久遠の絃

-くおんのいと-
since 2003/9/1
キレイな写真なんていらない。もっと本当の姿が見たい

ぼくの魚がにげた

2007年05月27日 22時32分07秒 | ことばのうみ
 水槽に入れてあった魚が逃げてしまった。最近よくこちらを眺め、ぱくぱくと口を動かしていた。誰に話しかけるでもないが、よく外を見てはため息をつくようにじっと外を眺めていた。
 勝手に出て行くはずもないのでフタなどはしていなかった。今になってそれが悔やまれる。しかし、ネコなんかに食べられてしまったわけでもないだろう。時々ノラネコを水槽の中からおどかしていたくらいだ。
 手紙くらい置いていってもいいかと思うのだが、水槽の中をのぞいても何も見あたらない。いつものねぐらをのぞいてみても何も変わった事はない。
 まぁ、それよりも先に逃げたルートとして動機が気になる。一つ気になるのはいなくなる一週間前くらいから足のようなものが生えているように見えた。そのときは気にもせず、ただ”藻”が絡んでるだけだと思ってた。もしかしたら本当に足だったのかもしれない。まぁ、そんなことはないんだろうが・・・・・・
 動機としては外の世界が気になったんだろうという所だろうか。エラ呼吸ではあるが、外に放り出されてもしばらくは生きていける。もしかしたら口に水をためながら出ていったのかもしれない。

 ”どこへ、何のために”
 それがいまいち見えていない。誰かが連れ去っていくわけでもない。あたりを探してみると時々水が落ちている事に気がつく。
 ぽたぽたとたれた水滴が、行く先を示すようにつづいている。このままいくと洗面所のあたりが怪しいのかもしれない。
”ぴちゃ・・・・・・ ぴちゃ・・・・・・”
 なんだか水音がする。
”チャプ・・・・・・ チャプ・・・・・・”
 おそるおそる洗面をのぞいてみると、水をためた上で魚が泳いでいた。
 赤い顔で魚が言う
”いやぁ、いい湯かげんだよ。たまには温水プールもいいね。ほらみてよ、なんだかのぼせちゃって、赤くなっちゃった”
 まるでプールサイトでくつろぐように、手だかヒレだかわからないものを振って、こちらに微笑んだ。
 黒かった色は鮮やかな赤色へと変わっていた。その魚がいつのころからか金魚と呼ばれるようになったという話は、あまり聞いた事がない。


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