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猿マネをする

2006-04-08 22:45:03 | アナログとデジタル

 チンパンジーの子供は大人のすることを見るのが好きで、見ることでいろいろな技術を覚えていきます。
 ただ見ているだけでなく、マネをするのですがうまくいかなくても親のほうが手取り足取り教えるということはないそうです。
 マネというのは人間や類人猿に多く見られる行動で、犬や猫はあまりマネをしたりしないことからすれば、マネルには知能が必要だと考えられます。
 人間の子供とチンパンジーのマネの仕方を比べると、「見たとおりにマネをする」のは人間の幼児のほうで、チンパンジーには見たとおりにマネをすることが、難しいとされています。
 
 手の届かない所にある餌を熊手を使って引き寄せてみせ、マネをさせるのですが,引き寄せるときに熊手を回転させ、bのようにして引きよせます。
 このとき、人間の幼児の場合は、熊手を回転させるというところまでマネをするので、餌を引き寄せることが出来ます。
 チンパンジーの場合は、熊手の向きをそのままにして引き寄せようとするので、なかなかうまくいきません。
 チンパンジーは、熊手を使って餌を引き寄せるという目的は理解しているが、方法の細かい部分までマネをしないために失敗をしています。

 明和政子「なぜマネをするのか」によると、チンパンジーは他者の行為に含まれる身体の動きについての情報を処理する能力が人間に比べると弱いそうです。
 熊手を使って餌を引き寄せるのを見ると、熊手の使い方は自分流でやってしまって、お手本どおりにしないのです。
 細かな他者の動きを正確に猿マネをしなくても、目的と手段としての道具を理解したら、後は自分の経験や試行錯誤によってやってしまうのです。
 だからチンパンジーのやり方のほうが効率がよい場合が多いのです(この場合はわざと引っ掛けにくい熊手を使って、そのままでは引き寄せにくい向きにしてありますから、いかにも知恵足らずに見えますが)。
 人間の学習方法では、行為の中に含まれる目的とは関係しない、余分な情報も猿マネしてしまうために、効率が悪い場合も多いといいます。
 人は他者のすることを見て、身体の動きに注目するために、心の状態を察知しやすくなるとしています。

 このような違いはヒトとチンパンジーの母子関係の違いから来ると推測しています。
 ヒトの親は生まれて間もない子に,おせっかいといっていいくらいに積極的に働きかけ、あやしたりするが、チンパンジーは子どもの面倒を見てもあやしたりはしない。
 ヒトの親は子供が反応するようになれば、子供の真似をしてみせたりするので、子供は模倣する経験を引き出され、模倣する能力を早くから引き出され、他者の心を理解する能力を芽生えさせるといいます。

 チンパンジーだって、チンパンジー同士の心は理解できるのかもしれませんが、人間の心は同類でないので理解しにくいだけなのかもしれません。
 ヒトに飼育されたチンパンジーは、模倣能力がヒトの幼児に匹敵するレベルになるといいますから、育ち方の違いの影響も大きいのかもしれません。
 もちろん、人間でも必ずしも細かい動きまでそのまま「猿マネ」する幼児ばかりとは限りません。
 自閉症児などは「猿マネ」が不得意だそうですし、個性が尊重される時代では同調的な傾向は評価されないので、「猿マネ」をしない幼児を育てようとする風潮があるからです。
 どちらかというと日本人は同調性が強く、「猿マネ」傾向が強いとされてきたのですが,チンパンジーとの比較からすると、これらが必ずしも欠点ではなかったように思われますが、今後はどうなのでしょうか。


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