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文字の意味の暗示と連想

2008-05-27 23:27:53 | 言葉と文字

 C.K.ブリスの考案した絵文字では屋根の下に女を組み合わせて母という文字になっています。
 ブリスが参考にしたという漢字では屋根はウ冠で、女という文字を組み合わせると「安」という文字になって、「母」ではありません。
 意味を持った図形を組み合わせて作った図形は、決まった意味を伝えるとは限らないことが分ります。
 ブリスの場合は家を支配している女性ということからの連想で、「母」としたのでしょうが、古代中国ではそういう発想はなかったようです。
 漢字の「安」は落ち着くとか、安定するといった意味ですから、女は家で落ち着かせるという考えだったのでしょうか。
 このように図形を組み合わせて表現する意味は、比較的にハッキリした意味の図形どうしの組み合わせでも出来上がった図形の意味はあいまいです。
 
 漢字のほとんどは意味を持った要素の組み合わせですが、その意味はハッキリ決まるわけではなく、解釈はいくつも可能で、最初に決まった意味があったとしても、立場の違いや時代の変化によって意味が変ってきます。
 たとえば「正」という字は「一」と「止」の組み合わせで、「止」は足をさす文字なので、目標の線をめがけてまっすぐに進むということで「ただしい」という意味だとされていました。
 ところが研究が進むうちに「一」の部分は古い時代には城を現す□になっていたということで、「城に向かって進軍して征服する」という意味だと解釈されるようになりました。
 ところが後に「正」は「ただしい」という意味に使われるようになったので、もとの進軍という意味の文字は「征」という字が作られて使われるようになったのだそうです。
 
 「政治」の「政」という字も「政は正である」というように、正義を行わせることだというような説明がありますが、これももとは「正」に税金を取り立てるという意味があり、「攵」は「棒でたたく」という意味ですから、強制的に税金を取り立てるというような意味だそうです。
 これを強制力をもって正義を行うと、正義を前面に押し出して意味づけを儒教でやったので、一般化しするようになったというわけです。
 「武」という字の解釈もかつては「戈」を「止」めるという意味だとして「武力」を正当化していたのですが、最近では「止」は「足」で、武器を持って進むという意味だとされています。

 文字を図形的に解釈するということは、連想や暗示で意味を考えるので、見れば意味が分かるということではなく、分った気がするということです。
 たとえば「民」という字は「目を針でつついて目を見えなくした奴隷をさす」と解釈されていましたが、「目を針でつつく」まではよいとしても、あとの部分は解釈です。
 奴隷の目をつぶして逃亡を防いだというような解釈もありますが、目をつぶしては労働力としては役に立たないので不自然です。
 目を見えなくされたのはいわゆる奴隷一般ではなく「神に仕える者」だという説もあり、神に対しては盲目的に仕えなければならないため目をつぶしたというわけです。
 そうであれば民が一般人民のことを指すようになったのは、帝王が神のように権力を持つようになって、神に対するような奉仕を要求するようになったからと解釈できます。