今年は関東大震災から100年ということで、2日、3日の二日にわたりNHKの特集番組で震災時の映像をカラー化したものを報じていた。
旧い映像(動画)のカラー化というのは20年ぐらい前からよく見られるようになった(静止画はずっと歴史が古い。写真に色付けた絵葉書なんてのはそれこそ100年前からあったのかな)。最初はなんだか嘘くさいなあ、とおもってみていたが、さいきんのはAI援用とか、色々進んでいるのだろう。だいぶみられるようになった。
昔から住まいは山手線の西北辺りから動いてないので、震災映像にある浅草、両国あたりはあまり縁がない。
ただし、職場は丸の内付近や永代橋(兜町/新川)あたりだった時代が長い。
永代橋付近には昼休みとかによく散歩した(のどかなじだい。。)。今の橋は震災で崩落した旧橋に代わるものとして作られたとのこと。
以前の橋も鉄橋だったが、橋板が木造の為焼失し、多数の犠牲者が出たとのこと。番組では橋が崩落し、残された路面電車のレールを伝って渡ることを試みている人の映像が映っている。
東京駅と丸ビルは震災時既にあった。丸ビル(初代)は落成したばかりで、震災後補修を加える必要があったとのこと。
ウィキを見ると、以前の自分のオフィスがあったところでは震災当時ビルを建築中で、工事で崩落し多数の犠牲者が出た由。震災後再築し40年ほど前に今のビルに建て替えられた。
番組では震災の二カ月前、飛行船を使って初めて撮られた東京上空からの映像が紹介されている。新丸ビルのあたりは空き地(ここは戦後まで空き地だったらしい)だが、道路区画は今の丸の内とあまり変わらない(江戸時代は旧藩邸が立ち並んでいた。東京駅設置に伴い、「再開発」されたのだろう)。
そうしてみていると、100年前の情景も今とつながっているような気がしてきて興味深い。皇居前広場やお堀端から見た帝劇、上野付近の映像も既視感がある。
後半は被服廠跡の惨劇(非難した住民が火事に巻かれて4万人が死亡した)や、流言飛語の横行と朝鮮半島出身者の虐殺について触れている。
当時ラジオ放送はまだ始まっておらず、新聞社は軒並み被災して機能せず、電話も通じなくなっていたとのこと。噂話が唯一の情報源だったが、不安な心理の中、デマが横行しやすい状況にあったと。
番組中学者の方のコメントでは、今は通信手段は発達したが(人々の心理は変わらないので)却って状況は悪くなる可能性があると言っていた。
震災後、人々の心は荒み、何かというと「殺してしまえ」という言葉が流行っていたらしい。
昔の人たちが戦争や災害のときどう行動したか、素人ながら興味があって、時折そういう本を読んでいる。震災については田山花袋の本を、3年前に読んだ。ここでも様々な噂話が展開されている。
先の戦争中は言論が規制されていたが、それでも民衆の間では様々な噂が飛び交っていた。徳川夢声や高見順の日記にも虚実様々な噂話を聞いたことを記録している。
徳川夢声はヒトラーの最期について、『敵が迫る中銃をとって階段を降りていたところ、流れ弾に当たって死亡したそうだ』、と書いている(情報源不明)。
ヒトラーの死が現代の近代史研究でどういう見解なのかは知らないが、夢声が当時聞いた情報が明らかに「見てきたような嘘」なことは間違いない。
小説「黒い雨」でも、列車に乗り合わせた「こちらの聞くことは何かにつけよく知っていた」男の話が出てくる。主人公の後日記に(しかし、その情報はずいぶん間違っていた)とある。
不安感は人々の想像をかきたてる。
そのことは現代に生きる我々も痛いほど知っている。
今も続いているコロナを巡る虚実様々な話もそうだし、東北の震災と発電所の事故を巡る様々な問題についても、未だに色々の話がネット上で交わされている。
3.11のときはTwitter(いまのX)もやっていなかったし、YouTubeも見ていなかった(ワンセグ見てたなそういえば)。今は色々手段があるし、自分が見てなくてもそれで噂は広がるだろう。
こんど東京などの大都市で地震が起きたとき、怖いことはたくさんあるけど、その一つは怪しい情報に惑わされることだ。もちろん自分がそうならないという保証は全くないし、親しい知人や家族や職場の人たちが、真顔で驚くようなことを言ってくる可能性も十分にある。
これもテレビのドキュメンタリーでちょっとだけしか見てないけど、番組で人工地震というテーマで動画配信している人にインタビューしていた。その人によると、人工地震みたいなテーマは下調べが少なく済み、視聴率が良いのでコスパが大変良いそうだ。
フェイクニュースに対する見解を聞かれると、視聴者は是非をわきまえて楽しんでもらいたい、みたいなことを言っていた。。
しかし非常時恐慌下にある人たちに、それほどの理性があるかどうか。。
繰り返しだが、自分が誤った情報をつかんでしまう恐れはあるし、それが一番怖い・。マスメディアや行政広報への批判も根強いが、噂の主を責任に問うことはできない。さいごに被害を受けるのはじぶんたちだ。
東京は地震で郊外へ人々が移住し、また戦災でスプロール現象が加速し、今に至っている。今度震災が起きたときは、その後どのように変わっていくのだろうか。。