ウリパパの日記

自由気ままに・・・

ハイドシェック ピアノリサイタル

2008-06-07 13:38:19 | 音楽
昨日、エリック・ハイドシェックのベートーベンピアノリサイタルを聴いてきました。ハイドシェックはフランス人、しかもコルトーに指導をうけベートーベンが得意・・・期待できそう。でも今年で72歳。年齢的に大丈夫かな?と期待と不安が錯綜する中、サントリーホールへ向かいました。結果は大満足。非常に個性的で音の魔術師といった印象でしょうか。人間味に溢れ心が洗われる一夜でした。でも惜しいかな、10年前に聴いておきたかった・・・
 
まずは演奏スタイル。パンフレットに紹介されていたようにペダルを駆使して一音一音を丁寧に聴かせます。座席は前から3列目の正面やや左側なので、指の動きは見えないかわりに足の動きが良く分かりました。右足も左足もフル回転。音色は決して濁らずこもらず、繊細かつ鮮明なメロディが心に響き渡ります。一音一音の強弱を意識的に大きく変化させているようです。

でも、伝統的なベートーベンの演奏法ではありません。ドビュッシー風?シューマン風? いやっ、ハイドシェック風と称しましょう。テンポの取り方に特徴があります。最初は聴いてビックリ。おっとっとっ・・・という感じでしたが、耳が慣れてくると左手と右手のタイミングを微妙にずらし自然に聴かせていることが分かりました。それも決して意図的ではなくごく自然に、まさに巨匠ならではの至芸です。

曲は4つ。前半は「ピアノソナタ8番(悲愴)」と「自作の主題による6つの変奏曲」。後半は「6つのバガデル」と「ピアノソナタ31番」。いずれもベートーベンです。個人的には最初に弾いた悲愴が素晴らしかった。最初は演奏法に慣れずに戸惑ったものの、2楽章~3楽章にかけての音色の美しさに会場全体が酔いしれています。昔、自分でも練習していた曲なので身近に感じたせいかもしれません。聴いていると自然と指が動いてしまいますね。でも3楽章の最後はちょっと違うなという印象。次の2曲は、個人的に馴染みがない曲ですが、ハイドシェックの世界に浸ることができました。一音一音に緊張感がみなぎり、魂を込めて音を鳴らしています。

そして最後のピアノソナタ31番は大曲。疲れているのでは?という不安が的中しました。2楽章の途中、Des-durに転調して暫くしたところで、一瞬音が止まり弾き直してしまいました。でもご愛嬌です。その後の3楽章が素敵だったので。演奏終了後は割れんばかりに暖かい拍手。どの曲も心暖まる演奏で70歳を越えているとは思えないテクニックと魔法の音を堪能しました。

さすがにアンコールは無いだろうと思ったら何と7曲も!1曲は失敗しましたが・・・
まずはモーツアルト「ピアノソナタ2番(2楽章)」とシューマンの「トロイメライ」、そしてドビュッシーの子供の領分より「子守唄」。涙が出るほど美しい。そして、自作の作品(ドビュッシー風とか説明していました)。ところが、途中で忘れて頭を抱えてしまいました。本人はショックを隠しきれない様子でしたが、会場からはまたしても暖かい拍手。悩んだ挙句、弾き始めたバッハ(コンツェルト)の素敵なこと。こんなにサービスしてくれなくても良いのに・・・続いてドビュッシーの「小さな羊飼い」。これは”ドビュッシーオリジナル”との本人コメントで会場の笑いを誘っていました。全てが演出されていたようにも思えてきました。そして最後はシューマンの「子供の情景」から。お疲れさまでした。曲を引き直したり、忘れて止めたり、プロのコンサートで始めての経験でしたが、それが自然と受けとめられ、10倍以上のお釣りがくるほど素敵な一夜でした。ありがとう。ハイドシェックさん!
コメント (8)
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