音声テープを速く再生した場合、文の再生率は落ちるのですが、ところどころ単語と単語の間をあけて、区切りを普通のスピードと同じにするよう修復すると、成績が上がります。
図はD.C.パーク「認知のエイジング」からのものですが、この場合は普通の音声スピードは165wpmとして、これを早口の300wpmに変換したときの再生率を現したものです。(165wpmというのは1分間に165語、300wpmは1分間に300語なので再生時間を55%に圧縮しています)
単純に時間圧縮した場合に比べると、単語の間にアキを入れたほうが再生率の低下が少なくなっているのですが、適当にアキを入れるより、文の区切り(カンマとかピリオド)のところで間をおく統語修復のほうが成績が良くなっています。
さらに単語と単語の間の区切りがすべて自然の長さで、文の区切りの部分も十分であればさらに再生の成績は上がるという結果だそうです。
このことは単語の発生スピードが高くなっていても、単純な聴覚の問題よりも会話や読み上げのパターンが把握できれば内容の理解がしやすいということを示しています。
歳をとれば聴力は衰えるのですが、単純に聴力の低下に比例して理解力が落ちるということではないようです。
早口音声が高齢者にとって理解しにくいならば、ゆっくり話せば効果があるだろうと予測されますが、単語部分をゆっくり話すより、単語の切れ目をハッキリさせ、文の区切りに間を取るほうが有効だということです。
幼児で言葉が遅れているとか、外国語の習い始めは単語自体をゆっくりした発音で聞いて覚えなければいけませんが、いったん言葉を覚えた高齢者には極端な早口でない限り知っている単語は聞き取れるようです。
したがって、知らない言葉が多かったり、会話のパターンが特異であったりすると理解率は当然下がるので、高齢者が若者同士の早口会話が聞き取れなかったとしても不思議はないのです。
単語の区切りや文の区切りがはっきりとらえられれば、速いスピードの音声が理解できるということは、訓練をすれば理解力は向上するということです。
聴力の低下によって単語が聞き取れないために速いスピードの音声が理解できないというのであれば、補聴器を使うより手の打ちようがないのですが、訓練によって改善されるということなのです。
速いスピードの音声を聞く努力をして訓練して慣れてくれば、普通の速度での単語や文の切れ目は余裕を持って把握できるようになるので聴きやすく理解しやすくなるはずです。
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