月あかりの予感

藤子不二雄、ミュージカル、平原綾香・・・好きなこと、好きなものを気の向くままに綴ります

「ブラック・ジャック」あれこれ

2007年03月11日 03時14分00秒 | 漫画(藤子以外)
このブログでは、藤子不二雄先生やあーや、最近では名劇などの話題が中心になっていますが、手塚治虫先生についても、実はDVD-ROMの漫画全集を持っている程度には(えっ?十分?)ファンであります。

「火の鳥」「ブッダ」「きりひと讃歌」「奇子」「陽だまりの樹」など、大好きな作品はたくさんありますが、中でも「ブラック・ジャック」は特にお気に入りです。手塚先生の生や死を見つめる独特な視線には強く心打たれます。手塚先生の連載は長編のものが多いのに対して「ブラック・ジャック」は珍しく短篇です。しかし毎週24ページ程度という非常に限られた枠内でありながら、密度の濃い物語が展開されていて、手塚先生の人並み外れたストーリーテリングの上質さに驚かされてしまいます。まぁ、中には「何もそこで殺さなくても」とツッコミを入れたくなる話などもありますが(^^);

さて、先程この「ブラック・ジャック」の未収録作品について調べておりましたところ、偶然、次のようなページを見つけました。

4人の黒い医者 (Digital Portfolio)

Digital Portfolio さんは、「ブラック・ジャック」の未収録作品について、その理由などを考察されている非常に興味深いサイトなのですが、「読み物」のコーナーに掲載されていた「4人の黒い医者」という記事に、不覚にも呼吸困難になりそうなほど笑わされてしまいました(^^);

これは、ある1つの原作を元として作られた、アニメ版、山本賢治版、そして他の作家による作品の3つを比較したものです。

アニメ版は、最近まで日本テレビで放送されていたアレですね。

山本賢治版というのは、山本賢治さんという漫画家さんが「ブラック・ジャック」をリライトした作品「ブラック・ジャック~黒い医師~」というものがあるそうで(同人誌等ではなく手塚プロ公認のオフィシャルな作品です)、私はその作品の存在を今まで知りませんでした。

さて、このページの第1回「ナダレ」に、まずやられてしまいました。

ナダレ(鹿)のデカさ、ナダレによる殺人描写、大江戸博士のフィアンセ殺害シーン(山本版、グロっ!)などの比較が、図版入りで取り上げられているのですが、何より山本版のブラック・ジャック登場シーンバカウケしてしまいました(笑)。こんな「黒い医者」は、ちょっとイヤ~(^^);;

まぁ、詳しい内容をここで書くのもアレですので、上のサイトの方を実際に見て頂くとしまして、すっごく笑えたのと同時に、いま演出論などを勉強している私としては、1つの原作であっても、それを料理する人によって、これほどまでに違いが出るんだなぁということを改めて感じて興味深かったです。

アニメ版については、やっぱり若干ヌルい印象があって(だって19時台という食事時の放送で、そんな手術シーンだの、少しエロティックなシーンだのは出せませんものね)、結局は最初の方しか観ていなかったんですが、最近キッズステーションで放送されているのを観ています。実は祖母が熱烈な「ブラック・ジャック」ファンでして(笑)、もちろん彼女は原作も読み尽くしているのですが、アニメも放送するなら観たいということで、録画を頼まれたというのもあります。

それでまぁ改めて観ているわけですけど、やっぱりヌルく感じてしまいます(^^); 私は手塚先生の原作におけるスターシステムは否定しませんし、原作「ブラック・ジャック」での手塚キャラの別人としての出演は楽しくもあるのですが、アニメにおけるそれは、あまりやりすぎないで欲しいなと思っています。ランプやハムエッグ、ヒゲオヤジの登場あたりまでは良いのですが、写楽や和登さんがレギュラーになってるのは、ちょっとどうかな~と(^^); また、上のサイトでも書かれていますが「なるべく人を殺さない」のがアニメ版の方針だったそうで、それは「ブラック・ジャック」を作る上ではどうかな?と疑問に感じてしまいます。あえて「死」を描くことで、「生」の尊さが浮かび上がるというのが、「ブラック・ジャック」という作品のもつ魅力の一つだと思うからです。まぁ、それも19時台に流れる作品としては難しかったのかもしれませんが…。今のご時世、色々とうるさいですしね。

絵柄については、わりと好きな方です。過去にOVA化されたものも数作観たことがありますが、こっちはちょっとカッコつけすぎな印象がありました(^^); ピノコの作ったカレーライスを、何とも言えない顔で平らげるブラック・ジャックとか(笑)、そういうシーンも作れそうにないような、美形キャラとして描かれていたからです。その点で、テレビ版の神村幸子さんによるデザインは好感のもてるものでした。

原作のエッセンスをそのままに作るのが非常に難しい作品だということは理解しますが、せっかくアニメ化するからには、もう少し原作の魅力を生かせないものかなと感じてしまいます。

さて、久しぶりに文庫版「ブラック・ジャック」17巻を読み返してみまして、妙にツボにハマってしまったのが下のコマ。

めっちゃ激怒してるのに、娘の名前を間違ってるという、手塚スターシステムならではの絶妙なギャグですね(^^); ちなみにこの作品は「金!金!金!」という、何故か長らく未収録状態だった作品です。特に問題になりそうな描写はないので、作者が気に入らなかったからという説が濃厚です。(なんだか唐突にカスミちゃんが自殺未遂しちゃうし)

ちなみにカスミちゃんって、この子です。…ウランじゃん(笑)


コミック
手塚治虫 著
Black Jack―The best 11 stories by Osamu Tezuka (17)
秋田書店

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