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前頭葉への思い入れ

2006-10-28 22:57:58 | 脳の議論

 脳が大きければそれだけ賢いのかとは必ずしもいえないのですが、人間が他の動物より賢いことを証明するのに脳の大きさが使われます。
 小さな政府の国より大きな政府の国のほうが優秀とは必ずしもいえないのですが、脳は大きいほうが優秀として疑問には感じないようです。
 絶対的な脳の大きさで言えば、象やクジラには負けてしまうので、体重との比較での脳の大きさを考えればやはり人間が一番と説明されました。
 ところが体重との比較で言えば、テナガザルとかネズミのほうが人間より脳の割合が大きいということが分かって、他の決め手が捜されるようになりました。
 そこで目をつけられたのが前頭葉で、人間の前頭葉はとくに発達していて、脳に占める前頭葉の割合は普通の動物はもちろんのこと、類人猿などと比べてもはるかに大きいという風に説明されていました。
 
 前頭葉というのは自分の脳を操作するので、脳の中心、会社で言えば取締役会のようなもので、人をして人たらしめるものとかいわれ、動物との違いは前頭葉の発達の違いだとか言われています。
 人間の特徴はまさに前頭葉の進化だというような説明が今でも常識のようになっています。
 だから現生人類ではないが3万年ほど前に絶滅した、ネアンデルタール人の脳が現人類のものより10%ほど多いと分かったとき、ネアンデルタール人は脳は大きくても前頭葉は未発達だと計測したわけでもないのに断定する学者もいました。
 前頭葉が小さいのに脳がわれわれより大きかったのはなぜかという疑問が当然出てくるのですが、彼らはヘラクレスのように筋骨たくましかったので筋肉を動かすに使ったなどと言ってしまう人もいました。
 筋力が強いから脳が大きくなるというならゴリラなどはものすごく大きな脳のはずで、こんな説明が出てきたのも人間が一番という結論が先で、脳による説明はこじつけ立ったのです。

 ところで人間だけが前頭葉が発達していたのかというと、実際にサルや類人猿の前頭葉の割合などを、どの程度正確に測ったのかは明らかではなかったようです。
 その後MRIなどを使って測った例がありますが(1997年と2002年)いずれの例でも人間と類人猿の間でほとんど差はないという結果となっています。
 図は澤口俊之「脳の違いが意味すること」(赤澤威「ネアンデルタール人の正体」所収)からのものですが、ここではネアンデルタール人の前頭葉は現人類と脳に対する割合は同じだとしているので、結果的に絶対的な大きさでは上まわっていることになります。
 ただ澤口氏はネアンデルタール人は体格が良いので、体重に対する前頭葉の割合で比較すればげんじんるいより40%も劣るとしています。
 そうすると戦前の日本人と比べたアメリカ人は前頭葉の体重日がかなり少なかったとみられるので、の脳の働きが悪かったということになるのでしょうか。
 前頭葉は脳を操作するものだというのがこの著者の主張だったはずがいつの間にか、体重比を持ち出しているのが不思議です。
 どうでも現人類が最高という結論に結びつけたいのは人情ですが、説明としては疑問です。


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