図はR.L.ウェストの文圧縮テストの実験結果です。
文圧縮というのは、日本で言う速聴のことで、ふつうに話された文章を圧縮して短い時間で聞かせることです。
テープにとった朗読などを、倍のスピードで再生すれば、半分の時間になるので文の密度を2倍にしたことになります。
ただテープのスピードを2倍にしたのでは高音化してしまうので、周波数を調整するプログラムを使って再生します。
この実験は若年者と老齢者の理解度を比較しようとしたものですが、老齢者は平均的な老齢者と、教育歴の長い健康な老齢者に分けています。
三群ともに文の圧縮率(再生スピード)が上がるにつれ、聞いた文内容から想起されるものの量が減ってきています。
若者と教育歴の長い健康老人とでは、圧縮率が低い段階では成績が変わらないけれども、再生スピードが上がると差がかなり開いています。
これは脳の活動の違いであって、教育歴の長い健康老人は補助的に脳のほかの部分を使ったり、経験によるテクニックで補っているのが、スピードが速くなると追いつかなくなるためだとしています。
基本的には若年者のほうが聴力そのものが優れているので、単純に単語がが聞き分けられると同時に、記憶力も優れているので文内容の再生率が高いのでしょう。
老齢者の場合は、聴力は衰えているので、文内容を理解することによって無意味記憶ではなく、文脈などから再生しようとするのが、スピードが速くなると内容理解が難しくなるのでしょう。
そうすると、若者の場合は高齢者と同じように文内容の理解により、文脈からの再生を補助として使えば、さらに文内容の再生率は高まることになります。
この例から予測されるのは、訓練をすればより速いスピードの音声を理解できるであろうということです。
速いスピードで音声を聞くことに慣れると、単語が把握しやすくなり、単語が把握できれば内容が理解しやすくなり、そのことによってまた単語が把握しやすくなるといったことが考えられるからです。
アメリカでも速聴の効果というのを認める場合があり、速聴が出来ると話を聞くとき、聞き取りに余裕が出来るのでメモを取りやすくなり、講義などを理解しやすくなるとしています。
日本では、速聴によって神秘的な能力が得られるようになると主張する場合があるので不信感がありますが、聴くことによって集中力が鍛えられるので、速聴自体は有用な訓練だと思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます