレオンの尊厳がなくなる。

⒋ワーテルローの戦い
往年のベストセラーで渡部昇一「ドイツ参謀本部」という本があった。若き日に読んだが、おもしろくて常に書棚に置いている。この中でナポレオンの戦いに言及している。
エルバ島を脱出したナポレオンが皇帝に復帰してワーテルローの戦いに臨む。その時、ウエリントン率いる英国軍と戦う前にプロイセン軍と何度も戦って勝っている。
渡部昇一の本によれば
「プロイセン軍は敗戦が命取りにならないうちに巧みに退却するのである。外見では敗戦であるが,退却している方の指揮官と参謀長は敗戦だと思っていないことを,ナポレオンはどうも最後までわからなかったように見える。」(渡部昇一 ドイツ参謀本部1974 p.85)

「プロイセン軍はウェリントンと連合作戦を取りやすい方向に向かって兵を引いたのである。。。以前のナポレオン戦争では,戦場の敗者は敗残兵だったが,今やそれは整然たる戦場撤退軍に変わっているのだ。」(渡部1974 p.88)

「フランス軍はワーテルローに陣取ったウェリントンに猛襲を加えた。。。午前11時半ごろから夕方まで繰り返して押し寄せるフランス軍の攻撃をよく持ち堪えたのである。その戦線は突破される寸前だった。その時,予定のごとくプロイセン軍が右手の方から現れてきたのである。」(同 p.89)

まさにこの映画でプロイセン軍が援軍として押し寄せてきたときである。

「一昨日の戦場の敗者は,ほとんど兵力を減じないで猛攻に出てきたのである。ワーテルローの戦いでナポレオンの軍隊は戦場の敗者であるのみならず,まったくの敗残兵になった。戦場で敗れても整然と引き上げると言う事はナポレオンの辞書にはなかった。彼は戦場ではほとんど常に勝っていたのだから。」(同 p.90)

若き日に初めてこの本を読んだとき,この場面を読んでゾクゾクした。天才ナポレオンがこのように敗者となったのかと感嘆した。そのゾクゾクした場面を実際に映画「ナポレオン」では映像にして見せてくれるわけだから興奮しないわけがない。しかもすごい迫力である。この映画を見て本当に良かったと思った瞬間であった。
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Netflix映画「ザ・キラー」デイヴィッド・フィンチャー&マイケル・ファスベンダー

2023-11-11 17:30:05 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
Netflix映画「ザ・キラー」はデイヴィッド・フィンチャー監督の新作


Netflix映画「ザキラー」デイヴィッドフィンチャー監督によるアクションサスペンス映画である。主演の殺し屋はマイケル・ファスべンダーが演じている。Netflixはちょこちょこ覗いてはいるが,新旧ともになかなかいいのにぶち当たらない。これぞという作品だけブログアップしている。今回は巨匠デイヴィッド・フィンチャー監督作品でもあり,映画館でも公開もされている。別にケチるわけではないが, Netflixで早い時期に見れるならと直行してしまう。

デイヴィッド・フィンチャー監督作品は「セブン」「Fight Club」「ソーシャルネットワーク」「ゴーン・ガール」などの映画史に残る粒ぞろいの傑作ばかりである。Netflixに供給している監督の中でも格上といえよう。ただ、前作のNetflix映画「マンク」はそんなに好きになれなかった。

パリの高級ホテルのスウィートルームにいる富裕層の男女がいる部屋を反対側建物の空き部屋から望んでいる殺し屋(マイケルファスベンダー)がいる。標的を狙ったが,ミスってそばにいた女に当たってしまう。その場を退散して,警察をまきながら飛行機に乗ってドミニカに戻る。すると家族がいる隠れ家が見つけられて襲撃されていた。そうして、今回の依頼者及び家族を始末しに来た殺し屋などの元へ向かう話である。

夜の背景の中で、スタイリッシュに殺し屋を描いている。
デイヴィッドフィンチャー監督のこれまでの作品と比較すると,今回は長編作家が気の利いた短編小説を書いたような肌合いだ。大リーグ出身者が多いことで名前は聞いた事はあるが,これから一生行く事はないだろうドミニカ共和国の映像が出てきたりしてワールドワイドで映画は展開する。


実際には無口な殺し屋だけど,映画ではひたすら続くマイケルファスベンダーの独白がメインである。
「計画通りにやれ」「予測をしろ。即興はダメだ。」「感情移入はしない」と殺しに入る前に自らの計画を崩さないような独り言のナレーションが続く。ビジネスの啓蒙セミナーで講師が語っているみたいな言葉だ。大リーグ最後の4割打者テッドウィリアムズの通算打率は3割4分4厘だったけど,自分は10割だと言いきっていた。これまでずっと成功し続けてきたのにちょいミスをしてしまう。殺しの依頼者にはニアミスでは済まされない。逆に追われる立場だ。


相手は手強い。そう簡単には思い通りにはならない。それでも,スタイリッシュに切り崩していく。ただ,最後の場面,こういう形で終えるのはどういうことなのか?余韻も残したまま映画は終わる。Netflixで二回振りかえるほうがいいかも。1回見ただけでは内容を誤解してしまっていた。。映画館原理主義者には異があるかもしれないがディテールをじっくり振り返りながら、用意周到なキラーのパフォーマンスを家のNetflixで追った方が良い。

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映画「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」 レオナルド・ディカプリオ&ロバート・デニーロ

2023-10-23 07:49:53 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「キラーオブザフラワームーン」を映画館で観てきました。


映画「キラーズオブザフラワームーン」マーティンスコセッシ監督の最新作で、レオナルドデカプリオとロバートデニーロ主演という超豪華メンバーだ。マーティンスコセッシは80になるのに創作意欲が衰えない。3時間を超える上映時間に腰が引けるが、これは観るしかないでしょう。予告編でアメリカの先住民がからんでいるストーリーであることはよめたが、先入観なく映画館に向かう。自分が子供の頃に見た西部劇ではまだインディアンが悪者になっていた。まあ、最近では絶対ありえない話だ。

時代背景は第一次世界大戦が終わったあとの1920年代前半である。石油が発掘されて、一気に大金持ちになるアメリカ先住民がいたなんて話は初めて知る世界だ。しかも、それに目をつけるカネ欲しさの白人が町にたむろうという話もアメリカ史の暗部だろう。興味深くストーリーに入っていける。


第一次世界大戦の復員兵アーネスト(レオナルドディカプリオ)は、オクラホマ州の叔父ヘイル(ロバートデニーロ)を頼って移り住む。先住民のオセージ族は石油が発掘できたおかげで豊かに暮らしている。白人たちは石油の受益権を目当てに先住民の女たちと結婚するものもいた。アーネストはオセージ族のモリー(リリー・グラッドストーン)と惹かれあい結婚して子供もできた。ところが、オセージ族の女たちが次々と病気で亡くなったり、殺されたりする事件が頻発する。何かおかしいのではとワシントンから捜査当局が調べに入ってくるのだ。


重厚感のある映像が堪能できる。
ストーリーの内容はわかりやすい。説明口調になっているわけでないのに、登場人物のセリフを聞いているとぼんやり内容がわかってくる。観客には比較的親切な映画だ。現代と比較すると、1920年代だと医学は進歩していないと思うけど、先住民たちが次々に亡くなっていく。どこかおかしい。徐々に白人たちの企みの様子がつかめてくる。ファミリーなのにお互いに猜疑心が強くなっていく。

妻のモリーは糖尿病だ。当時世界中探してもあまりなかったインスリン注射の処方を受ける。でも、良くならない。夫のアーネストが勧めても注射を拒否するようになる。モリーに疑惑の気持ちが生まれてくるのだ。ジワリジワリと不安の度合いが進む。歴史上の事実に基づいてはいるんだろうけど、ヒッチコック映画的な不安をかき立てる要素もある。わかりやすく時間をかけて映像は進む。


それにしても、演技の水準が高い。ずっとディカプリオの映画を追っているけど、現役俳優では最高レベルだと思う。いわゆる二枚目の役柄ではない。どこかヤバさや欠点をもった役柄を演じている。今回もあえて自ら役柄を代わったようだ。適切な行為だと思う。自分的にはクエンティンタランティーノ監督「ジャンゴ」での農園主の怒り狂ったパフォーマンスが頭から離れない。

ロバートデニーロ貫禄は長い間映画界に居続けたからこそのものだ。ディカプリオとの共演は久々だという。意外に思った。町を仕切るまとめ役で善人そのものに見えるけど裏がある。まさに黒幕だ。リリー・グラッドストーンも良かった。わるいことを考えている白人たちの一方で、地道に生きる先住民の女性だ。今回、その母親をはじめとして無表情に近い先住民役の人たちがでていた。映画のリアル感を高めるには必要な存在であった。


小学生時代「じゃじゃ馬億万長者」なんてTVでアメリカのコメディドラマをやっていた。同じように石油あてて億万長者になった田舎の家族の物語だった。でも全然違う。笑いを誘う場面でも悪さするやつらがいて気が抜けない。先日観た日本映画「福田村事件」とほぼ同時期の出来事である。この時代にはこうやって殺し合う世界がまだ前近代をひきづっていたような気がする。ロビーロバートソンの音楽もこの映画のムードにあっていた。亡くなったことは映画を観た後初めて知った。「ザ・バンド」時代からのファンなので残念に思う。
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映画「シアターキャンプ」ニック・リーバーマン&モリーゴードン

2023-10-07 07:19:34 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「シアターキャンプ」を映画館で観てきました。


映画「シアターキャンプ」はアメリカのモキュメンタリー映画(疑似ドキュメンタリー)である。夏休みに子供たちがキャンプ地に集まって演劇の練習をしてミュージカルを上演するまでを描く。theaterという英単語を見ると、劇場という訳しか思いつかないが、辞書を見ると演劇の訳がある。実際にアメリカではこういう演劇キャンプが運営されているようだ。

ニューヨーク郊外の湖畔のキャンプ地で、夏休みに子供たちが演劇の合宿をして1つの舞台を仕上げるために集合する。ところが、スタッフを束ねる女性校長が突然倒れる。校長の息子トロイ(ジミー・タトロ)が代わりにリーダーシップを取ろうとするが、演劇には素人で参加者たちは無視。でも、音楽、演劇、ダンスの講師たちは変人ぞろいだけど、子供たちからは絶大な信頼がある。それぞれの指導のもと練習に励む。

しかし、このシアターキャンプの懐事情は最悪で、金策にも失敗し続ける。差し押さえ目前である。投資ファンドも買収にきている。窮地を脱するためには発表のステージでいいショーを見せて投資家から出資してもらうしかないのだ。


構成力と編集力に優れたモキュメンタリー映画だ。
製作・脚本のニック・リーバーマン監督と音楽講師役で監督も兼ねるモリーゴードンを含めて4人で練って製作した作品だ。かなりの準備期間を経て、19日で撮影を完了したという。練ってつくられたストーリーを前提にしたモキュメンタリーとはいえ、実際に子どもたちが集まって個性的な演劇指導者の指導を受けて鍛錬に励む。全般に流れるムードはコミカルだ。


子どもたちはマジだ。本気でいいミュージカルをつくろうとしている。演技というレベルを超越する。それぞれの歌も上手い。講師の演技指導に対する不満など本音も次から次に発せられて、真剣勝負と言ってもいいのではないか。


この映画は90分台に簡潔にまとめられている。子どもたちが演技で動いているシーンとミュージカルをいい作品にしようとリアルに行動している部分と両方をうまく混ぜ合わせる。人間関係が複雑で揉め事の多い大人の一方で無邪気に行動する子どもたちがカワイイ。この19日間にはかなりの量の映像が撮影されたはずだ。それをテンポよくリズミカルな構成にまとめる。構成力と編集力に優れているという理由だ。お見事な仕事といえよう。
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映画「グランツーリスモ」ヤン・マーデンボロー

2023-09-17 04:47:03 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「グランツーリスモ」を映画館で観てきました。


映画「グランツーリスモ」ソニープレイステーションのレーシングゲームの名手が実際にカーレースに挑戦するというストーリーだ。監督はニール・ブロムカンプだ。予告編で内容を知り、観てみたいと公開を待ち望んでいた。ゲームにはまったく関心がないので、「グランツーリスモ」なんてシミュレーションゲームシリーズがあるなんてことは知らない。しかも、実際にゲームの名手が本物のカーレースに挑戦するなんて話も知らなかった。自分はゲームセンスがないので、こういうゲームに挑戦するとすぐにクラッシュする。リアルだったらあの世行きだ。どんな感じか観てみたい。

英国のプロサッカー選手の息子ヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)は、SONYのレーシングシミュレーションゲームのグランツーリスモが好きで、ゲームの名手が競い合う大会に出場して優勝する。SONYと日産が組んでGTアカデミーというレーシングドライバー育成プログラムがあり、ゲームの名手が10名集められる。


日産のプロジェクトリーダーであるダニー・ムーア(オーランド・ブルーム)は元レーサーのジャック・ソルター(デヴィッド・ハーバー)の協力を取り付けて、本物のレーシングドライバーになるために育成する。そして10名から5名に絞って実際にレースを行い、ヤンが代表になった。
ヤンは日産のレーシングチームのレーサーとしてレースに出場する。最初は完走がやっとの状態だったが、徐々に順位を上げていくようになる。


普通の外国映画だと思って観に行ったが、予期もせず日本が取り上げられているのに驚いた。
結局日産とSONYが組んでレーシングドライバー育成プロジェクトを作った訳で、当然実名で出てくる。この両社にとってはこの映画は良い宣伝になっただろう。東京の繁華街でのロケや横浜の日産本社も何度も出てくる。日産の協力なくして、この映画は製作不可能であろう。でも、エンディングロールにそれらしき文字は見当たらなかった。


レーシング場面は迫力ある。
特にルマン24時間レースのシーンはなかなか良かった。名作「男と女」を思い出す。いったいどうやって撮ったんだろうと思わせるシーンが多い。ドローンを使っているのか?空中からサーキット会場やレースを俯瞰して映し出すカメラワークが目立つ。世界中のサーキットを転々とするわけで、エンディングロールをみると、それぞれの国でのクルーの名前が出ている。その場に行って撮ったのかと思うとカネが随分かかっているなと思う。あと、サーキット会場にいる満員の観客は本物なのか?VFXでの加工なのだろうか?


ただ、カーレース中心に描いたこれまでの傑作「フォードフェラーリ」「ラッシュ」ほどの感動はなかった。当然、出演俳優の格の違いはある。人間ドラマとして比較すると、主人公ヤン・マーデンボローや指導者ジャック・ソルターの魅力が薄い。加えてライバルとの葛藤が弱いヤン・マーデンボローのライバルはレーシングドライバーとして選ばれた時のライバルとレースに出るようになってからのライバルの両方いる。インパクトがあまりなかった。特にレース上のライバルのレベルが低すぎる。


とは言っても娯楽作品としてはそれなりには楽しめた。ヤン・マーデンボロー自らスタントドライバーとして参加しているのはすごい。
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映画「アステロイドシティ」ウェスアンダーソン

2023-09-08 20:07:19 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「アステロイドシティ」を映画館で観てきました。


映画「アステロイドシティ」は奇才ウェスアンダーソン監督が1955年の砂漠に囲まれたある街での出来事を描いた新作である。独特の色彩感覚で目にはやさしいウェスアンダーソンの作品は正直なところ苦手である。想像力豊かなのはわかるけど、意味がわからずついていけないことが増えてきた。たぶん今回もそうかもしれない。

でも、俳優陣がいつもの常連に加えてトムハンクスにスカーレットヨハンソンまで加わり超豪華だ。10億単位のまともにギャラを払ったら破産しそうな俳優だ。ウェスには主演級をこれだけ集めるだけの人徳があるのだろう。怖いものみたさ的な感覚で映画館に向かう。


1955年、砂漠の真ん中にあるアステロイドシテイという人口100人もいない小さな町が舞台だ。色んなエリアから優秀な子どもと共にいくつかの家族が集まっている。

作品情報を引用しても良いが、どうも観た映画と結びつかない。
宇宙人が集会の中に訪れるのはわかるけど、その後もピンと来ない。

相変わらず色彩感覚にすぐれているが、さっぱりわからない映画だった。
それなりに観客はいたけど、この映画の意味が理解できる人っているのかしら?と感じてしまう。宇宙人がでてきてもSFといった展開ではない。ウェスアンダーソン監督が脳内で書き出したアイディアをそのまま映画のストーリーにしたのであろう。ウェスの想像力が豊かなのはわかっても自分の頭脳の理解度を超越する。ただ、ソフトな肌合いのビジュアル設計は抜群である。美術、衣装を含めて細やかな色彩設計で1950年代の雰囲気がこちらに伝わる。そういう雰囲気を観る映画なのかなあ。


時はマッカーシー旋風が吹き荒れた後で、アイゼンハワーが政権をとっている。1953年に朝鮮戦争休戦に入りつかの間の平和が訪れ、徴兵覚悟の男性諸氏もひと安心。スターリンは1953年に死亡したが、米ソ冷戦で水爆開発を競い合う時期である。アメリカで大ヒットなのに日本で公開されない映画「オッペンハイマー」の張本人は水爆反対派で陰謀に巻き込まれる。宇宙開発の争いはまだ先だ。1955年とは時代設定に比較的平穏な時期を選んだものだ。

ティルダ・スウィントン、エイドリアン・ブロディ、エドワード・ノートン、ウィレム・デフォーというあたりがウェス作品の常連だな。珍しく出てないのがビル・マーレイとオーウェン・ウィルソンで、今回はどうしたんだろう。


女優役のスカーレットヨハンソンが窓際で肘をつく顔がいい感じだ。ウェスアンダーソンの盟友というべきジェイソンシュワルツマンとお互いに窓を隔てて会話をしている。カメラ片手に何かを話すが、意味はわからない。ただ、気がつくとスカーレットヨハンソンが裸になって、鏡ごしにフルヌードが観れるのは得した感じだ。トムハンクスは、本当に脇役だ。いつもと違いまったく存在感がない。いつも通りの活躍をするティルダ・スウィントン以外の常連たちは普通にみえる。感想には困る映画だ。
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