肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ロスト・イン・トランスレーション』、観ました。

2005-09-25 17:47:20 | 映画(ら・わ行)
ロスト・イン・トランスレーション

東北新社

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 『ロスト・イン・トランスレーション』、観ました。
CM撮影ため来日したハリウッドのベテラン俳優ボブ。夫の仕事の関係で
東京に滞在中の若妻シャーロット。ボブは日本での仕事に戸惑いを感じ、
多忙な夫が気にかけてくれないシャーロットは異国の地で孤独感を感じていた‥‥。
 “ソフィア・コッポラ”、、、かつての処女作『ヴァージン・スーサイズ』も
決して悪い映画じゃないけれど、本作観てみりゃ彼女もさすが“コッポラ
一族の血”を受け継いだサラブレッドなのだと 思っちゃう。映画は、
年齢差ある男女の出会いから二人が親しくなるまでをたっぷり時間をかけて
丁寧に描きつつ、紛れもない「日本の今」、「東京の今」を切っていく‥‥。
 物語の舞台となるのはアメリカ人にとって異国の地「東京」、、ヒロインには
夫がいて、遠くアメリカには家族がいる。確かに幸せなはずなのに、何処か
センチメンタルな“孤独感”を感じてる。自分が誰なのか分からない‥、
果たして自分は誰かに必要とされているのか‥、ただ「出会い」と「別れ」が
交互に自分の脇をすり抜けていくだけ‥、そんな言葉じゃ上手く説明できない
心に吹く“すきま風”ってやつを映像化。例えば、ゲームセンターで
貴重な青春を浪費する若者、夜のタクシーのフロントガラスに反射して映る
東京のネオンサイン、、きっとそれは楽しいはずの時間、美しいはずの
景色なのに、何故か“異邦人”のヒロインには空しく“無意味なもの”に
見えてしまう。むしろ、彼女にとっては一人京都を訪れたときにすれ違った
白無垢の花嫁の方が何倍も美しく見えたに違いない。ラストシーンにある彼女と
ビル・マーレイとの抱擁は、“彼女の存在”がしっかりと《彼の記憶の中に
刻まれた証明》だった‥。耳元で囁き、人ごみにかき消される最後の一言‥‥
静かな余韻に浸れるラストシーン、、見事。


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