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錯覚とはいえない錯視

2005-12-24 19:11:02 | 眼と脳の働き
 眼に近いと物は大きく見えますが、そのため大きく見えるものは近くに感じます。
 a図は長方形なので右の辺と左の辺は同じ長さなのですが、右側が短く見えます。
 左側のほうが手前に、右側のほうが奥に感じられます。
 明るい部分は手前に感じられるので広がって見え、暗い部分は奥に感じられるので縮小して見えるためです。
 そのため左側の辺が長く、右側の辺が短くみえるのです。
 
色彩心理学では前進色とか後退色というのがあります。
 前進色というのは近くに寄ってくるように見え、後退色は縮小して見えるので後退色というのかと思いますが、暖色が前進色、寒色が後退色というような説明もあります。
 ところが、この図形で白い部分をオレンジ、黒い部分を青にして両方の色の明度を同じにすると左の辺と右の辺は同じ長さに見えます。
 暖色であるか寒色であるかということでなく、明度つまり明るいか暗いかで大きく見えるかどうかは換わってくるようです。

 逆に大きいものは手前に見えるという現象もあります。
 b図は大小の円を並べたものですが、大きい円は手前に、小さな円は奥にあるように見えます。
 遠近法によって描いたわけではないのですが、だんだんに大きくなるように並んでいると、大きなものは近くに感じられるのです。
 近づいてくるものが大きく見えるようになるというのは、人間に自然に備わった機能なので、大きく見えるものは近くに感じられるのです。
 
 c図は白と黒の同じ形、大きさの長方形で作られています。
 横の境目の線は水平なはずなのですが、中間の二本の横線は傾いて見えます。
 傾いて見えるのは白い長方形が広がって見え、黒い長方形が縮んで見えるためです。
 理由はd図で見るとわかります。
 左上の白い長方形は広がって見えるので、下の黒い長方形に食い込んで見え、右下の白い長方形は逆に上の黒い長方形に食い込んだ形に見えます。
 その結果、間の仕切り線は斜めに見えるようになるのです。
 白が前進色、黒が後退色であるために起きる現象で、眼の錯覚とされているのですが、自然な見え方で錯覚とはいえません。

 この場合も同じ明度の白の代わりにオレンジ、黒の代わりに青を使うと間の線は水平に見えるようになります。
 白と黒の場合も横の仕切り線をじっと見続けると、いつのまにか水平に見えるようになります。
 横線に意識が集中すると、白黒の部分が全体的に見渡せるようになるためです。
 

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