月あかりの予感

藤子不二雄、ミュージカル、平原綾香・・・好きなこと、好きなものを気の向くままに綴ります

ひみつ道具コンテスト雑感

2006年11月08日 16時50分04秒 | 藤子不二雄
ドラえもんのひみつ道具公募に4万通(日刊スポーツ) - goo ニュース

「ドラえもん」は「願望漫画です」と、かつてF先生が語っていたのを聞いたことがあります。子どもたち、あるいは大人たちの「こんなこといいな」は、時代とともに変化しているわけですから、こうしたコンテストの応募作品にも確実に世相が反映されるのでしょうね。

応募総数4万通が多いのか少ないのか、私にはわかりません。それより気になったのはこちらの方・・・

小学館に2万6611通、テレ朝に1万1116通、ヤフーに3382通

気軽に応募できると思ってたけど、意外にヤフー宛が少なかったんだなぁと。小学館宛が多いのは、依然いまも「ドラえもん」という作品は、コロコロ+学習雑誌連合の影響力が強いことを窺わせますね。

こうしたコンテストは、F先生のご存命中も、先生自身が審査委員長となって何度か開催されました。優秀作はF先生自身の手で作品化されています。今では有名な「ミニドラ」も、元はこうしたコンテストの応募作品でした※。

※実は1973年に雑誌「幼稚園」で一度登場しているそうですが、こちらは私自身が未確認のため、詳細はわかりません。

ひみつ道具とは異なりますが、ドラミちゃんも読者のアイディアを元に作られたキャラクターです。子どもに向けて描かれた「ドラえもん」の作品世界の構築には、その子どもたちのアイディアやフィードバックも一役買っていたという事実は、特筆すべき点といえるでしょう。

しかし、その子どもたちのアイディアは、あくまで「タネ」の段階であって、それを選別し、作品という「」を開かせていたのは、他ならぬF先生であった点は見逃せません。つまりF先生は「種をまく人」でした。今回のコンテストは、その役割自体をF先生以外の人が担うことになるわけで、その点にファンの厳しい視線が注がれるわけです。

「ドラえもん」を長寿番組として続けていこうとする限り、オリジナル話の登場は避けては通れないことだと思いますし、私はその挑戦そのものを否定するわけではありません。しかし茨の道ですよ、とは言いたくなります。

「ドラえもん」には膨大な数の短篇が残されていますから、今のところアニメ化する題材に事欠くことはないでしょう。正確にカウントしたことはありませんが、いま手元にある「てんコミ」25巻には、短篇が15作収録されています。15×45巻=675本で、てんコミ未収録を含めて1.5倍あるとしても1000本くらいですか。幼年向け等、アニメ化にあまり適さない作品は除外しなければなりませんが、それでも週2本ずつ作られて10年分くらいのストックはあると見て良いと思います。

10年も経てば、リメイクや、大山ドラ時代のように1本再放送でも、特に問題はないという考えもあるでしょうが、やはりそれだけでは「発展」がないのです。たとえば「ドラえもん」の原作を読み倒し、アニメを観倒した(特にこれから生まれてくるであろう新たな)ファンが、やっぱり「新しいドラえもんのお話が観たい」という思いを持つのは自然のことでしょう。

しかし、その「新しいドラえもんのお話」を生み出すのは、いかに困難な作業であるかということは、大山ドラ末期時代の「惨状」を垣間見た人なら、ご理解頂けることと思います。まず、科学的知識の裏付けを大前提として、「ドラえもんらしい」筋運びで、子どもにもわかりやすくなければならない。それでいて学習漫画になってもいけないのです。あくまでギャグ作品なのですから「面白い」ことが当然求められます。私は簡単に書いていますが、とてつもなく困難なことなのです。これを毎月、小学一年生~六年生などの学習雑誌に、コンスタントに一定水準以上の作品を、しかも読者の年齢層まで考慮して描きわけていたF先生は、やっぱり漫画の王様だったのだと思います。

大山ドラ末期のオリジナル作品は、とにかくこの前提が崩れていた作品が非常に多くなっていました。「ドラえもんの世界を壊そうとした」のは、旧来のイメージを払拭して新しいものを生み出すためには、なるほど必要な手段だったかもしれません。しかし、まず「壊し方」の時点から間違っていたと思えてなりません。

オリジナル作品を作るには、今までの「ドラえもん」をどのように壊すかだけでなく、壊した上で原作の雰囲気を損なわずにどう再構築するか、大変難しい作業が待っています。

実は既に、オリジナル作品を作ろうという布石を置いているフシはあります。もともと別の作品だった原作を繋げて1つの作品にしたり、ドラミちゃんに「決め台詞」(「オッケーよ!」など)を設定したりといったことです。しかし、そんな小手先だけのことで、優れたオリジナル作品が作れるわけがありません。ひみつ道具コンテストの優秀作品によるオリジナルストーリーの制作は、その試金石となることでしょう。

その作品が仕上がるまで、あまりにネガティブな考えばかりを持ち続けていても仕方がありませんから、今は静観といったところです。「わさドラ」は、回により多少の良し悪しはあるにせよ、全体的なアニメとしての出来は及第点だと私は思っています。(あくまで脚本、演出、作画、美術、音響など、アニメ作品としての総合的な評価です。言うまでもなく、余計なコントサブタイトルのアオリのような、局側の意向に対する私の評価は0点です。のび太のテスト並です)

今のスタッフなら「おっ、これは面白い!」と一見して思えるオリジナル作品を、もしかしたら作ってくれるんじゃないか?という期待もゼロではないことを、最後に付け加えておきたいと思います。

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (シンドリャー)
2006-11-09 00:50:36
Yahoo!からの応募が少ないのは、Yahoo!ブログを開設していて、かつ記事のトラックバックを送るという形式になっていたので、さすがに「ひみつ道具コンテスト」のために、わざわざYahooブログを開設したという人は少ないでしょうし、応募した人はもともとYahoo!でブログを開設していた人がほとんどでしょう。どこのブログでもOKとかだったら、グッと増えたでしょうけど。

わさドラのオリジナル作品については、僕もやってほしいとは思いますが、それにはそれなりのものを作らなきゃならないというのはわかりますね。
スタッフの皆さんには、「ドラえもん」という作品に対してもっとこだわってほしいと思いますし、もっと愛してほしいと思ってます。本編の出来は、決して悪いものではないと思ってますので、頑張ってもらいたいものですね。


もっとも、それ以前に、あの某放送作家と、彼を招き入れた某テレビ局を早急にどうにかしないと。
いくら本編の出来が良くても、そいつらのせいで全てぶち壊されかねませんからね。もっとファンは怒ったほうがいいと思いますが・・・
返信する
シンドリャーさま ()
2006-11-09 01:42:04
コメントありがとうございます。

> Yahoo!ブログを開設していて、かつ記事のトラックバックを送るという形式

あ、そうだったんですか。私は応募するつもりがなかったので、TBで応募なんて珍しいな~とは思いつつも、詳しい応募条件等は全然見てませんでした(笑)。素直にメールとかで受け付けろよという気もしますが(^^);

例の安達さんの起用を含め、わさドラの「本編以外」の面に関しては、本文でも「0点」と書いたように、全く「ドラえもん」という作品にそぐわないと私も思ってはいます。ただ、彼が起用されて数ヶ月、サブタイトルのアオリや、合間のコントなどについて、おそらく色々な意見は局側にも届いていると思いますが、今のところ一向に改善される様子がありませんから、これは何を言っても黙殺する方針なんだろうなと、もはや一種の諦観のような心境です。結局、視聴率さえ取れれば何をやっても良いのが、今のテレ朝の方針なんだろうなと。そんな局が「ドラえもん」の放映権を持っている以上、不幸なことですが、ある意味仕方がないのかもしれません。もし歯止めをかけられるとすれば、小学館と藤子プロですが・・・どっちも頼りないですからね(^^);

とまあ、そんなふうに思って、私自身はわりと冷静な目で、毎週の放送を観ております。本編の合間にレギュラーが何か歌ってますけど、全く耳に入ってません(笑)

ただ、「ひみつ道具コンテスト」だけは、オリジナル作品の制作という意味で本編に深く関わってくる問題ですので、今回の記事で取り上げてみました。
返信する
それでもなあ・・・ (シンドリャー)
2006-11-09 23:36:06
>もはや一種の諦観のような心境です。結局、視聴率さえ取れれば何をやっても良いのが、今のテレ朝の方針なんだろうなと。そんな局が「ドラえもん」の放映権を持っている以上、不幸なことですが、ある意味仕方がないのかもしれません。

はっきり言うと、その「仕方ない」と視聴者が思ってしまうのがどうかなあ・・・と思うんですよね。
視聴者がそうやって諦めの気持ちを持ってしまったら、極端な話、製作する側は何をやっても視聴者は強く文句言ってこないから、好き放題やってしまう、ということになりかねないと、なんとなく思うんです。
番組そのものが変な方向に進まないためにも、もうちょっと視聴者の側も、毅然とした態度をとるべきだと思うんですがね・・・。

とはいえ、じゃあ視聴者に何ができるのかと言えば、せいぜいテレビ局に直接文句言うか、ブログで批判するか、BPOに抗議するか、新聞や雑誌の投書欄に出すかぐらいのものなんですよねえ・・・。
つくづく視聴者の立場の弱さというものを思い知らされます。ま、一番いいのは、もうその番組を見ないという選択肢でしょうね。


あと、テレビ局は、仮にも「ドラえもん」を「青少年に見せたい番組」として勧めているでしょう。それならば、番組の質もそれなりに考えなきゃダメなのに、実際はこうですものね・・・。あの放送作家も「視聴率がすべて」などと公言していましたし。
正直、一番組の制作姿勢としていかがなものかと思ったので、BPOへはそんな感じで抗議したのであります。ハイ。

長文失礼いたしました。
返信する
私のスタンスについて ()
2006-11-10 00:35:39
BPOは・・・放送倫理の面で青少年にふさわしいかどうか、人権侵害がないか等を審査する第三者機関ですよね。我々藤子ファンから見れば、確かに作品の本来の姿として、ふさわしくないようには見えますが、ファンを離れた立場で冷静に考えてみるとどうでしょう。たとえば「しずかちゃんの入浴シーン」が青少年にふさわしいか、というような観点で審査されることはあり得るとしても、レギュラーの出演やドラミ復活プロジェクト、サブタイトルのアオリ等が、「青少年にふさわしくない」「番組の質の低下」として判断されるかどうか・・・

仮にBPOが動き出すとすれば・・・「ドラえもん」に水着のお姉ちゃん(実写)が出てくるとか(笑)、いくら視聴率至上主義でも、そこまではやらないと思いますが、そこまで「児童向け」としての逸脱行為があれば、保護者からクレームが出てもおかしくないですし、温厚な私だってブチ切れます(笑)。また「ドラえもんの言葉遣いが乱暴になった」とか、原作を知らない一部大人の「勘違い意見」の方で動き出されやしないかと、そっちの方を心配してしまいます。(いまだに、そういう意見を掲示板で見かけるのは驚きます。本当に原作読んでないんだなぁと・・・)

要するに・・・今の「問題」というのは、すごく微妙なレベルだと思うんです。はっきり言えば、末期の大山ドラの気持ち悪い演出や作画の方が、よっぽど私にとっては、作品として「赤信号」レベルでした。あの頃はまだブログをやってなかったので、ここでは何も書いてませんが、このまま続けるくらいなら放送を終了して欲しいとさえ思っていましたし、実際に「観ない」という行動にも出ていました。

テレ朝が声優交代等で意見を募集していたとき、そのあたりの考えを結構長めに書きました。「ドラえもん」という作品の面白さの本質がどこにあるのかを理解し、ぜひ原点に立ち戻って制作して欲しい。芸能人起用なんてことは一時的な話題取りに過ぎず、作品の寿命を縮めるだけだ。アナウンサーと声優は全く違うんだから混同しないで欲しい・・・というような内容でした。

実際に「わさドラ」は、話題性重視での芸能人起用もせず(千秋さんなど一部を除き)、原作重視でスタートし、今のところ作品としては非常に満足しています。問題なのは局側ですが、私の感覚では、そういった点も含めて総合的に見て、今の「わさドラ」はまだ「黄信号」にも至ってないんです。

誤解しないで頂きたいんですが、私だって安達さんの考える企画等が「ドラえもん」という作品にふさわしいなんて、全く思っておりません。以前も書きましたが「ドラミ復活プロジェクト」で、千秋さんが選ばれるまでのことを、お寒いドキュメンタリー仕立てで追う企画なんてものは、本来、子どもに見せるべきことではないと思っています。それに、一度は意見を募集しておきながら、コメントごと一気に消してしまった安達さんの姿勢にも疑問符はつきますが、つまり彼は逃げたんですから、もはや「その程度の人」なんだと捉えています。はっきり言えば「アウトオブ眼中」です(笑)。個人的にスタッフリストは作ってますが、彼の名前は書いてません。

私は、シンドリャーさんの取られるスタンスや行動を否定するつもりは一切ありませんし、共感する面も多々あります。ただ私自身では、今のところはまだ「静観」のレベルだということです。前回は「諦観」とまで書いてしまったので、ちょっと誤解を招いてしまったかもしれません。
返信する
Unknown (シンドリャー)
2006-11-10 01:06:46
ちょっと僕も言葉足らずでした。

さすがに、本気でBPOに動いてもらいたいとまでは思ってません。「抗議」と言っても、単純に一視聴者の意見として、BPOの青少年委員会にメールを送っただけの話です。以下のサイトで書かれているようなノリの意見を送っただけです。
http://www.bpo.gr.jp/youth/shichosha/shichosha.html

僕がこうして危惧しているのは、今の制作姿勢のままで、果たして「ドラえもん」は10年先も20年先もちゃんと続けられるのかということです。今の「わさドラ」には、大山ドラに負けないぐらい子供たちに受け入れられてほしいと思っていますし、それだけ思いいれもあります。ただ、テレビ局がこんな姿勢を、ファンから不評を買っているにも関わらず続けているところを見ると、近いうちに「原作回帰」路線も見直され、末期大山ドラの再来なんてことが起こりかねないと思うんです。もしかしたら、水着ギャルが出てきてしまう(笑)なんてのもありえると思うんです。

そんなことにならないように、今のうちからどうにかしたほうがいいんじゃないかと言ったまでですので・・・。もっとも僕自身、かなりの心配性なんで、自分でも騒ぎすぎじゃないかと、多々思ってますけど。

この場でいろいろ書き込んでしまってすいません。
またこのネタは、また自分のブログで書こうと思います。どうもすいませんでした。
返信する
私も実は心配性で(^^); ()
2006-11-10 05:34:47
心配し始めると、とことん心配してしまうタチなんです。だけど、基本的に自分がスタッフにでもならない限り、直接どうこう出来る問題でもありませんし、結局は「なるようになるしかない」と思って出した結論が、今のところ「静観」だったわけです。さすがに「わさドラ」のことばっかり考えてもいられませんしね(^^);

「ドラえもん」という原作そのものは、今でもコミックスは売れてるみたいですし、非常にパワーのある作品です。漫画作品としては、今後も燦然と輝き続けることと信じています。でもアニメはどうでしょう・・・果たして今の子どもたちにとって、そこまで重要なポジションにいるのかどうか・・・もちろん少子化もありますが、実は視聴率10~12%のうち、子どもを含む視聴世帯は3%程度で、あとは実は大人だけなんじゃないか?とか、そんなことを考え始めれば、いくらでも悲観的になってしまうので、あまり考えないようにしてます。

・・・本当はこの5~6倍書いていたんですが、ものすごく長くなりそうなので、一旦ここまでにしておきます(^^);

またいずれ記事本編で改めて書かせてもらいます。
シンドリャーさんの記事も楽しみにしております(^^)
返信する