いつもあの影を追いかけていた。
僕の上を飛んでいく二枚の羽を持つ飛行機
”なんだ、やっぱりここにいたのね。早く行かないと授業始まるよ?”
いつもの彼女が現れ僕に向かってそう言った。
”うん。もうすぐ行くよ。ちょっとこれだけ見たいんだ”
そう言って僕は向き直り滑走を始めようとする複葉機を眺める。赤く塗られた機体はけたたましい音とともに大きなプロペラを回しゆっくりとゆっくりと滑り出していく。
僕の肌をふるわせ響く低い音が、僕の鼓動と重なったときそれは空へと飛び出していく。興奮が僕の中を巡り、それは行き場のないくらい体を駆けめぐり、ただその影を追いかける。荒い息も胸の高鳴りもどうすることも出来ないほどに
”やっぱりすごいね、飛行機って。ねぇ、君はいつかそれに乗るの?”
後ろから声をかけられてはっと我に返る。僕は少しだけ考えて
”うん。たぶん乗るんだろうね。でも、いつかはわからない。一年先かそれよりももっと先か。もしかしたら乗らない選択もあるかもしれない”
”なに、乗らない選択って”
不思議な顔をして彼女が聞く。”だって・・・”
”だって、もしかしたら僕は影を追いかけるのが好きかもしれないからね”
そう言って僕は空を眺める。空を行く飛行機は風をとらえ高く高く上っていく
僕の上を飛んでいく二枚の羽を持つ飛行機
”なんだ、やっぱりここにいたのね。早く行かないと授業始まるよ?”
いつもの彼女が現れ僕に向かってそう言った。
”うん。もうすぐ行くよ。ちょっとこれだけ見たいんだ”
そう言って僕は向き直り滑走を始めようとする複葉機を眺める。赤く塗られた機体はけたたましい音とともに大きなプロペラを回しゆっくりとゆっくりと滑り出していく。
僕の肌をふるわせ響く低い音が、僕の鼓動と重なったときそれは空へと飛び出していく。興奮が僕の中を巡り、それは行き場のないくらい体を駆けめぐり、ただその影を追いかける。荒い息も胸の高鳴りもどうすることも出来ないほどに
”やっぱりすごいね、飛行機って。ねぇ、君はいつかそれに乗るの?”
後ろから声をかけられてはっと我に返る。僕は少しだけ考えて
”うん。たぶん乗るんだろうね。でも、いつかはわからない。一年先かそれよりももっと先か。もしかしたら乗らない選択もあるかもしれない”
”なに、乗らない選択って”
不思議な顔をして彼女が聞く。”だって・・・”
”だって、もしかしたら僕は影を追いかけるのが好きかもしれないからね”
そう言って僕は空を眺める。空を行く飛行機は風をとらえ高く高く上っていく
”僕が魔法をかけました”
”ねぇ、それはどんな魔法?”
僕の瞳の中、吸い込まれてしまいそうなくらい見つめる君の顔が飛び込む。ゆったりとした髪を揺らし、小さくグラスを傾けるように。
からん
グラスの中に入った琥珀のようなアルコール。大きな氷がそんな音を立てた。
”さぁ、どんな魔法だろうね”
僕は何も答えず空になったグラスに目を移した。
”変な人・・・・・・ やっぱりあのころと変わってないのね”
白い肌に映える赤い唇に透明のグラスがそっと触れ、小さくため息をつくようにそのアルコールを飲み干した。
ゆっくりとした動作。もう酔ってるのかもしれない。潤んだような瞳が僕を見つめている。
”それじゃぁ君は変わったの?”
新しいグラスを前に僕は彼女に問いかけた。
からん
空いたグラスの中で氷が踊る。黒いボトルから新しく注がれるその液体はゆっくりと氷を持ち上げていく。
”さぁね。どうだと思う?”
そう言って君は笑う。
”そっか、変わってないんだね。なんだか懐かしいよ、その顔は”
どこからともなく降り注ぐやわらかな音楽はいつの間にかピアノからヴァイオリンへと変わっていた。
”変わろうと思っても変われないものなのね。よかったわあなたも変わってなくて”
”でも、長い時間だったね”
”そうね、長かった”
僕を見つめる瞳がゆっくりと閉じられ、白い肌の顔がゆっくりと僕に近づく。赤い唇が僕の唇に触れ、あわく切ない思い出がよみがえる。
”ねぇ、さっきの魔法をかけたってどういう意味?”
ほおを染めた、いたずらっぽい笑みが唇に残る柔らかさに問いかけた。
”知らないよ。何となく言ってみただけさ”なんとなくね。
小さく消え入る声に君の声が重なる。
”じゃぁ私もあなたに魔法をかけてみるわ”
”どんな魔法?”
”さぁね。たぶんあなたがかけたのと同じものよ”
そう言ってもう一度唇を寄せた。
”ねぇ、それはどんな魔法?”
僕の瞳の中、吸い込まれてしまいそうなくらい見つめる君の顔が飛び込む。ゆったりとした髪を揺らし、小さくグラスを傾けるように。
からん
グラスの中に入った琥珀のようなアルコール。大きな氷がそんな音を立てた。
”さぁ、どんな魔法だろうね”
僕は何も答えず空になったグラスに目を移した。
”変な人・・・・・・ やっぱりあのころと変わってないのね”
白い肌に映える赤い唇に透明のグラスがそっと触れ、小さくため息をつくようにそのアルコールを飲み干した。
ゆっくりとした動作。もう酔ってるのかもしれない。潤んだような瞳が僕を見つめている。
”それじゃぁ君は変わったの?”
新しいグラスを前に僕は彼女に問いかけた。
からん
空いたグラスの中で氷が踊る。黒いボトルから新しく注がれるその液体はゆっくりと氷を持ち上げていく。
”さぁね。どうだと思う?”
そう言って君は笑う。
”そっか、変わってないんだね。なんだか懐かしいよ、その顔は”
どこからともなく降り注ぐやわらかな音楽はいつの間にかピアノからヴァイオリンへと変わっていた。
”変わろうと思っても変われないものなのね。よかったわあなたも変わってなくて”
”でも、長い時間だったね”
”そうね、長かった”
僕を見つめる瞳がゆっくりと閉じられ、白い肌の顔がゆっくりと僕に近づく。赤い唇が僕の唇に触れ、あわく切ない思い出がよみがえる。
”ねぇ、さっきの魔法をかけたってどういう意味?”
ほおを染めた、いたずらっぽい笑みが唇に残る柔らかさに問いかけた。
”知らないよ。何となく言ってみただけさ”なんとなくね。
小さく消え入る声に君の声が重なる。
”じゃぁ私もあなたに魔法をかけてみるわ”
”どんな魔法?”
”さぁね。たぶんあなたがかけたのと同じものよ”
そう言ってもう一度唇を寄せた。