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発音の変化と文字表記の変化

2007-10-22 22:33:38 | 言葉と文字

 新仮名遣いといえば、終戦後占領軍によって押し付けられたというふうに思う人もいますが、原案は大正時代に作られたものです。
 いわゆる歴史的仮名遣いは、明治政府によって施策されてから定着するまで数十年を要しましたが、その間だけでなく終戦直前まで表音化の動きが政府によっても繰り返されています。
 歴史的仮名遣いは教育が難しいだけでなく、「大言海」など国語辞書は見出し語が歴史的仮名遣いで、発音とすぐ結びつかず非常に不便で、そのうち表音的見出し語の辞書ができたりしています。

 とくに朝鮮や台湾、満州、南洋諸島での現地人の日本語教育ということになると、発音と文字が違っていては不都合ではないかと考えられ、明治末からは表音式の教科書が使われたりしました。
 それでも、現地人に対しても日本人と同じく、歴史的仮名遣いで教えるべきだという意見が強かったため、大体は歴史的仮名遣いの教科書がつかわれたのですが、図のように表音式のものが1937年でもつくられています。
 日本国内で歴史的仮名遣いが定着したといっても、文学者や高等教育を受けた人々の話で、一般庶民にまでは定着していなかったので、外国人には表音式でなければ無理だという考えがあったのでしょう。

 発音が変化すれば表記も変化させたほうがよいと考えるのは自然の動きで、これは日本に限ったことではありません。
 発音と綴りがずいぶん懸け離れているため、綴りが難しくなっている英語の場合は、発音だけが変化して綴りは変化していないような感じがします。
 たとえばnightとknightは発音が違いますが、knightのkはかつては発音されていたのが、発音が変化してnightと同じになったので、綴りのほうは混同を避けるため、変化させずにそのままにした、といわれています。
 そこで発音が変化しても綴りが変化しないので、綴りと発音のズレができているのだなと思い、さらに発音は変化しても文字表記は変化しないと思い込んでしまいます。

 ところが古い英語の綴りを見ると、綴りは現在と同じかといえばそうでもありません。
 whenは以前whanという綴りだったのですが、whenと綴りが変わったのは、発音が「ウァン」から「ウェン」に変わったからでしょう。
 togetherも「トゥギダー」が「トゥゲザー」に変わったのでtogydirからtogetherに変わったのでしょう。
 現在のgive(ギブ)やlove(ラブ)が、かつてはgiue(ギウ?)、loue(ラウ?)だったとは驚きですが、発音が変化すれば文字表記が変化するということもあるのだなということが分ります。
 (このときnightはnyght、knightはknyghtとなっていますから、発音が変化して綴りが変化しないというときもそれ以前にあったということがわかります。)
 


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