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図は江戸時代のことば遊びで「判じ絵」といわれるものの例です。
左上の絵は江戸時代の床屋を逆さまにした絵で、江戸時代は髪結い床のことを単に「床(とこ)」といいましたから、「とこ」を逆さまにして「こと」(琴)というのが答えです。
次は牡丹の花の真ん中が消えているので、「ぼたん」の中抜きで「ぼん」(盆)が答えとなっています。
つぎは魚の名前ですが、絵は俵の絵で「たわら」の中抜きで「たら」つまり鱈が答えです。
左下の絵は逆さまの梨の絵と竹の皮を組み合わせたもので、「なし」の逆さまの「しな」と竹皮の「かは(かわ)」をあわせて「しなかは」(品川)です。
品川がわかれば、次の絵は同じように考えると、「歯」と逆さまの「猫」で「は」と「こね」で「はこね」(箱根)となります。
次の絵は少し難しくて、男が手に持っているのは首の前面つまり顔ですが逆さまになっています。
つまり「かお」を逆さまに持っているので「おか」を持っている、「おかもち」(岡持ち)というのが答えです。
なんだか小学生向けのことば遊びのようで、たあいがない感じがするかもしれませんが、いかにも日本的な遊びです。
第一にこれらは、漢字で考えてはだめで、カナで考えなければなりません。
「床」は漢字のままでは逆さまにしても何のことかわかりませんし、「牡丹」、「俵」の中抜きをしようとしても漢字の状態ではどうにもなりません。
「梨」、「猫」、「顔」も逆さまにしてもなにも出てきません。
これらはカナになおすと逆さまにしたり中抜きをしたりということができて、遊びが可能となるのです。
ただし最後の問題は、旧かな遣いでは「顔」は「かほ」となるので、逆さまにすると「ほか」になってしまい、「ほかもち」では意味が通じません。
また「岡持ち」は旧カナ遣いでは「をかもち」なので。作者は「顔」を「かを」と考えたのかもしれません。
江戸時代は基本的には旧カナ遣いであったにしても、厳密ではなくかなりテキトーだったようです。
これはカナで考えるのではなく音声で考えるもので、カナ遣いの混乱はないということもできます。
音声で考えるといっても、音節文字であるカナと結びついた音声で、純粋に音声で考えているということではありません。
たとえば「とこ」はカナで書くと「と/こ」で逆さまにすると「こ/と」ですが、発音記号的にローマ字で書けば「t/o/k/o」でさかさまにすれば「o/k/o/t」です。
実際「toko」をテープで録音して逆さまにまわせば「okot」と聞こえて「koto」とは聞こえません。
音声に敏感であれば「こと」の逆さまは「おことぅ」のような発音、「なし」の逆さまは「issan」で「いっすぁぬ」、「ねこ」は「oken」で「おけぬ」のような発音となって「こと」「なし」「ねこ」にはなりません。
カナという音節文字を発明したために、音声を聞くときにも音素に対する意識がなくなり、音節で聞くようになっているためこういう形式のことば遊びが成立したのでしょう。
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