人物画などを模写するとき、原画を逆さまにすればより正確に描くことが出来るといわれています。
ベティ.エドワーズ「脳の右側で描け」から始まった考え方で、正立像を見ると左脳の考え方に支配されがちになるので、逆さまにすれば何が描かれているか分からないので、ありのままに模写ができるということのようです。
左脳が得意なのは言葉や理屈で、絵画など芸術は右脳が得意とする分野である、というような説が一般化されたため、無条件でこの説を受け入れてしまいがちなのですが、実際はどうなのでしょうか。
上の図は故ケネディ大統領の写真、写真の陰影を単純化したもの、小泉元首相の似顔絵漫画を逆さまにしたもので、下が原画です。
こうしてみると一番分かりにくいのは真ん中の場合で、漫画の場合は倒立していてもそれほど分かりにくくはありません。
一番左の写真の場合は、分かりにくいといっても、原画のイメージとだいぶ違うのですが、真ん中ほど極端ではありません。
逆さまにすれば何が描かれているかわからなくなるというのは、どんな絵でもそうだというのではなく、絵によって違うのだということが分かります。
もし逆さまにしたら左脳が理解できなくなるというのであれば、右のような似顔絵漫画は絵ではないということになるのでしょうか。
それとも、漫画は左脳に理解しやすい左脳向けの絵画形式だということなのでしょうか。
左脳についてのイメージと漫画とはなんとなく合わないような気がするので、そうだとは言いにくいですから、漫画は単純化されているから左脳でもわかるのだというしかないかもしれません。
ところが真ん中の場合は陰影の諧調を無視して単純化したものなのに倒立させた図は非常に分かりにくくなっています。
漫画と他の図との違いは、漫画が線画で平面的なのに対し、横の二つは陰影による立体感で表現された画です。
左脳とか右脳とかいう問題ではなく、立体感の問題で、三次元的に見える像は逆さまにするとまったく違って見えるということなのです。
立体感のある像を紙のような平面の上に描くというのは、自然には出来ないので、三次元的に表現しようと意識することを放棄することによって正確に輪郭を模写使用ということを提唱したのでしょう。
漫画や、模様など平面的な画であれば、逆さまにしなくても見え方に忠実に紙という平面に模写できるのです。
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