先日紹介したCNNの人気キャスター、アンダーソン・クーパー。
被災から10日たったハイチにまだいてレポートを続けています。
生存者捜索も打ち切りになり、また医療関係のハード、ソフトウエアの不足で
彼の言うところのSTUPID DEATH、つまり死ななくていい人が命を落とすのを見ると心が痛みます。
それでもハイチには音楽とか、少しずつですが日常が戻りつつある。
そして、ジョージ・クルーニーの呼びかけで募金運動が始まっています。
感心したのはアンダーソンとのインタビューでクルーニーが
「募金に協力したからと言って終わりではないです。ハイチの生活が元に戻るまでこの問題を発信し続けるのが我々の役割」
と言っていました。
この位言えるとカッコイイね。
日本の芸能人も参考にすると点数上がりますよ。
想像ですが、クーパーもクルーニーもオバマ援護でこの話題に集中しているのかな。
それほどオバマさん苦しい立場に追い込まれています。
マサチューセッツ上院補欠選挙で民主党が負けました。
テッド・ケネディの死去に伴うものですがリベラルの代表選手が長年座っていたポストだけに民主党の動揺は大きいです。
これで下院における民主党の優位は脅かされオバマの最重要政策医療保険改革成立の見通しが
立たなくなりました。
それで一時的にアメリカの株が上がったりしましたが。
全くどうでもいいような世界ですねえ、株の短期市場。
私も長い間石油のデイリー・マーケットを追いかけていました。
職業的には一大事だし、需給調整のお役に立ったり逆に市場の撹乱要素のなったり
だがほんとどうでもいいこと。
アメリカの政策の話。
政権選択の最重要論点は「大きな政府」か、はたまた「小さな政府」か。
オバマ政権は「大きな政府に」突き進むことになりました。
金融機関や自動車会社の一部国有化、バーナンキによる超金融緩和政策。
これにより大手の金融機関は救われ莫大な利益をあげボーナスを持ち逃げしようとしている。
株価も随分回復し見た目は好調です。
でも実態はどうなのか。
株価の上昇は経済の拡大と言うより病人のムクミのようにも見えます。
顔色が悪い。
失業率は上がり続け、失業保険の切れた人や仕事を探すのをあきらめた人を
加えると20%以上にも及ぶと言う見方もあります。
無理やり「株価」という「体温」を上げたところで病気は治らないですね。
そして不動産価格は改善の様子がないだけでなく商業不動産の更なる下落が心配されています。
アメリカもいつの間にか日本のように土地本位制になっていたのでしょうか。
株式市場には6兆ドルと言う資金が供給され、金融機関を助ける7000億ドルの資金も底をついた。
昨年潰れた140の中小銀行の受け皿になった預金保険機構FDICの資金もう残り少なくなりました。
それより、ドルを供給し続けるFRBが大きな債務超過に陥っている可能性もあり、「政府無し派」に近い
リバタリアンのロン・ポールが実態を調査する法律を通そうとしている。
つまりは金融危機を先送りしているうちに国家の財政危機が迫りつつあるわけです。
アイスランドやギリシャが他人事ではなくなります。
これはほぼ日本を除く世界規模で起きていることで世界のGDP50兆ドルに対して
2007年に190兆あったデリバティブが2008年に140兆まで下がったがまた180兆くらいまで増えてきたと寺島実郎が
言っています(数字はウロ覚えですが)。
世界中でもう一回金融バブルを起こしているわけだが実体経済は悪化するばかりであちこちで財政が痛んでます。
アメリカの話でした。
つまり「大きな政府」政策が限界に来ているという苛立ちがマサチューセッツで無名の色男に議席を奪わせた。
争点は医療保険改革。
一年ほど前オバマを熱狂的に受け入れた米国民は手のひらを返したわけです。
アメリカ人はもともと個人の独立と尊厳という気概があって多数を占める保守層は
当然「小さい政府」論者ですね。
共和党がそうです。
根本にあるのが「国家への懐疑」。
知性主義と反知性主義は常に争っていますが(日本でも)、どちらかと言うと保守は
反知性主義なのか。
肉体とか魂、情念とかに重点を置くような気がします。
だから知性的な政策、例えば人工中絶、銃規制、温暖化みたいなものにはとても抵抗が強い。
一方、日本の自民党は似て非なるもので家父長的な国粋主義だと池田信夫が言っていた。
「お上にまかせましょ」みたいなことで基本的に民主党と変わらない。
善し悪しを言っているわけではないが論点がよくわからないです、日本の場合。
私個人としては「小さな政府」ですね。
いろいろ指図されたくないし、責任を取らないカネの運用は止めてもらいたい。
JALをあちこちに作ったらダメだと思う。
そういう意味では小泉改革を支持しました。
しかし、政府が無くていいということではないですから結局はバランスの問題。
社会主義の非効率なところ、自由を制限するところは少ないほうがいい。
アメリカの話でした。
オバマは医療改革挫折の代わりに矢継ぎ早に金融規制案を出してきています。
商業銀行の自己勘定取引禁止、占有率制限。
ゴールドマンのルービン財務長官がグラス・スティーガル法を廃止し商業銀行が証券業務ができるようになった。
つまり、草食系にステーキの味を教えました。
また州単位の銀行法を改正しいくつかの商業銀行が巨大化することになった。
所謂、TOO BIG TO FAIL、大きすぎて潰せない。
結局リーマンを始めとする殆どの投資銀行が競争に敗れ消滅したが、ルービンやポールソンの
ゴールドマンだけはちゃっかり商業銀行に偽装し政府の救済を思いっきり享受しました。
大手の金融機関が最近の新金融バブルで大儲けしたのは前述の通り。
オバマがやろうとしているのは商業銀行を昔の姿に戻そうという話です。
なんと、もっともなことではないですか。
レバレッジで膨らむだけ膨らんだ今の世界経済を元に戻しましょうということです。
しかしCITIなどの商業銀行はマネーゲームで儲かっているだけで、本業は採算が悪い。
当然、反対ですね。
ゴールドマンはまた投資銀行に戻り一人勝ちすることになるという田中宇の先読みもありますが。
政策がいくらもっともでも、実体経済が悪い時は何をやっても評価されない。
ただの「銀行いじめの人気取り政策」と酷評されている。
貪欲な金融資本の暴走が未曾有の経済危機を招いているので当然と思われるが
アメリカではとても規制に抵抗が強いのです。
何度も書いているがオバマは大不況と二つの戦争を前任者から引き継いだ悲劇の大統領です。
医療保険改革が上院の絶対多数を脅かされていることで苦境に立っていますが、もうひとつの
大問題がFRB議長の再選問題です。
なにせ日本の不況研究の専門家でヘリコプター・ベンと言われるバーナンキ。
瀕死の患者である経済にに輸血をし、モルヒネを打ちまくってきた。
それで曲りなりも心肺停止だけは免れてきたわけです。
この人の再選が否決されて今金融規制を主張しているボルカーの力が強くなるとアメリカは一挙に
出口戦略に向かうかもしれません。
確かレーガン時代に金利を15%に上げドルを防衛したチームの方。
人は成功体験に埋没しがちです。
チェース出身ということでロックフェラーの逆襲もあるのか。
その辺のところは詳しくありませんが。
株の火遊びはほどほどにしたほうが良いのではないでしょうか。
余計なお世話ですが。
それともうひとつ、内政がおかしくなると外に敵を見つけるという常套手段。
中国との関係に変化が見られ、日本にもエコカー減税などでイチャモンを付け始めたようにも見えます。
まあ、本当に困ってくれば日本叩きが始まるかもしれないがそんなもの放って置けばいい。
矛先が中国に向かい米中関係が多少ギクシャクしてくれれば大国の間にいる身としてはとても好都合でしょうね。
日米関係も一挙に良くなります。