左上の図形はザンダーの平行四辺形という錯視図形で、線aとbは同じ長さなのですが、aのほうが長く見えます。
なぜaのほうが長く見えるかという説明で、心理学のテキストでは矢羽根の錯視によるとしているようです。
矢羽根が広がっているほうが軸線が長く見えるというのですが、実際左下の例で見ると、上の矢羽根のほうが長いかといえばそんなことはありません。
同じかむしろ、下のほうがややもすると長く見えるのですから、この説明は間違いです。
もう少しまともな理由を考えて見ます。
左下に三角形がありますが、辺xとyとを比べればyのほうが長いことがすぐ分かります。
このときxに対する角dとyに対する角dを比べれば明らかにcのほうがdより大きいです。
つまり三角形では大きい角に対する辺のほうが小さい角に対する辺より長いのですが、これは中学の数学の知識の範囲です。
次に右の図の角eと角fを比べるとどちらが大きく見えるかといえば、fのほうが大きく見えるでしょう。
eとfは同じ大きさの角なのですが、隣接する角との対比でeは小さく見え、fは大きく見えるのです。
そうすると三角形ABCでは角Bより角Cのほうが大きく見えるので辺ABのほうが辺ACより長く見える、つまりaのほうがbより長く見えます。
辺ABが辺ACより長く見えるということは角Cのほうが角Bより大きく見えるということだというのは中学数学の知識で分かることです。
それならなぜ角Cのほうが角Bより大きく見えるかを考えればよいのです。
矢羽根の錯視を説明に持ってくるのはいかにも心理学的な説明で、形の類似からの類推で、直接的な説明ではありません。
ところで、この錯視図を見て誰でもがaのほうがbより長く見えるかといえば、そうとは限りません。
線aと線bしか見なければaのほうが特段長く見えるということはないかもしれません。
三角形ABCを意識すれば、無意識のうちに角Bと角Cを比較してしまうので、辺ABのほうが長く見えてしまうのです。
つまり視野を広くして見る、すなわち視覚能力があるほうが錯視が発生するのです。
そうしたことを知った上で、辺ACに注意を集中して見ると、角度に注意が向けられないため、辺ABと辺ACは同じ長さに見えるようになります。
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